ECSP(E-Commerce Service Provider)


落井 徹
劾TT データ新世代情報サービス事業本部
新世代情報サービス事業推進部長

<お問い合わせ先>
新世代情報サービス事業推進部
企画担当
Tel 03- 5546- 8289

急拡大するEC 市場に向けた NTT データのECSP

●2003 年には71 兆円超の規模に

わが国においてもEC (Electro-nic Commerce )の本格展開が始ま ろうとしている。米国に3 〜5 年遅 れているとはいうものの、わが国で もインターネット人口は爆発的に増 加している。インターネットの驚異 的な普及のスピードは、これまでの さまざまな情報通信メディアの普及 率に比べ世帯普及率10 %達成まで 5 年間と圧倒的な速さからもうかが える(平成11 年度版「通信白書」 より)。ちなみに、電話は実に76 年 間、パソコンは13 年間となってい る。このようなインターネットの普 及に伴って、わが国におけるEC は、 米国に数年遅れる形で、コンピュー タ関連機器販売等の先行業種から、 オンライン証券取引、旅行関連、音 楽、教育、健康等の業種へと本格的 に普及する兆しを見せている。

通産省とアンダーセンコンサルテ ィングが行った「日米電子商取引の 市場規模調査」によると、図1 に示 すように、日本のEC 市場は2003 年 にはB-to-C (企業−消費者間)が3 .16 兆円、B-to-B (企業−企業間)が68 兆円規模に達すると予測している。

図1 日米におけるEC市場規模予測

図1 日米におけるEC市場規模予測


●EC サービスとEC ソリューシ ョンからなるAINS のECSP

急速に拡大する日本のEC 市場に 向けたビジネス戦略として、NTT データ・新世代情報サービス事業本 部(AINS )では、ECSP (Electro- nic Commerce Service Provider ) ビジネスを積極的に展開している。 このECSP は、EC のビジネス領域 全般を総称している。つまり、B-to- C およびB-to-B のEC サービスに 加え、EC を行うための仕組みを提 供するEC ソリューション・サービ スを含めてECSP ビジネスと捉えて いる。

EC が本格的に立ち上がる過程で は、現在証券業界で見られるような 異業種からの参入やインターネット 特有の新サービス(ポータル・サイ ト等)出現による業界再編が起こっ ている。また、インターネット上で 企業間取引を行う企業が増加、EC 市場に向けコンピュータベンダ、キ ャリア等さまざまな企業がダイナミ ックに参入してきている。

一方、EC が本格展開し、ミッシ ョンクリティカルな基幹業務にまで 浸透するに従い、従来のWeb サー ビスより格段に信頼性の高いシステ ム構築・運用が必要になる。たとえ ば、米国での例(オンライン証券取 引のE*trade 、オークションの eBay などのシステムダウン)にみ られるように、テクニカルなトラブ ルが企業全体への信頼を損ねること にもなりかねない。しかし、そのよ うなシステムを自社で構築・運営で きるところは少なく、システムの構 築・運用にはサーバホスティング/ アウトソーシングサービス等を利用 し、企業本来の業務に専念しようと いう傾向が強くなってきている。さ らにコストやメンテナンスといった 観点から、企業向けアプリケーショ ンのWeb 版を共同利用型のアウト ソースサービスで提供するASP (Application Service Provider )ビ ジネスの成長が期待されている。

今後のEC 市場のトレンドとして は、次のような点があげられる。
@システムの構築/運営事業に加 えインターネット付加価値サービ ス(セキュリティ、EC 取引支援、 マーケティング支援、広告支援等) へのニーズが増大する。
A携帯電話の高普及率を背景に、 日本ではモバイルコマース(m-Com merce )市場が今後急速に 発展していく。

このようなEC 市場のトレンドを 見据えて、NTT データでは新世代 情報サービス(AINS )の一環とし て、これまでのサービスを一段と強 化したECSP ビジネスの積極的な展 開を図っている。

企業間(B to B ) EC ビジネスへの取組み

わが国の企業間EC の市場規模 は、2003 年には、現在の7 倍強の 68 兆円規模にまで拡大すると予測 されている。このように急速な拡大 が予想される企業間EC 市場の背景 として、以下のような企業間取引に おける環境変化とEC への期待効果 があげられる。


<環境変化>
・インターネットの急速な進展
・商取引のグローバル化、メガコン ペティションの到来
・経営合理化への動き、ビジネスの スピードアップ
・消費者の嗜好の多様化
・規制緩和、業界構造の変化

<EC への期待効果>
・ローコストオペレーションによる 競争力強化
・新しいビジネスチャンスの拡大
・企業間コラボレーションの実現


このような環境変化とEC への期 待が相乗効果となって、企業間EC は今後ますます拡大し、MRO (メ ンテナンス、リペアー、オペレーシ ョン)の購買分野はもちろんSCM (サプライ・チェーン・マネジメン ト)分野へのEC 導入が進むものと 思われる。すでに、MRO の分野で はインターネットを利用したオフィ ス関連用品電子調達サービスである 「orderit 」を提供しており、SCM の分野でもセットメーカと部品ベン ダー約50 社間を結ぶ「電子部品ネ ット」の実証実験を実施している。 弊社のEC 分野への取組みの基本 は、図2 に示したように、情報提 供/売りと買いのマッチング/受発 注/決済/物流といった企業間取引 における各機能を統合的にサポート することにある。

図2 AINSの企業間ECビジネスへの取り組みとソリューション

図2 AINSの企業間ECビジネスへの取り組みとソリューション




●12,000 社の会員を持つ 「orderit TM 」

企業間における物の売り買いを仲 介する場として、「orderit (オーダ ーイット)」ある。このorderit は関 連会社であるNTT オフィスマート 鰍ェ提供しているオフィス関連用品 の電子調達サービスだ。オリックス、 ソフトバンク、アスクルと提携し、 図3 に示すように、企業で必要な事 務用品、事務機器、OA 関連用品、 パソコンソフトなどを、インターネ ットを使って、簡単・迅速・低コス トで調達できる場を提供している。 orderit の主な特長として、次の4 点があげられる。


図3 orderit ( http://www.orderit.ne.jp)

図3 orderit ( http://www.orderit.ne.jp)


@One Stop サービス
文具からPC 関連用品、ソフトウ ェア等の豊富な品揃え。

A簡単検索、簡単発注
社内のPC からブラウザによりイ ンターネット経由で簡単かつ迅速な 商品の検索、発注が行える。

B迅速なデリバリー
注文日の翌日に納品。

C戦略的購買支援
出荷状況や実績データの提供な ど、戦略的な購買管理をサポート。 現在、5 万アイテムの商品を取り 揃え、12 ,000 社の会員企業が orderit を利用して調達しているが、 商品アイテム数も会員企業数も急速 に増加する傾向にある。

●統合購買ソリューション

バイサイド向けのEC ソリューシ ョンとして、近々提供を予定してい るのが、「統合購買ソリューション」 である。企業の購買業務は、商品選 択、起案、決裁(承認)、 発注といった購買ワー クフローに基づいて行 われる。そして、これ らのワークフローの管 理は、ERP 、グループ ウェア等によりシステ ム化されてきている。 統合購買ソリューショ ンは、図4 に示すよう に、バイサイド(買い 手企業)の社内システ ム(購買ワークフロー) とorderit をシームレス に連動し、購買プロセ ス単体から購買業務全 体の効率化を図るため のEC ソリューションだ。

図4 統合売買ソリューション

図4 統合売買ソリューション


統合購買ソリューションの主な特 長を以下に示す。


@企業内の購買ワークフロー(商品 選択〜承認〜発注)とorderit を シームレスに連携することによ り、購買業務を大幅に効率化
Aシステム連携に、EDI の世界で標 準になりつつあるオープンなフォ ーマットであるXML * を採用。柔 軟性に富み、他への展開も容易
B市販パッケージソフトウェアとの 連携に対応
・SAP R/3
・Lotus Notes Domino (CNAP Workflow )
・Intra-Mart



参考までにNotes Domino (CNAP Workf low )からの購買フロー画面 の一例を図5 に示した。今後、連携 対象システムを順次追加していく予 定である。


*XML :extensible markup language の 略。インターネット上でさまざまなコン テンツを扱えるよう設計された記述言語。 文書そのものを記述するための言語では なく、文書の構造を表現する機能を持つ Web 向けデータ記述言語であり、異なる システムを導入している企業間でのデー タ交換が容易になる。今後の企業間取引 のデファクトスタンダードとして注目を 集めている。
統合購買ソリューションでは、XML を 採用することにより、ユーザ企業のシステ ムとNTT データオフィスマートのWeb サ イト間に発生する見積書、請求書のやり取 りをシームレスに行うことを可能とした。


図5 Notes Domino(CNAP Workflow)からの購入フロー画面例

図5 Notes Domino(CNAP Workflow)からの購入フロー画面例


●i.commerce TM sellside

スピードが命!と言われるネット ビジネス。早期参入を実現するため には開発期間を短縮し、しかも高度 な信頼性を持つEC サイトの構築が 不可欠である。このような本格的な インターネット・コマースサイトの 構築を要望する企業を強力にバック アップするのが、平成11 年11 月か ら発売した「i.commerce sellside (アイコマース・セルサイド)」だ。 i.commerce sellside は、図6 に 示すように、企業間EC のセルサイ ド(売る側)を対象としたEC ソリ ューションであり、次に記す特長を 有するEC ビジネスへの早期参入を 実現するためのパッケージ・ソリュ ーションである。

図6 i.commerce sellside

図6 i.commerce sellside


i.commerce sellside には、以下 の4 つの特長がある。

@企業間EC に特化した機能
アプリケーションを持たないバイ サイド企業の社内稟議を、Web ブ ラウザのみで実現するワークフロー 機能や、取引先企業別に異なる商品 価格を設定する機能など、企業向け の販売システムに便利な機能をオー ル・イン・ワンで提供。

A充実したバックエンド機能
商品データのメンテナンス機能な ど、EC サイトの運営を支援する機 能を豊富に用意しており、サイト管 理に費やす負荷を軽減。さらに、 Web-EDI によるサプライヤー企業 への出荷指示や、XML によるバイ サイド企業のERP システムへの連 携機能など、拡張性の高いシステム 環境を提供。

Bスケーラビリティと信頼性の確保
n J a v a で作成されているため、 WindowsNT から各種UNIX まで対 応。このため、ビジネス規模の拡大 によるサーバ環境の移行も、スムー ズに行える。また、ミドルウェアに Web アプリケーションサーバを採用 することにより負荷分散、耐障害性 の向上を実現した高い信頼性を提供。

C優れたカスタマイズ性
ビジネスロジック(Java )と画 面デザインを分離することにより、 企業イメージに合わせた画面デザイ ンの変更が容易。ビジネスロジック は、オブジェクト指向による拡張性 の高いコンポーネントを用意。

企業−消費者間(B to C ) EC ビジネスへの取組み

企業間EC に先行して広がってい る企業−消費者間EC ビジネスは、 NTT データでは以前から取り組ん でおり、図7 に示すような多くの実 績を持つサービスを展開してきてい る。

図7 企業ー消費者間のECサービス

図7 企業ー消費者間のECサービス


これらのサービス形態は、商取 引型(ショッピング)、コミュニテ ィ型、情報提供型、One to One 型 の“場のサービス”である。いずれ のサービスも、コンテンツの拡充や 機能拡張を逐次図っている。さらに は「magnet 」というセグメント化 された場を活用したファミリー市場 の調査システム「マグネット・リサ ーチ」サービスも開始している。ま た、社内向けに提供してきたOne to One 型健康情報配信サービス 「PERSONAL HEALTH CARE NETWORK 」は、「三健人」のブラ ンド名でサービス開始される。これ は、単なるヘルスケアだけでなく、 介護や保険、関連商品の販売も含め た健康ポータル的なサービスにして いく計画である。

これらのサービスは、現在個々の サービスとして提供されている。今 後は、これらをインテグレーション し、「インターネット統合サービス」 として展開する方針である。

インターネット総合サービスを展開

新世代情報サービス事業本部の EC サービスの方向性として、イン ターネット統合サービス「edream 」 の展開があげられる。これは図8 に 示すように、場のサービス(ECSP ) と、インターネット接続サービス (ISP )の連動を軸に、総合的なEC サ ービスを提供しようというものだ。

図8 インターネット統合サービス「edream 」への展開

図8 インターネット統合サービス「edream 」への展開

ECSP のビジネス領域では、これ まで説明してきたように、EC サー ビスである“場のビジネス”、さら にはEC システム・インテグレーシ ョン・サービスなどの“EC ソリュ ーション・サービス”を展開してき ている。これらの既存のサービスは、 信頼性、決済手段を含めた安心なセ キュア環境、信用のあるコンテンツ、 快適なアクセス環境などの面からい ってもすでに多くの利用実績を有し ている。これらのサービスと、本特 集の別稿で紹介するI S P 「DreamNet 」を軸に、トータルな サービスを提供していこうというも のだ。そのためには、他社サービス との差異化を図り、NTT データな らではの特長を持たせるために、次 のような取組みを行っている。

・モバイル対応への取組み強化 (携帯電話、PDA 等)
・将来のデジタル放送等への先駆的 対応
(TV 、デジタル家電等)
・魅力あるサービス・コンテンツの 大幅拡大(アライアンス中心)
・認証/決済機能のコンポーネント であるIC カード技術の提供
・NTT グループとの連携(類似サ ービス、新規ビジネス)




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