オープンソースSOAスタック
前回に引き続いて、JBoss Inc.のCEOであるMarc Fleuryのインタビュー記事を紹介していく。2006年にOSSビジネスモデルが直面する最大の課題は何か?と聞かれてMarc Fleuryはこう答えている。
「パラノイド(病的なまでの心配性)の私をもってしても、2006年は極めて明るい年だと言わざるを得ない。2005年にはOSSに関するすべてのビジネスが急成長した。2006年は大企業のすべてが全力を挙げてOSSを取り込む変革の年になるだろう。他社よりエレガントにやるところもあれば、他社より積極的にやるところもあるだろう。たとえば、SunのOSS化戦略は財務上のビッグヒットにはならなかった。実は、ソフトウェアの収益はSun全体の1%程度に過ぎないのだ。つまり、SunはすべてをOSSにする余裕すらあったのに腰が引けていたということになる。」
パラノイドという言葉で、IntelのAndrew S. Groveが1996年に書いた「Only the Paranoid Survive」という有名な著書があったことを思い出した人も多いかもしれない。パラノイドに関しては、このMarc Fleuryのインタビューの最後に熱い決意が述べられているのでそこでじっくりと紹介する。さて、極度の心配性の彼でも2006年のOSSビジネスは明るいと言う。OSSビジネスの最先端をひた走る彼のこの言葉は、我々OSSを仕事としている人間にとっては心強い。
彼の古巣のSunについてはもはや敵ですらないということらしい。では彼の敵はどの企業だろうか。アプリケーションサーバに関しては、敵はWebLogicをもつBEAと、WebSphereをもつIBMということになる。そのあたりの今後の展開も大いに心配だろう。さらに、それらプロプライエタリな世界ではなく、OSSの世界からJBoss Inc.を脅かす企業が出てくるかもしれないことがパラノイドの彼としてはとても心配なことらしい。事実、ObjectWebのJOnAS(Java Open Application Server)や、今月初頭に1.0がリリースされたApacheのGeronimoなど、OSSの世界でも有力なアプリケーションサーバが出現している。
「BEAやIBMのような企業は違った状況にある。彼らは収益を生むプロプライエタリな製品を守らなくてはならない。我々はOSSを取り巻くビジネスモデルが爆発的に展開するのを目の当たりにするだろうが、実際のところ、どのように展開するのかということが私の心配事であり、2006年の課題である。大企業はこの動きを巻き取ろうとするだろうか。急成長するビジネスモデルとエコシステムが出現するだろうか。これらは両方とも期待できる。これらがどのように展開するのか、私はあれこれと思いを巡らせている。プロフェッショナル・オープンソースはこれからの本命だというのは確実なのだが、どのようにそれが展開するのかは、今はまだ誰も知らないのだ。」
OSSビジネスはまだまだ変革期であり、この競争においてはなかなか心休まるものではない。現状のアプリケーションサーバに関する競争相手だけでなく、IT業界が今、一番ホットな分野でも、プロプライエタリとOSSの激しいバトルが繰り広げられている。インタビュアーの次の質問はこうだ: JBoss Inc.はオープンソースSOAスタックを推進していて、2006年に登場させるESBを持っているという事実を率直に認めているが、多くのアナリストはESBはSOAにとってまったく必要のない要素だと考えている。あなたが2006年に実現しようと考えているもっとドラマチックなSOA関連の動きはあるのか?
「SOAは80%はビジネスアプローチで、残り20%が技術アプローチだ。ビジネス的には、現状からの変動が大き過ぎてなかなか実用的にはならないだろうと言われている。金もかかるし、たくさんの調整も必要だ。私はSOAをめぐるベンダーの誇大宣伝と現実とは切り離して議論する必要があると思う。JBossにおいては、技術的見地から現実に注目している。我々はライセンスを売らないので、SOAのソリューションとしてのソフトを売るために誇大な宣伝をやることにはまったく興味がない。そんなことより、顧客のニーズを観測をして、顧客のSOA戦略を技術を通してサポートできるようにしていくのだ。」
そう、アプリケーションサーバの延長線上にある次の目玉はSOAである。なぜだろうか。SOA (Service Oriented Architecture)とは、複数の、サービスという機能的に意味のある単位のソフトウェアを呼び出すことにより、動作するシステムを構築する手法のことである。一方、アプリケーションサーバは3層モデルの中間層として、コンポーネント化されたビジネスロジックを組み合わせて、求められる要件にマッチしたシステムを俊敏に構築するためのものである。このコンポーネントの組み合わせを異機種間にまで広げ、疎結合によるシステム連携を可能にし、企業のビジネスプロセスに則って各サービス間を連携させることによりSOAが実現できるのである。
EAI、BPM、そしてSOAと進化して名前は変わってきたが、実はあまり中身が変わっていないかもしれない製品も含め、今はSOA製品花盛りである。IBMのWebSphere Business Integration、OracleのOracle SOA Suite、SAPのNetWeaver、MicrosoftのBizTalk Server、BEAのAquaLogic、SonicのSonic ESBなどの製品がひしめいている。OSSでは、CodeHausからApacheに移籍しGeronimoのサブプロジェクトとなったServiceMix、IONAがObjectWebコンソーシアムにソースを提供したCeltex、それにApacheで元々噂先行のSynapseなどがある。確かに世の中、SOA、SOAと騒がしい。そんな中で、以下のようにJBoss Inc.はしっかりと技術を見つめているのが分かる。
「SOAは技術的にはしっかりと地に足がついたものと見ている。ロードマップはSOAへのモジュラーなアプローチを示している。我々はSOAに関して純粋な技術の話や最善の組合せを実現するためのパートナーとのエコシステムとしての話をしているのだが、アナリストの多くは、『SOAは万能で万人向きだ』というようなIBMやOracleのマーケティング・メッセージをSOAだと思っているようだ。彼らのSOAはビジネスコンサル的なアプローチであり、IBMでさえビジネスコンサルタントのポジションにつこうとしているが、今の時点でマーケットから聞こえてくる声は、顧客はいきなりそんなデカい話には乗らないということだ。一歩一歩コンセプトを検証しながら、徐々に適用する部局を統合していき、SOAの完成に向かって速度を上げていくようなモジュラーなアプローチが欲しいのだ。SOAに対して、技術のイネーブラである我々は非常に良いポジションにいると強く感じている。」
今回はこのぐらいにしておこう。また次回、続きを紹介する。




