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四つの関門

2006.08.09|映像コミュニケーション このエントリーをはてなブックマークに追加Yahoo!ブックマークに登録この記事をクリップ!BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマーク

 先日、米国出張中の飛行機の中で韓国映画を観た。趣味ほどではないが映画鑑賞は好きな部類に入る。「連理の枝」っていう悲恋ドラマ(チェ・ジウとチョ・ハンソンが出演)で、その中にビデオメールのシーンが数回出てきた。映画自体についは何も特筆するべきことはないが(とは言え、「チェ・ジウっていいなぁ」と思いながらも)、職業病か、映画の中のビデオメールシーンを観て、「そうそう、こんな使い方もあるよね」って思った。恋人同士が車の中にいて、あえてその場で口頭で自分の気持ちを伝えるのではなく、予め仕込んでいたビデオメールが相手に届くっていう類のシーンである。「これだぁ!」っていうヒントを得るには至らなかったが、「こういう使い方も面白い」と思った。  さて、電話やメール等のコミュニケーションツールは我々の生活にはなくてはならないものになった。しかし、映像コミュニケーションについては、ビジネス現場におけるテレビ会議以外、その利用が活性化しているかというとそうではない。我々の生活空間への浸透度はまだまだである。映画のシーンは別として、我々サービス提供者側も精一杯、テレビ電話やテレビ会議システムの利用シーンを考案し、かつ非常に安く・簡単に利用できるように技術開発、サービス開発を進めているものの、その利用はまだまだ進んでいない。利用の活性化に向けては、生活に密着した利用の仕方、生活の一部になるような利用シーンを見出していくことが最も重要な作業と考えるが、一方で実際に使ってもらうためには使ってもらうまでの手順が単純かつ簡単でなければならない。手順とは、サービスの申込、IDの取得、PCやルータ等の設定、そして料金の支払い等である。「顧客はよっぽどのことがない限り面倒なことは一切してくれない」と考えておかねばならない。顧客の側から見た場合、それらの手順が利用のためのハードルであると分った瞬間、特別な理由がない限り、自分からハードルを越えるために、PCやルータの設定の変更などをしてくれることはまずあり得ない。自分の抱えている問題や困ったことを解決するために、そのハードルをクリアすることが一番近道で、かつ楽な方法であると理解しない限り、顧客は自分からハードルを越えてくれるようなことはない。  今日は上記に述べた手順の中で、ソフトウェアや機器の設定についてもう少し深く考えてみたい。Webページにアクセスして、「よし、このサービスに興味あり」「いざ使ってみよう」となった時、実際の利用開始までには図1に示すような関門(ハードル)が存在するように思う。まず顧客が最初にぶち当たってしまうハードルとして、「カメラとマイクの用意」がある。USBカメラやヘッドセットは安価に手に入れることはできる。しかし、「新たに買ってまでして、そのサービスを利用してもらえるか」となると、顧客は単なる興味だけでは用意してくれない。USBカメラとマイクの代金と購入の手間にかかるコスト以上のメリットがない限り、顧客は新たにカメラとマイクを用意してくれない。
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 では、カメラとマイクが用意できたとしよう。その次に待ち受ける関門として、専用のソフトウェアのダウンロード(映像コミュニケーションやVoIPのクライアントソフトウェアのダウンロード)がある。世の中にはWeb上で動くダウンロード不要サービスも存在するが、現状、多くのプロダクトは専用のクライアントソフトを必要とする。非常に短時間でダウンロードが完結すれば問題ないが、数分~十数分近くかかるとか、一種類のソフトだけでなくWindows上のライブラリもダウンロードしなければならない、さらに悪いことにそのダウンロードを行うかどうか一回一回確認のウインドウが現れるとなると、顧客は「なんだ、これ」と思う。 次の関門3は関門2でダウンロードしたソフトウェアのインストールである。インストール画面が現れ、必要な情報を入力し、ソフトウェアの使用許諾のボタンを押下したあと、数十秒でインストールが完結して欲しいが、これも関門2と同様に、何度も確認画面が現れたりすると問題となる。さらに悪いことに映像コミュニケーションサービスはカメラやマイクが前提なので、これらのデバイス自体のインストールや設定も必要である。そうなると、顧客は「まだやることがあるの。。。」ということになる。たとえインストールしようとするクライアントソフトが複数のデバイスを発見したとしても、現在使っているデバイスをデフォルトとし、「複数のデバイスを検出しました。利用するデバイスを選択してください」のように顧客に質問するのは避けるべきと考える。顧客に尋ねる方がユーザインタフェース的にはより親切な気もするが、通常、殆どの顧客はどのデバイスをどのサービスに使っているかなんて憶えていないし気にもしていない。もし必要であれば、あとで設定変更できるようにしておく程度でよいのではないだろうか。 ダウンロードとインストールが無事終了し、やっと利用できるよになったとしよう。ところが、まだ関門が残っている場合がある(関門4)。その関門とは、セキュリティ設定とNAT/FWの設定及び音量の設定である。映像コミュニケーションのサービスは、今後SIPが主流になると、以前このコラムでもご紹介した。SIPやH.323等のプロトコル準拠の場合、その通信は専用のポートを利用することになる。そうなると、企業内であれば企業内のFWの設定変更が必要であるし、家庭内であればNAT/FWの設定変更やセキュリティソフトの設定変更が必要となる。映像コミュニケーションサービスにおけるNAT/FWの問題は、別の機会に詳しくご説明するとして、FWやセキュリティソフトの設定変更自体は「本当に大丈夫なの?」という顧客の心理的負担を大きくする。将来的にはSIPをサポートしたFW装置やネットワーク装置は一般的になると考えるが、現在そうではない。そのような背景もあり、SIPの世界と逆行するようではあるが、一部の通信ソフトウェアはSIPで呼制御を行いつつも、httpトンネルを用意しFW越えを実現しているものもある。  このような関門1~4が表に見えてくると、たとえ「無料」「試行ID」でも顧客はそのサービスを利用しない。最初は利用する意思をもちつつも、関門に遭遇すると「や~めた」となってしまう。顧客の「困ったこと」を解決するに値するコストの範囲内(各種手順や設定作業等がユーザの許容範囲内)であれば顧客は利用してくれるが、ただ面白そう、無料だから使ってみようかという状況では、顧客は関門の存在を認識した段階で、このサービスは「とっても面倒」という印象に変わり、たとえサービスの中身がよくても利用開始に至らない。

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