PMBOKは役に立たないか
PMBOK(プロジェクトマネジメント知識)ガイドを勉強したが、プロジェクトの実世界では役に立たない。また、PMP(プロジェクトマネジメントのプロ)資格保有者を養成したが、一向に赤字プロジェクトは減らないし、PMPは役に立たない、という声も聞く。本当に役立たないなら、どうして世界中で200万部(2006年末現在)以上も読まれているのだろうか。現在、PMP保持している人が20万人以上いる。過去に取得したが更新せず資格を喪失した人たちのことを考えるとその数は計り知れない。それなのにどうして役に立たないといえるのであろうか。
これから数回に分けてPMBOKの意味について私の考えを述べてみたい。
PMBOKの初版が発行されたのが1987年というから20年の歴史を持っているし、1996年版からは4年毎に改訂されており、今や、世界10カ国語に翻訳されている。改訂に当たっても世界中のプロたちがボランティアとして参画し、彼らの知恵と経験の集大成であることを考えると、役立たないはずがないと考えるのが普通ではないだろうか。
かくいう私もPMBOK(1996年版)を最初に手にしたときは、正直にいって理解しがたく役立つのだろうかというのが実感であった。あれから6年、読めば読むほどその深さを思い知らされる今日この頃である。そのいくつかを述べてみたいと思う。
私の経験では、プロジェクトを成功させるための第一条件は、プロジェクト関係者、いわゆるステークホルダーの協力が得られることである。なかでもお客様の協力が得られることが最も重要だと考えている。1年に亘って私の足跡を振り返るチャンスをいただいて、多くのトラブル・プロジェクトを経験させていただいたことを改めて思い出すことができ、ほとんどのプロジェクトでお客様のご協力をいただいて立ち直ることができたことを思い知らされた。PMBOKでいうところの、“ステークホルダー・マネジメント”である。ステークホルダー・マネジメントは、プロジェクトのステークホルダーのニーズを満たし、ステークホルダーとの課題を解決することである。そのために要求されるスキルは“コミュニケーション”であるといわれている。
PMBOKの良さの一つは、“可視化”をバックボーンにしていることだと思う。ワーク・ブレークダウン・ストラクチャー(WBS)、組織ブレーク・ダウン・ストラクチャー(OBS)、資源ブレーク・ダウン・ストラクチャー(RBS)、リスク・ブレーク・ダウン・ストラクチャー(RBS)は可視化を狙いとしたツールである。これらは、プロジェクトの難しい問題を、誰にでも、分かりやすく、説明するためのツールであり、コミュニケーションの促進を促すものである。
プロジェクトの作業範囲を(WBS)、プロジェクト・メンバーの役割・責任関係を(OBS)、プロジェクトに必要な資源やコストを(RBS)、そしてプロジェクトのリスクを(RBS)理解して、初めてステークホルダーの協力を得られるのではないだろうか。これらのツールは、ステークホルダーの理解を得るためのコミュニケーションのツールとして用意されたものである。




