完成形
完成形をプロジェクトのメンバが共通にイメージすることは非常に重要である。イメージが強固であればあるほど、メンバはがんばれる。たとえば、舞台スタッフが黙々と準備するのは、みな幕が開く瞬間を心待ちにしているからだ。
開発期間が短くなり、専門化が進んでいる今日、担当者にはシステム全体が見えなくなっている。それぞれが自分の役目をきっちり果たせばよい。これは全体を理解した本当のプロの台詞である。システムの機能の一部を開発分担するなら、まだシステムをイメージできるが、ミドルウェア、開発環境と、完成システムからは遠い仕事もたくさんある。そういう担当にも完成形をイメージしてもらう必要がある。
電電公社時代の開発では、人が異動することで運用を開発にフィードバックしていた。また開発経験を運用へフィードフォーワードしていた。電電公社では、研究所であっても現場を巡る研修があった。交換機を見るだけでなく、電柱や無線アンテナに登る経験もさせてもらった。なにより交換機の保守を経験したことが大きな財産となった。性能など、数値で表現できるスペックとは異なり、保守性は測定も表現も難しい。現場の先輩たちから「俺達に保守できるシステムを作ってくれよな」と、ビールをつがれたことを今でも覚えている。
研究所の新人が現場を見学するだけではない。交換機の開発には、全国の電話局から大勢が手伝いに来た。彼らのモチベーションは驚くほど高かった。選ばれて、送り出され、開発の一部を担い、やがて戻る彼らは、戻ったときに何を言われるか、それを意識していた。システムの利用者が開発に参加することが、いま改めて重要と認識されている。XP(エクストリーム・プログラミング)でも「顧客の参画」が推奨されている。大規模プロジェクトでは、顧客も多様、開発メンバも多様だ。全員に共通にシステムイメージしてもらい、開発の流れをイメージしてもらう「場」が必要だ。




