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Computational Thinking

2007.12.03|オープンソースソフトウェア このエントリーをはてなブックマークに追加Yahoo!ブックマークに登録この記事をクリップ!BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマーク

情報化社会とか、ポスト工業化社会とか、知識社会とか、ITとか、いろいろと言われてきて、今の世の中、コンピュータや情報処理システムなしには考えられないというのは皆さん異論のないところであろう。しかし、残念なことに今の時代、どうもコンピュータサイエンスという領域の学問に人気がないそうである。それも日本だけの話ではなく、ITビジネスを牽引する米国でも同様だというのである。

このコンピュータサイエンスの斜陽化にストップをかけるための、研究者、学生とその両親、政府などに向けたビジョンが「Computational Thinking」なのである。これはビジョンであるだけでなく、アジテーションであり、悲痛な叫びでもある。Communications of the ACM, March 2006で発表されている原本がダウンロード可能であるのでじっくりと読みたい方はそちらをどうぞ。

こういうところが認められて、CMU (カーネギーメロン大学)のコンピュータサイエンス学部の学部長を務めていたJeannette M. Wingが、NSF (全米科学財団)の中の CISE (Computer & Information Science and Engineering)という組織のヘッドに引き抜かれた。CISEの予算は約5億ドルと言われている。

背景は、ずばり、学生のコンピュータサイエンス(CS)離れである。これが、米国CSアカデミーとIT産業にとって大きな危機になる。CSはプログラミングと同義である、とか、CSの基盤研究は終わって工学的活用が残るだけだ、と世の中では思われている。そこで、CSとは何か?という問いに答える必要があったのだという。

Computational Thinkingでは、2つのメッセージを出している。一つは、科学的課題への知的なチャレンジはまだ必要だというメッセージ。もう一つは、CSを専攻してキャリアを積むことができる。たとえば、CSを専攻して、医学・法学・経営・政治などで活躍できると訴えている。

そもそも、Computational Thinkingとは何かというと、万人向けの読み/書き/算術の次にくる基本スキルセットであるという。つまり、統計学やバイオなどでも不可欠のスキルである。世の中では、Computational Biologyとか、Computational Chemistryとか、Computationalが頭につく学問領域がたくさん出てきている。他にも、design, finance, linguistics, logic, mechanics, neuroscience, physicsなどがあり、学際的に連携し普及・浸透している。 Computational Thinkingには、問題解決や、設計や人間行動の理解が含まれ、CSに不可欠の概念を追求することになる。さらに、ユビキタスコンピューティングの次はComputational Thinkingだと宣言している。

大規模で複雑なシステムの解析と設計においては、抽象化と問題分割が必要となる。これによって、システムの細部にわたって全て理解することなしに、安全利用・カスタマイズ・支配できるという信念を持てる。また、トラブルの予防・防御・リカバリや、失敗学、競合解決なども含まれる。もちろん、ヒューリスティックスや発見も。Computational Thinkingはこれからどんどん重要になってくるという。

CSは計算学である。何が計算化可能か、どのように計算するのかということを追求する学問である。一方、 Computational Thinkingは、(1) 様々な抽象化レベルで考えるもの、(2) ルーティンワークではなく、考えるという基本スキル、(3) 人間の創造性や知性やスマートさをコンピュータで拡張するもの、(4) 数学や工学的な考え方を補完するもの、(5) アイデアやコンセプトであって、ソフトやハードではない、(6) 万人のもの、であるという。

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