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サービス産業の生産性

2007.08.10|サービスを科学する このエントリーをはてなブックマークに追加Yahoo!ブックマークに登録この記事をクリップ!BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマーク

内閣府の「今週の指標」のNo.801[1]に、サービス産業における労働生産性の日米英比較に関する記事がある。非製造業について業種別に日米英の比較を行い、わが国の就業者数4割を占める「卸・小売」、「運輸等」、「飲食・宿泊」、「ビジネスサービス」の四業種において米英との差が広がっていることを主張している。これら業種での生産性の差異の原因を要約すると以下のようになる。
・ わが国のサービス産業の生産性に対してITの効果は、米英と比較して効果が十分に現れていない
・ わが国ではIT活用を契機とした組織改革や知識資本などの無形資産の蓄積が十分でない

わが国においてITの効果が限定的であるという点は、企業内における情報ネットワークが部門の壁を越えていない、中小企業においてIT導入・活用が限定的である、経営戦略とIT戦略を結びつけるCIO(Chief Information Officer)の役割が十分でない、といった指摘が内閣府の平成19年度 年次経済財政報告[2]でもされている。この点については改善の余地があると思われる。

組織改革や知識資本などの無形資産の蓄積についてはどうであろうか。企業戦略におけるITの価値や戦略性についての議論がされている。この議論のなかには、DIAMONDO ハーバード・ビジネス・レビューの2004年3月号のニコラスG. カー氏による「もはやITに戦略的価値はない」[3]という論文を契機に始まっているものがある。この論文では、ITが企業活動にとってのインフラとなりコモディティ化が進むなかで、事業戦略におけるITの効果にはもはや限界があるという主張がされている。優秀な在庫管理システムを導入し業界内での競争力を高めた企業があったとしよう。しかしこのシステムは、同業他社が類似したシステムを導入することで、短期間でその競争力を失ってしまう可能性が高い。情報システムの広義でのオープン化などがこのような結果を引き起こすのであろう。

企業の生産性を向上させるためには、IT投資を真に有意味なものにする必要がある。そのためには、第一に企業が市場に対して、新たな価値を創造するための組織改革の実施や顧客・取引先企業を含めた知識資本の整備が必要である。カー氏の主張するように、単純なITの投資では、企業の優位性は短期間しか確保できないケースが増えるであろう。企業の持つ、従業員、顧客、知的資本、生産手段を十分に生かした戦略とそれを実現するITへの投資が、産業の生産性向上に必要となる。

【参考文献】
[1] 内閣府 ホームページ 「今週の指標」No.801 (2007.8.9検索)
IT利用産業(サービス産業)における労働生産性の日米英比較
~IT資本深化が与える影響についての一考察~
http://www5.cao.go.jp/keizai3/shihyo/2007/0507/801.html

[2] 平成19年度 年次経済財政報告 (2007.8.9検索)
第3節 日本企業のIT活用と生産性 (P142~153)
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je07/pdf/07p02030.pdf

[3]「もはやITに戦略的価値はない」,ニコラスG.カー, DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー,2004年3月号, p137-154,ダイヤモンド社.

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