Shasta Broadband Services Node



●IP サービス事業部の設立

1999 年4 月、ノーテルネットワー クスはShasta Networks を買収し た。Shasta Networks は1998 年3 月 に創業、新世代IP サービスを提供・ 管理する新しいカテゴリーであるブ ロードバンド・サービス・ノード (BSN )の製品開発を進めてきた。 このShasta Networks は、ノーテ ルネットワークスのShasta-IP サー ビス事業本部として新たにスタート し、1999 年8 月に「Shasta 5000 」 の出荷を本格的に開始した。 現在は、100 余名体制で世界市場 に向け、Shasta 製品の開発や販売 を行っている。

●ブロード・バンド・サービス ノード(BSN )とは?

日本、米国共に常時接続のニーズ が高まってきている。BSN という新 しいカテゴリーの製品は、主に常時 接続を対象としている。このような 常時接続サービスの提供をするため にキャリアは、各種ネットワークを 集約する、いわゆるブロードバンド RAS がノードの主たる機能であっ た。しかし、BSN はRAS 機能によ るネットワークの集約だけでなく、
・安全な接続を提供
・付加価値サービス
・上記サービスも含め各種ネットワ ークを一元管理


といった機能を1 台のシャーシで 提供するものである(図1 )。 たとえば、安全な接続を提供する ためにファイアウォール機能を提供 したり、QOS 、VPN といった付加価 値サービスもShasta 5000 1 台で実 現できるのである。

●常時広帯域接続におけるShasta

常時接続の普及は前述したとおり であるが、ユーザの観点から鑑みれ ばその魅力は数Mbps もの広帯域な 回線の利用である。しかし、その反 面、キャリア側の頭を悩ます点はそ のトラフィック制御にあるといえ る。つまり、IP バックボーンのリソ ースは数Mbps 〜数十Mbps がいいと ころである。そこに、1 ユーザが数 Mbps 単位で接続しているとなると、 他のユーザが接続できなくなってし まう。キャリア側はそのユーザに割 り振られた数Mbps 単位の各階線を 効率よく仕切る必要があるのだ。

そこで、Shasta 5000 ならば、各 階線のトラフィックを効率良く制御 してくれるのである。トラフィック の制御を行えるということは、ネッ トワーク価格に応じた制御も可能と いうことである。つまり、価格に見 合う帯域を保証することができるの である。価格はできるだけ安く抑え て常時接続を行いたいユーザには混 雑時の帯域保証しないベストエフォ ート型、混雑時も広帯域を保証して くれるギャランティ型と、価格に応 じたサービスの提供、Shasta 5000 による制御が可能になる(図2 )。

また、ファイアウォール、VPN 、 QoS 、接続フィルタ、キャプティブ ポータルなどのサービスも、電話の キャッチホンなどと同様に、オプシ ョンサービスとして、月額徴収ベー スで提供できるのである(図3 )。さ らに、それらのサービスはShasta 5000 ならば、ユーザ側のルータに特 別な変更や機器の増設を伴わず実現 できるのが大きなメリットになる。

現在のアクセス回線の動向を見て みると、単なる常時接続回線の切り 売りだけでは利益は微々たる状況で ある。そのため、回線に様々な付加 価値を付け、ユーザにサービスとし て提供、他の事業者に再販する傾向 が主流になっている。

常時接続ユーザに対して、安定し た接続を提供することは当然のこと であり、それ以上の要求にいかに応 えていくかが、これからのキャリア の命題といえる。

●Shasta 加入者サービスシステム


Shasta の加入者サービスシステ ムを具体的に見ていきたい。まず、 ハードウェアがShasta 5000 本体で ある。そして、様々なサービスには IP Service Operating System (isos ) が利用される。これは、ISP ごとに バーチャルなルーティングテーブル を持たせるために、基本OS を開発 する必要があった。そこで、開発さ れたのがisos である。また、ユーザ の提供機能の設定をGUI ベースで行 うService Creation System (SCS ) がある。サービス機能の管理を委譲 された場合などは、コマンドベース よりもGUI ベースでの管理のほう が効率がよい。これらの3 点がコン ポーネントされ、Shasta によるIP サービスが実現できる。

さて次は、このShasta のサービス のターゲットユーザ層を分析してみ たい。たとえば、従来はいわゆる、大 企業と呼ばれるところでは自社でイ ンフラを整備していくことが多かっ た。当然、セキュリティの関係などで やむを得なくそうしていた部分もあ るのであろう。しかしそれには、高 い技術力が必要になってくる上に、 自社内で全てを統括管理できる運用 能力が備わっているのである。つま り、今までは、常時接続を備えようと すれば、これくらいの資金・技術・ 運用能力を問われていたのである。

