OSS開発はいつでもベスト?
7月末に開催された O'Reilly Open Source Convention (OSCON) 2007 の 「O'Reilly Radar: The Executive Briefing」という恒例のセッションの中で、Alfresco社のMatt AsayとOracle社のMike Olsonによる20分間のディベートがあった。Matt Asayはすべてのソフトウェアはオープンソースであるべきだという考えの持ち主で、その開発や配布はオープンソース流でやるのがベストであるという。一方のMike OlsonはプロプライエタリとOSS混在のミックスド・ライセンスの世界に向かうだろうという考えの持ち主で、ニッチ市場においてはプロプライエタリのソフトウェア開発は残るという。残念ながら私は参加していなかったので、直接その議論を聞くことはできなかったのであるが、Mike Olsonのブログに彼の考え方が書かれているのでそれを紹介する。
Mike OlsonはUCバークレイ卒業後、Britton Lee、Illustra、InformixとDBMSビジネスの世界でキャリアを積み、オープンソースの組込データベースエンジンの会社であったSleepycat SoftwareのCEOとなった。そのSleepycatがOracleに買収されて、現在はOracleの組込技術担当のバイス・プレジデントである。Mile Olsonはそのディベートの現場において自分の考えをうまく伝えられなかったので、自分の考えをちゃんと表明しておきたいとブログに書いている。
要約すると、インターネットはコラボレーションと発見のためのパワフルなツールであり、かつて鉄道と電話が物理的な距離の概念を消し去ったのと同じように、社会的な距離や、知識に関する距離の概念を消し去った。インターネット上で、まずプログラマがソースコードをベースにコラボレートし始めた。ソースコードは共通の仕事のアイテムであり、情報交換のメディアであった。結果的にOSSが急速に広まり、劇的な成功を遂げたのは当然のことである。
しかし、インターネットは当初の支持基盤であるプログラマの世界を超えて成長した。彼は支持基盤の変化によって、次の劇的な成功はまた違ったものになるだろうと予測しているのである。OSSは簡単にダウンロードでき、そのコミュニティに入ろうと思えば簡単に参加でき、改良もできるし、改良版を共有できる。それはいいことであるが、別にソースコードがなくても問題はないのでは?という意見なのである。
たとえばVMWareはOSSではないが、自由にダウンロードでき、活発なコミュニティやサードバーティが存在している。もっと新しい例では、FacebookやMySpaceなどではソースコードをシェアすることなく、サービスを自由に使うことができる。彼が彼の信念として言いたかったことは、「多くの人々が、インターネットが提供するコラボレーションや発見の機会にこだわらずに、プログラムのソースコードにこだわっているのが問題だ」ということである。ネットワーク人口がさらに増加すると、これらの機会は指数関数的に伸び、おのずとその性格が変わっていく。ソースコードにこだわらず、摩擦の少ない配布手法、コミュニティ、参加やコラボレーションの発展に目を向けるべきだと言うのである。
そのセッションの最後に、このあたりのことを考えるにあたり最も深遠な影響を受けた本として、彼はMatt AsayにRobert Wright著の『Nonzero: The Logic of Human Destiny』を渡している。この本では、「人類の長い進化の過程の中では、一方が他方を搾取するゼロサムゲームも散見されるが、いずれはより大きな非ゼロサムをもつ新しい均衡と安定の時代に入っていく。それこそが人類の天命である。」という見方を示している。プロプライエタリとOSS混在のミックスド・ライセンスの世界でも、充分にコラボレーションや発見の機会が増大していくというのである。




