21世紀に向けたノーテルネットワークスの使命

ノーテルネットワークス株式会社 サービスプロバイダーソリューションズ社長
マット・ダッシュ(Matt Desch )



ノーテルネットワークスの、アジア、ヨーロッパ地区の総責任者 であるダッシュ氏が来日した。ちょうど、ノーテルネットワーク スの新体制が発表された直後でもあるので、今後のビジネス戦略 などについて伺った。

●ワイヤレスインフラのトップ メーカに育てた

――ダッシュさんの自己紹介をお 願いします。

ダッシュ私はAT&T を経て、1987 年にノーザンテレコム(現ノーテル ネットワークス)に入社しました。 入社以来、ビジネス・プランニング、 マーケティングおよびプロダクトラ イン・マネジメントの上級管理職を を歴任しました。1991 年からは、ワ イヤレスビジネスに加わり、現職に 就く前の4 年間は、ワイヤレスソリ ューションの社長をしました。

10 ,000 人以上の部下を率いて、デジ タル携帯電話、PCS 、衛星および狭 帯域無線アクセス事業を成長させ、 ノーテルネットワークスをワイヤレ スインフラのトップメーカに育て上 げました。

●なぜユニファイドネットワー クス?

――ユニファイドネットワークス というコンセプトを発表されました が…。

ダッシュなぜ今ユニファイドネッ トワークスが重要なのかということ について触れたいと思います。今、 情報通信業界は、非常に大きな変貌 を遂げている状況にあります。これ には、二つの大きな要素があると思 います。

一つは「競争」です。大競争 (Mega Competition )の時代と言わ れているように、世界各地で起きて いる競争により、環境が大きく変わ ってきています。たとえば、インタ ーネットのサービスプロバイダは、 キャリアが進出する前に、多くの顧 客を獲得しました。

二つ目は、「インターネット」で す。インターネットの普及により、 多くの人が情報を共有できるように なり、社会の仕組みそのものが変わ ってきています。

加えて、インターネットを支えて いるIP 技術が、今までの回線交換 技術よりももっと効率のよいもので あることが分かりました。

私たちは、数年前に、音声、デー タ、マルチメディアといったものが、 より収斂(れん)しようとしている ことを察知しました。そしてまた同 時に、キャリアやサービスプロバイ ダも、合併や吸収などを遂げてきて いるという傾向を読み取りました。

私たちは、このような状況に対応 するための新しいビジネスが必要で あると考え、音声とデータ通信を融 合したユニファイドネットワークス というコンセプトを作りました。

私たちは、このコンセプトに基づ いて、多様化しようとしているキャ リアのために、ソリューションを提 供し、それが内外で認められてきま した。ですから、このコンセプトは、 正しかったと思っています。

●総合力とキャリアグレードの 品質で差をつける

――IP 関連では、さまざまな企業が活動していますが、ノーテルネッ トワークスとの違いは…。

ダッシュ一番の違いは、私たちの 持っている技術の範囲が広いという ことです。ケーブル、ワイヤレス、デ ータシステムといろいろありますが、 規模だけではなくて、個々の技術力 を効率よく統合し、新しいものを作 れるという点で、他社より優れてい ると思っています。

たとえば、当社は、オプティカル ルータという新しい製品を発表しま した。これは、ルータの機能とオプテ ィカルシステムとを統合した、超高 速ルータです。これは他には作って いるようなところはないと思います。

さらに、私どもは、キャリアグレー ドとしてのファイブナイン99 .999 % の信頼性を確保する技術を持ってい ます。この技術をインターネットの スリーナイン99 .9 %の世界に持って いける会社は、そうはないでしょう。

●ワイヤレス戦略も強化

――ノーテルネットワークスのワ イヤレスシステムは、日本ではあま りききませんが…。

ダッシュ現在日本にはワイヤレス システムを提供していませんが、世 界的にはモバイル、ブロードバンド、 ナローバンドすべての分野で大きな 実績があります。

――では、今後はドコモとの関係 も…。


ダッシュここ5 年間、当社はワイヤ レスのサプライヤーとしては非常に 急成長を遂げ、小さなワイヤレス事業 から、非常に大きな事業へと変わって きました。今までは、中国・台湾・オ ーストラリア・シンガポール・香港 といった市場に力を注ぎました。 IMT-2000 と言われる第3 世代 (3 G )のワイヤレスシステムに関し ては、日本のパートナである松下通 信工業と共に開発をすることになっ ています。

●One to One マーケティング体制

――具体的には、どのような体制 でビジネスを進められるのですか?

ダッシュ私の役割はそこにありま す。今までのノーテルネットワーク スは、たとえば、キャリア向け、イン ターネット向け、そして企業向けと いった形で仕事の分担が細分化され ていました。しかし、顧客の方は、む しろ一つのところへと垣根を越えて 動いていっているような状態です。 そこで今回、顧客窓口を一本化し、 垣根を越えた形で、より高度なソリ ューションを提供できるようにしま した。

たとえば、Succession という音声 用の回線交換環境をパケット環境に スムーズに移行できるソリューショ ンを発表しました。これは、既存の キャリアだけでなく、一般の企業で も使えるようになっています。 ですから、以前と比べると、新し い組織はよりパワフルな組織になっ たと言えます。

――顧客窓口の一本化とは、たとえ ば、お医者さんに行ったときに、内 科、外科別々にみてもらわなくても よいというようなことでしょうか?

ダッシュその考え方より、もう一歩 先に進めて考えたいと思います。 それぞれのノウハウを持ち寄るこ とにより、より新しいソリューション が提案できることを期待しています。

●インターネット革命を支える

――将来展望についてお聞かせく ださい。

ダッシュインターネットの普及 は、産業革命以来の革命であると思 います。そして、その革命のまった だ中に私たちがいると言えるでしょ う。私たちは、単にインターネット のコンポーネントを売ることより、 次世代のインターネット環境に不可 欠な、より信頼性の高い、よりハイ パフォーマンスな、より頑強性のあ る、より低コストのインターネット の製品やソリューションを市場に出 していきたいと思っています。


――本日はどうもありがとうござ いました。

(聞き手 本誌編集長:黒田幸明)