しかし、Shasta によるサービスの ターゲットは上記のような大企業向 けではなく、いわゆる常時接続から 縁遠い中小企業からSOHO 、一般家 庭までの、いわゆるエントリーユー ザである。これらのユーザは資金的、 技術的にも外部のネットワークサー ビスを利用するしかなく、このエン トリーユーザ層へ安定した回線と高 機能なサービスを提供していくので ある。技術力も高価な設備も不要で あるため、ユーザ側の負担も軽減す る。たとえば、ファイアウォールの メンテナンスなどもネットワーク側 で行える。これが、自社インフラと して設置してある場合は、その場ま で出向かなければならないため、非 常に手間暇がかかるのである。

Shasta 5000 では、いわゆる常時 接続の「潜在ユーザ」に対して自社 インフラ以上の高機能なサービスを 提供することができるのである。

●月額ベースでサービスの提供

キャリアにとって、ネットワーク サービスの提供は前述のように、フ ァイアウォール、VPN 等の各機能を 利用する場合、今までならば自社で 作り上げるか、購入するか、どちら かであった。つまり、宅内設置型の システムである。しかし、これでは 急速な加入者の増加に対応できない 上に、ユーザ側のコストも割高にな ってしまう。また、保守や運用を外 注に依頼すれば、自社のコストは急 増してしまう。

一方、BSN によるサービスならば、 付加価値サービスとして提供できる ため、ユーザは利用環境を考慮して、 最適なネットワークサービスを受け られる。様々なサービスがネットワー ク上で提供されるため、サポートや運 用管理の必要は無く、低コストで各機 能を利用できる。キャリア側もユーザ の急速な増加には、Shasta 5000 の優 れた拡張性で対応できるため、低価格 の提供でも確実に利益を確保するこ とが可能なのである(図4 )。

●Shasta 5000 の性能

ここでは、BSN であるShasta 5000 の性能について触れてみたい。 構造に関しては図5 を参照してい ただきたい。

<収容密度>

加入者の収容密度は、1 筐体あたり 32 ,000 ユーザで、1 架(4 筐体)あた りで128 ,000 ユーザを収容できる。非 常に高密度集線能力を実現している。

<仕様>
Shasta 5000 は従来のRAS と大き く違う点がある。完全二重化を実現 しており、さらに活線挿抜仕様(ホ ットスワップ仕様)を採用している。

<パケットハンドリングユニット>

従来のRAS は高いレイヤーのサ ービスは実現できなかった。これは、 CPU の数に依存していたためであ る。Shasta 5000 のCPU (Power PC ) 搭載数は最大128 個である。合計 45 ,600 MIPS を実現するのである。 それとは別に、最大28 の暗号化エ ンジンを搭載できる。暗号化は CPU への負荷が非常に大きいので、 28 もの専用暗号化エンジンを積む ことによって、これらのサービスを 安定して提供できるようになってい る。なお、メモリは10 GB 以上搭載 可能である。

<インタフェース>
ATM :DS-3 /E 3 、OC-3 、OC-12
FR :DS-3 、E 3
Channelized DS-3 、OC-3
Ethernet :FE 、GE
PoS :OC-3 、OC-12


●これからのネットワークを支 えるShasta BSN

競合の激しい米国では、インター ネットによるサービスを提供してい るDSLnetworks 社がShasta 5000 加 入者サービスシステムを採用した。 Shasta 5000 の集約能力と、それに よって実現できるDSL サービスに 多大な期待を寄せた採用であった。

一方、日本でも東京めたりっく通 信株式会社がIP ベース・サービス 「Secure DSL 」のプラットフォーム としてShasta 5000 の評価試験を行 うことを発表した。同社の平野剛常 務取締役は

「我々の使命は次世代網の先駆け として、ハイパフォーマンスで高信 頼性、機能が豊富な広帯域アクセス をホームインターネットおよび企業 インターネットのユーザに提供する ことです。Shasta の強力な集線機 能、セキュリティ、そして加入者自 らによるサービス設定などを可能に する機能を評価するつもりです」 と語っている。



このように、新しいサービス展開 を考えているキャリアにとって、こ のShasta 5000 は最適である。この Shasta 5000 の場合、ネットワーク ベースでの付加価値サービスと高い 収益性が維持できる上、ユーザの負 担も軽減することができる。サービ スを提供するキャリアやISP 、それ を利用するユーザ共に朗報であるこ とは間違いない。