猿でもわかるサービス工学
ソフトウェア工学に続き、工学シリーズで「サービス工学」を紹介する。これもあまり聞きなれない言葉である。数年前から工学の新たな一分野として世界的に注目され、研究が広がりつつあるようである。サービス工学研究会(http://www.service-eng.org/index.html)という組織もできている。ここでいうサービスとは、いわゆる第三次産業に分類されるサービス業のサービスのことである。情報通信、飲食、宿泊、医療、福祉介護など様々なサービスがある。こういったサービスを工学的な観点から研究しようというのである。
そもそも工学では、装置や薬品・建築物といった製品(モノ)を、高品質かつ低コストで設計・製造するために様々な手法・技術が研究開発されてきた。この手法をサービスという無形物(コト)へ適用できるのだろうか。
これまでサービスの設計・開発(モノで言う製造)は「経験や勘」にたよってきた。自動車等のモノでは、こういった素材でこれこれの部品を作りこう組み合わせればこんな製品ができる、といった設計が計算により一意に決まる。さらに製造コストも一意に見積もることができる。これに対し老人デイケアサービス等のコトの場合は、こういう手順でこういったサービスをすればこの程度の満足が得られるといった一意の設計は困難だ。またサービス提供のコスト(費用・労力等)もその場その場で違ってくる。それはサービスの提供者や受け手である人間の主観が入るからと考えられる。これまでは、その主観を豊富な「経験と勘」で理解し、より良いサービスを設計・開発につなげてきたのだろう。
サービスとは「受け手の望みをかなえてあげる」ことと言える。サービス工学では、これを一意にモデル化し、受け手の満足度(望みのかなえられ具合)を数値評価して、サービスの設計→適用→評価・分析→設計…といったループを回して、高品質化と高効率化の実現へアプローチするようだ。また、それを円滑に実行するための各種ツール(ソフトウェア等)の開発も行う。
サービス工学はまだまだ始まったばかりの学問だが、サービス業は今や日本のGDPの7割を占めているという。ということは、極論すれば旧来の工学はGDPの3割にしか寄与していないことになる。サービス工学での各種手法・技術の確立は、経済や産業の発展のためにも急務のようである。
日本には茶道に代表される“おもてなし”という伝統文化がある。また「お帰りなさいご主人様」の萌え系喫茶サービスなど新しい“おもてなし”も生まれてきている。日本人や日本文化がもともと備えている“サービス精神”を“工学”の形へ転換できれば国際競争力の面でも大いに期待できそうである。




