プロジェクト解散(その2)
プロジェクトの解散にはいろいろな理由がある。「理由はいろいろ」という報告に、私は「3つ以上挙げて」と切り返す。娘にも、幼いときからそう言ってきた。3つ挙げることができず、不承不承、親に従っていた娘も、きちんと理由を3つ考えて、親に立ち向かうようになった。
単身赴任中の私に、日本からメールが届いた。娘が7年続けてきたタップダンス教室を辞めたいという。理由は、
1.先生の指導が最近とても厳しくなっている。
2.学校の授業が忙しくなってきていて、タップの練習が重荷になっている。
3.将来タップを本業にする気はない。
いつもは即座に返信する私が1日悩んだあげく、次のように返してみた。
先生の指導が厳しくなったのは、先生があなたを期待しているからで、それはあなたが上達しているからでしょう。もう少しでオーディションに出ることができると先生はおっしゃっていましたよ。先生もだけど、お父さんもあなたが舞台に立つ姿を見たいです。タップを踊っているあなたが大好きな、あなたのファンより。
こんな甘ったるいファンレターは、書いたことがなかった。しかし、理路整然とした「3つの理由」に対抗するには、論理を越えた理由しかない。その後、娘から返事はなかったが、結局、娘は教室を続け、翌年には舞台の端に立つチャンスを得た。失敗プロジェクトに理由はいろいろあるだろう。回避策の理屈もいろいろある。しかし、その前に情熱や執念が必要だ。プロジェクトマネージャや、その上司が、プロジェクトを愛していることが必須なのだ。
ちなみに、小学5年で舞台に立った娘は、留学を機にタップは辞めた。タップの先生はそれをとても残念がったまま急逝された。いま娘はロンドンで舞台美術を専攻している。プロジェクトは解散しても、情熱は深く潜行し、やがて再び芽を吹く。




