サービスの機械化と範囲
かつては機械化というと、物理的な活動が対象であった。電気モーターは、工場や家庭の活動を急速な勢いで機会化した。人間が行なう物理的な活動を、いかにして電気モーターの回転運動に置き換えていくかが重要であった。
工場では、工業ロボットが、人間が手で行なう活動を代替した。部品をつかんで適切な位置に配置するという活動は、機械的に制御され正確に行なわれた。機械化する際には人間の手の物理的な制約からも飛躍した。インタフェースの改善がそれである。工業ロボットが部品をつかむインタフェースは必ずしも人間の手と同じである必要はない。20個の部品を同時に等間隔につかみ、並べるためのインタフェースを機械に装備することで、人間の手の作業効率をはるかに上回る。電気掃除機もモーターの回転運動を効果的に利用している。「ホウキでゴミを掃く」という労働を電気モーターで自動化するという手段は取っていない。「ホウキでゴミを掃き、チリトリに集める」という作業までを機械化している。機械化の対象を掃き掃除だけでなくその後の集塵までに広げた点が合理的である。機械化の範囲が適切な例と言える。
人間の精神的な活動であるサービスの機械化について考察する。Apple社のiPodとiTunesは携帯型コンテンツプレイヤーによるコンテンツの閲覧を一変させた。ケーブルを使い手動で行なっていたレコードやCDからのメディアへの録音は、インターネットを用い短時間で、プレイヤーで利用できるようにした。これは、コンテンツとプレイヤーのインタフェースの改善であり、機械化することによりユーザが視聴可能なコンテンツの数を飛躍的に増加させた。しかし、コンテンツとプレイヤーのインタフェースの改善は、MP3プレイヤーの利用でも実現されていた。Apple社はFairPlayというデジタル著作権管理(DRM)を用いて、不正コピーが問題視されていた既存のMP3との差別化を行った。FairPlayはコンテンツに対し一定の利用制限を実現しているが、他社が提供するDRMに比べ、利用者が購入したコンテンツは合理的に自由に利用できる仕組みになっている。FairPlayの導入により、単なるコンテンツ流通の機械化に加え、コンテンツ提供者と利用者の要求条件の実現を合理的に機械化した点がiPodとiTunesのヒットにつながった。サービスの機械化の範囲が適切で、機械化の方法も合理的であった例と言える。要件定義の際に従来の慣習やスキームに捕われず、さまざまな視点でサービスの範囲を決定することが重要である。
【参考文献】
[1]進化する企業のしくみ, 鈴木貴博、宇治則孝, PHPビジネス新書, 2007.
[2]Wikipedia 日本語版, 「FairPlay」
http://ja.wikipedia.org/wiki/FairPlay




