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基盤ソフトウェア研究 (その6)

2008.04.23|オープンソースソフトウェア このエントリーをはてなブックマークに追加Yahoo!ブックマークに登録この記事をクリップ!BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマーク

やっと最後である。

【為すべきこと】

「スタートアップ企業は、新しいことに挑戦するにあたって短期間で実用的な結果を出すことにフォーカスを当て過ぎている。大企業も新しいことへの挑戦の優先順位を上げ過ぎている。スタートアップ企業は研究からエネルギーを吸い上げているが、ゴールドラッシュが去ったらゴーストタウンが残るだけである。放電ではなく、充電の準備をしよう。システムについて考え、構築することに戻ろう。狭い視野は不適切であり、広い視野こそが正しい。それがシステムの本質である。」

「システム同士の挙動がどう違うのかを比較するだけではなく、システムがどのように動くのかについて研究しよう。エンジニアリングだけでなく、インタフェースやアーキテクチャに注力しよう。勇気を持とう。違ったことに挑戦して、実験しよう。クールなデモをやることに挑戦しよう。ファンド母体はもっと勇気をもって、長期のプロジェクトにファンドしよう。大学は交代で学生に長期プロジェクトに貢献させる方法を検討すべきである。論文や金ではなく、アイデアによって成功を評価しよう。企業に自分たちの仕事の成果を欲しがらせよう。」

【作るべきもの】

「やるべきものとして、価値があり、有益で、おもしろいものはたくさんある。その証拠として小さなサンプルを示す。その分野が消滅寸前だとしても、それは可能性がないというわけではない。たった一つのGUIだけが今まで真剣に試されてきた。そのベストなアイデアは1970年代からあるものだ。(ますます悪化しており、今日では、スクリーンは小さなアイコンでごちゃごちゃに覆われている。) 確かに、他の可能性もある。(LinuxのインタフェースはWindowsと比べると良くない。)」

「これまでコンポーネントアーキテクチャについてはいろいろと議論されてきたが、本当に成功したものはたった一つ、Unix Pipeだけである。インタラクティブかつ、部品群から組み上げた分散アプリケーションを構築可能であるべきだ。未来は分散コンピューティングになるが、その可能性に対してプログラミング言語コミュニティはほとんど取り組んでいない。Webは、どのようにシステムが存在し、どのように情報を利用するかを支配している: そのモデルは,強制されたインターラクションであり、ユーザは情報を取りに行かなければならない。そうではなくて、ユーザの方にデータがやってくるような形態に戻ろう。システム管理は極めて困難な課題として残っている。確かに魅力的ではないが、巨大で、商業的な貢献をする多くの余地が残っている。

うーん。確かに、彼はここで言っていた『作るべきもの』をGoogleで作っている。分散コンピューティングの世界のプログラミング言語Sawzallがそれということである。

【結論】

「世の中はコンピュータがどうあるべきかを決めてしまった。システムズソフトウェア研究コミュニティはその決定に何らかの影響を及ぼしたが、それは非常に小さく、今やその議論からは完全に締め出されている。素晴らしいシステム基盤研究プロジェクトでさえファンドを得ることができるかは疑問であると言わざるを得ない。万一、ファンドを得たとしても、今度はプロジェクトを実行する実体を見つけることが難しいだろう。成功の確率はいつも低い。でも今は本質的にゼロである。大学、学生、産業界、ファンド元などのコミュニティはその優先順位を変える必要がある。コミュニティはオーソドックスでないアイデアを受け入れて検討すべきである。コミュニティは研究と市場への投資を分けるべきである。」

ひとつ前に書いた『Computational Thinking』のところをもう一度読んでみて欲しい。学生のコンピュータサイエンス離れがどんどん進んでいる。米国としては国を挙げてこの危機に立ち向かおうとしている。ここでRob Pikeが『基盤ソフトウェアの研究は時代遅れになってしまった』と嘆いたことが深刻化しているのが現在なのである。

しかし、大学での研究という形は衰退していっているのかもしれないが、今まで誰もが構築できなかったような超大規模なシステム基盤を武器とするGoogleがある。Rob Pikeがそこで活躍しているように、優秀な基盤技術者をどんどん吸い寄せ、まさにビジネスに直結した形でのイノベーションを展開しているというのはすごいことである。そして、Googleだけでなく、Apacheコミュニティからも先進的で大規模なシステム基盤のOSSがどんどん出てきている。これらを使いこなし、さらに機能強化していくことによって、大学の学生も力をつけていけるのではないか、そしてコンピュータサイエンスの未来にまた光が戻ってくるのではないか、と思う今日この頃である。

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