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HAソフトウェアのHeartbeat

2006.08.29|オープンソースソフトウェア このエントリーをはてなブックマークに追加Yahoo!ブックマークに登録この記事をクリップ!BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマーク

ビジネス的にクリティカルなエンタープライズの世界で用いられるシステムにおいては高可用性(HA: High Availability)が求められることが多い。すなわち、システム障害時にサービスの中断を最小限にとどめることが重要になる。これを実現するためには、ほとんどの場合、クラスタシステムが使われる。HAクラスタは、複数のサーバ、冗長なネットワーク接続、ミラー化されたストレージなどによって高可用性を保証するクラスタである。

Heartbeatは、HAクラスタとしての基本的な機能をもつオープンソースソフトウェア(OSS)であり、High-Availability Linuxプロジェクトというコミュニティにより開発されている。たとえば、2つのサーバで主にアクティブ/スタンバイ型のHAクラスタを構築する際に用いられる。アクティブな主系で障害が発生した場合に、待機系のサーバが主系の処理をフェイルオーバする。2つのサーバでお互いにシリアル接続やLANケーブルを通してheartbeat(心臓の鼓動)を送り合うことによって互いの死活監視を行い、障害の発生を検知すると、共有の仮想IPアドレスの引継ぎなどを行うことにより高可用性を維持するのである。また、主系や待機系が停止や起動を行う際は、指定したスクリプトを自動実行させることも可能となっている。

さて今回は、このプロジェクトの創始者であり、現在はIBMに所属するAlan Robertsonのインタビュー記事「Interview with Alan Robertson of the Heartbeat project」を見ていこう。この記事は2006年1月23日の日付になっているので、多少古いがご勘弁願いたい。ちなみに、原文はこちらにも掲載されている。

まず、「HeartbeatはHA(高可用)Linuxに対する価格障壁を取り去ったOSSプロジェクトである。プロジェクトリーダのAlan Robertsonの努力によって、冗長性は手頃なものになった。プロジェクトの歴史と今後の計画について彼から多くの情報を聞くことができた。」というように紹介されている。

「どのようにHeartbeatプロジェクトは始まったのか?」という問いに対してAlanは、「プロジェクトは一風変わったやり方で始まった。1998年にBell研で働いていたときに、開発環境のために新しい技術を探していたんだ。Linuxを検討しなければならないというのは明らかだったので、上司のKen Switzerにそう提案した。彼はLinuxにはどんなHAがあるんだと尋ねたので、私は知らないと答えた。そこで調べてみると、linux-haというメーリングリストと、HA技術について書かれたドキュメントがあることが分かったが、ソフトウェアそのものは存在しなかった。私は、OSSプロジェクトの人々がどのように働いているのか知りたくて、いつの日にかプロジェクトに参加してみたいと思っていた。しかし、知的所有権をもとうとする人間にとっては法的にやっかいな問題があった。そこで、これはいい機会だと思ったんだ。KenはHAを愛する前向きな人だった。そこで、もし、私が書くコードに私が著作権をもつことを会社が認めてくれるように計らってくれるなら、プロジェクトを活性化させる、種のような初期ソフトウェアを書いてみたいと提案したんだ。彼は私が思っていた通り、快く引き受けてくれたので、最初のheartbeatコードを春休みの間に書き上げたんだ。」

「現在のプロジェクトでのあなたの役割は?」という問いに対しては、「私はプロジェクト設立者、リーダー、アーキテクト、品質管理者、エヴァンジェリストである。コミュニティが成長するに従って、多かれ少なかれ私に指示を仰ぐ人が増えてきて、以前のようにコーディングに時間を費やせないようになった。そこで、主に、アーキテクチャや設計、試験、宣伝などについて話をすることが多くなっていった。私は今や全体的な結果の品質について責任があると思っている。」

「開発コミュニティはどんな感じ?」に対しては、「メーリングリストには1,500人くらいの人がいる。メーリングリストでの基本的な質問には12人くらいの人が答えている。SUSE/Novellには2名、IBMには私も含めて5名がプロジェクトに参加している。NCSAには我々が給料を払っている1名がいる。無償で働いていて、長い間ずっと貢献しているのは3~4名くらいで、あくまで正規の仕事は別にもっている。そのうち2名は他のOSへの移植に従事していて、移植への取り組みにも手を抜いていない。常時70~80名くらいの人が開発に貢献している。」

「典型的なユーザは誰?」に対しては、「おおまかに言うと、システム管理者、コンサルタント、このプログラムを自らの製品に組み込もうという人というように、3種類のタイプのユーザがいる。システム管理者は、このプログラムの存在を知り、可能な限りのアプリケーションに利用しようとする。大企業、中小企業、大学、政府機関、国際機関など有名なところもあれば無名なところもある。コンサルタントはHearbeatを彼らの顧客のシステムにインストールする。3つ目は、ネットワーク製品やテレコム製品やファイルサーバなどのHeartbeatを組み込んだ製品をもつ企業である。残念なことに、これらの企業はコミュニティにその成果物を還元してくれることはない。さらに残念なことに、Heartbeatの使用の事実すら教えてくれることはほとんどない。よって、製品への組み込みに関しては第三者からの情報で知ることが多い。組み込んだということが彼らの競争優位性をなくしてしまうので、競争相手にこの事実を知られたくないのだと思う。」

「OSSのフェイルオーバをもつことがなぜ重要なのか?」に対しては、「可用性というのは、現在どんなにもっていたとしても、さらに高めたいと思うものなのだ。歴史的には、コストや技術的な複雑性のために、極度にクリティカルな場合にのみに高可用化技術を使っていた。我々の技術はタダで利用可能なため、他のHAソフトウェアに比べるともっと簡単に使うことができる。事実、エントリーレベルでは、1台の標準的なLinuxマシンをほとんど苦労なく置き換えることができる。そのため、今や高可用性は基本的にコモディティになった。OSSはコモディティ空間において良い実績を示した。リリース2以降、我々は基本的に商用のHAシステムと同等の能力をもち、いくつかの有名な製品よりもはっきりと勝ると言える。」

「Heartbeatで金儲けをしている人がいる?」に対しては、「数十の小さなコンサル会社がLinux-HAを顧客に提供している。IBMはLinux-HAに関しては、ハード、ソフト、コンサルでかなりなビジネスをしている。SuSE/Novellもエンタープライズ製品のキーパートにしており、コンサルにも力を入れていて、成果をあげている。」

「将来の計画は?」に対しては、「近々、ディザスタ・リカバリのsplit-site(サイト分割)クラスタについてもう少しやってみようと思っている。WBEM/CIMモデルのようなものを通してより良い運用性を提供したい。長期的には、できる限り間単にインストールできて使えるようにしてみたいと思っている。卓越したHAソフトと技術が提供できる世界を作っていく。」ちなみに、WBEM/CIMモデルというのは、共通情報モデル(Common Information Model:CIM)とWebベースエンタープライズマネージメント(Web Based Enterprise Management:WBEM)のことである。

このプロジェクトが始まるときには、それを必要とする社会的な大きなニーズがあり、それを欲していたコミュニティまでがあって、その状況で、それを提供できる能力をもつ開発者が居て、それを開発して頒布できる環境があったということである。現在の活発な開発が続いている。商用に迫る、"Good Enough"で、使いやすいHAソフトの更なる発展を期待したい。

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