システム全体の再配置のためのデータ収集と
プランニングにEcoSYSTEMSを活用する
トヨタ自動車

ECO- PROJECT を推進する トップ・メーカのトヨタ自動車

世界有数の自動車メーカであるト ヨタ自動車株式会社は、従業員数7 万人、年間売上高7 兆5 千億円、年 間国内生産台数310 万台を超す国内 トップ企業だ。その生産規模は国内 27 拠点、海外生産拠点24 カ国におよ ぶグローバル・カンパニである。近 年では「人と地球にやさしい車づく り」をテーマとした環境問題へも積 極的に取組み「TOYOTA ECO-PROJECT 」を推進している。世界 初の市販量産エコカーとなった「プ リウス」をはじめ、究極のクリーン エンジンともいえる「水素燃料電池 自動車」の開発コンセプトにも生か されている。

トