ASP(Application Service Provider)

落井 徹
劾TT データ新世代情報サービス事業本部
新世代情報サービス事業推進部長

<お問い合わせ先>
新世代情報サービス事業推進部
企画担当
Tel 03- 5546- 8289

立ち上がり始めたASP ビジネス 所有から利用への パラダイム・シフト

●急成長が見込まれるASP 市場

ネット先進国米国では1998 年か ら注目を集め、1999 年春から急速 に立ち上がり始めたA S P (Application Service Privider )事 業への参入が、日本国内でもSI 事 業者、ハードウェア/ソフトウェ ア・ベンダー、ISP 、キャリアを中 心に急速に広がりつつある。

ASP の明確な定義はなされてい ないが、1999 年5 月に米国で結成 されたASP Industry Consortium では「ワイドエリアのネットワーク を通じて、データセンターから複数 の顧客に対して、アプリケーション 能力の提供と管理を実施するもの」 としている。つまり、ユーザ企業の 業務に必要な各種アプリケーション の機能を提供・管理するビジネスで あり、アプリケーションのアウトソ ーシング・サービスと言える。

ASP が注目されるのは、次のよ うなユーザ企業から見たASP の魅 力/期待感があるからだ。

@システム管理を専門業者(ASP ) に委託し、自社のIT 部門は情報 戦略の立案、企画などに集中
Aサーバ等設備の運用・保守・更 新、最新ソフトウェアへのバージ ョンアップからの解放
Bアプリケーション選択範囲の拡大
C@〜Bの結果として、TCO の大 幅削減


資金力、ノウハウの面からいって もソフト開発・運用までを自社で行 うのは難しかった中小企業にとっ て、IT 投資を最小限に抑える形で最 新の業務ソフトを利用できるのは大 きな魅力である。また、中小企業の みならず大企業にとっても、EC な ど新分野のソリューションを迅速に 導入できるといったメリットもあ る。このため、ASP サービスの導入 は、中小企業をはじめ、ERP 、EC 等新しいソリューションの導入・迅 速な立ち上げを目指す企業を中心に 急速に拡大する可能性が高い。

ASP の市場規模は、2003 年には 全世界で227 億ドル(米Dataquest )、 日本でも1 ,670 億円(IDC ジャパン) にまで成長すると予想されている。 インターネットの発展は、ネットワ ークを通じて、ソフトウェアを所有 する時代から利用する時代へのパラ ダイム・シフトをもたらしたと言え る。

●日本でもコンソーシアム設立

今後大きな成長が期待される ASP の市場開拓と普及促進に向け、 1999 年11 月1 日に「ASP インダス トリ・コンソーシアム・ジャパン (ASPIC Japan )」が設立され、会 長にはNTT データの河合輝欣副社 長が就任した。

この団体は、ASP Industry Consortium の認定を受けた日本唯 一のコンソーシアムで、ASP ビジ ネスのわが国での普及、展開、市場 開発のため、国際組織との連携・情 報交換をしながら、日本市場でのパ イロット事業の推進、問題点の共同 解決、情報提供を行うとしている。

NTT データならではの特長を活 かしたASP ビジネスへの取組み

ASP ビジネスは、端的に言うと ネットワークを通してソフトウェア の期間貸しを行う、共同利用型のサ ービスである。

NTT データ・新世代情報サービ ス事業本部では、図1 に示すように、 CAFIS 、ANSER といった共同利用 型サービスの実績、インターネット サービスの実績、セキュリティに対 する取り組み、モバイルコンピュー ティングの技術力、多数の情報シス テムの構築・運用実績をはじめとす るNTT データならではの特長を活 かしたASP ビジネスを積極的に展 開していく方針だ。

図1 NTTデータのASPサービスの強み

図1 NTTデータのASPサービスの強み


ASP ビジネスへの参入にあたっ ては、NTT データの営業活動に基 づくお客様から寄せられた次のよう な生の声を参考にさせていただい た。

<情報システム担当部門>
・インターネット/イントラネット を導入したがこの先どうしよう?
・基幹システムの開発・運用や 2000 年問題への対応で社内の情 報システムに手が回らない。
・技術の変化が早く、新しい技術に 対応できる人材がいない。
・社内ユーザへのサポートに時間を 取られている。
・イントラネットを作ったが内容が 薄い、コンテンツの維持が大変。
・社内各部門の個別要求をまとめき れない。


<経営管理担当部門>
・情報システム関連のコストを削減 したい。
・情報システム関連投資が負担だ。
・本業回帰のため情報システム自体 を外部に委託したい。


<エンドユーザ部門>
・部門内の情報共有化を図りたいの に情報システム部が対応してくれ ない。
・社内で使われているシステムが自 部門の業務に合っていない。
・情報システム部の対応が遅い。


以上は、多数寄せられたご意見の 一部であるが、これらの課題を解決 し、図2 に示すメリットを有する ASP サービスを提供していきたい と考えている。

図2 NTTデータのASPサービスのメリット


図2 NTTデータのASPサービスのメリット


第一弾として、企業向け オフィス業務支援サービスを開始

新世代情報サービス事業本部で は、ASP ビジネス向けに独自開発 したアプリケーションを提供する大 規模なデータセンターを構築、イン ターネットを通じてこれらアプリケ ーションの機能を提供する(図3 参 照)。

図3 NTTデータのASP概要図


図3 NTTデータのASP概要図

この第一弾として、2000 年1 月より、「企業向けオフィス業務支 援サービス」(図4参照)を開始する。

図4 企業向けオフィス業務支援ASPサービス


図4 企業向けオフィス業務支援ASPサービス


●サービスメニュー

企業向けオフィス業務支援サービ スは、以下のような豊富なメニュー を取りそろえている。

<基本サービス>
・スケジュール管理
・施設予約管理
・文書管理
・ワークフロー機能
・電子会議室/掲示板
・旅費精算
・勤怠管理
・備品発注管理

<拡張サービス>
・営業支援
・人事管理
・電子受発注

<運用・運営サービス>
・電話/FAX /電子メールによる サポート
・サーバ保守/データバックアップ
・セキュリティ監視
・ネットワーク障害監視

●サービスの特長

企業向けオフィス業務支援サービ ス」の特長を以下に列記する。

@早期導入
・必要なときに必要な期間のみ利用 できる

ATCO の削減
・自主開発/運用に比して安価
・システム管理要員の人件費を削減
・メンテナンス費用、バージョンア ップ費用が不要
・資産管理不要

B最新技術と既存資産の活用
・社外で、モバイルPC 、PDA 、i モ ード端末からでもインターネット を経由して利用可能
・クライアントはブラウザのみのた め、既存のPC を有効活用

●今後の展開

新世代情報サービス事業本部で は、今回の「企業向けオフィス業務 支援サービス」に加え、前稿で紹介 した「インターネット統合サービス」 と連動したEC ビジネス向け課金・ 決済等のアプリケーション、企業間 連携を支援するアプリケーション 等、順次投入していく予定である。 なお、ASP ビジネスの商品企画、 販売、運営にあたっては、NTT グ ループとの連携も積極的に進めてい きたいと考えている。

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