今日の焦点

激動の年を迎える電気通信業界

わが国の電気通信業界を大きく括 ればNTT 、NCC 、外資系の3 グルー プになる。本年はそれぞれにとって 大きな試練を迎える年と言えよう。

まずNTT だが、NTT の東西地域 会社と他の通信会社の接続料金につ いて、引き下げに向けた議論が正念 場を迎えている。郵政省は長期増分 方式という新算定方式による料金引 き下げモデルを公表、現在これに基 づいて電気通信審議会が検討してい る。NTT では郵政省の案では年間 4 ,300 億円の減収となり、経営に破 壊的な影響を与えるとして抵抗して いる。NCC 各社は安い方が良いに 決まっているから、当然郵政省案の 採用を要求しており、米国も日米規 制緩和協議の一環として、接続料金 の引き下げを強く要求している。

しかし、米国は自国内では、ユニ バーサル・サービスを義務付けられ ている地域電話会社に対して、長距 離会社がファンドを支払う制度を設 けており、またモデルの設定の内容 も異なっているなど、米国の主張に は無理があるとの指摘もある。最終 的には、NTT の経営に与える影響と 米国の主張を勘案して決定されるだ ろうが、NTT には厳しい結論となり そうである。

優先接続制の導入もNTT にとっ ては厳しいものとなる。これは顧客 が通常優先的に利用したい長距離会 社を事前に登録しておき、その長距 離会社を使う場合は「00 ××」のよ うな特殊番号を使う必要がないとい う制度である。今は、NTT だけが特 殊番号なしで使えるようになってい るが、この制度が導入されるとNTT もNCC も電話番号については平等 となり、NTT の優位性は失われる。

プライスキャップ制も2000 年に 導入される見通しである。これは物 価の上昇率を基本としたある一定率 の範囲であれば、認可を受けること なく自由に価格を設定できる制度 だ。これはNTT 、NCC の区別なく いよいよ価格競争が激しくなる。

NTT は2000 年3 月の決算見通し で、東日本の経常利益が290 億円、 西日本の経常損失が700 億円、両社 合わせて経常損失410 億円と、当初 計画とは違って大きくマイナス決算 の予想であり、NTT グループとして は好決算であっても、東西地域会社 は大変な試練を迎えることになる。

NCC にとっての2000 年最大の焦 点は、DDI 、KDD 、IDO の合併であ ろう。3 社は本年の秋に合併する方 向で調整しており、これでKDD も 次世代携帯電話事業に参入すること になる。2001 年春を予定している次 世代携帯電話については、NTT ドコ モグループと日本テレコムのJ フォ ングループが参入を狙っているが、 これに外資系が加わるとなるとこれ また大変なことになる。郵政省は各 地域ごと最大3 事業者としている が、次世代携帯電話の免許交付につ いて比較審査方式で決定する方針を 明らかにしている。2000 年春には免 許申請を受け付けることになってい るが、従来の3 事業者も安閑として はいられない。

昨年12 月にTTNet を始めとする 電力系NCC 10 社は本年夏までに企 業向け高速データ通信サービスを開 始する計画を発表して、グループの 連携を強化する方針を明らかにした が、さらにグループの一体化を進め ることができるのか、これまた厳し い選択を迫られよう。とりわけ、携 帯電話への進出をどうするかが大き な課題である。

外資系グループでは昨年のC&W によるIDC 買収劇が大きな話題と なったが、今年にこれがどのような 成果を出すのか興味深い。また、 MCI ワールドコム、KVH テレコム、 グローバル・アクセスなどの通信 会社が日本の東京、大阪などのビジ ネス街に自前のネットワークを構築 して国際網と接続してサービスを開 始しようとしている。果たしてどこ まで顧客を獲得することができるの か。こうした外資系各社にとっても 今年は正念場を迎える。マイクロソ フトによるタイタスの買収も、ラス トワンマイルの外資参入のケースと して、見逃せない。他にも国内外の 多くの企業が通信事業への参入を図 っており、通信業界はまったくの戦 国時代である。誰が勝者で誰が敗者 になるのか。今年いっぱいひととき も目を離すことはできない。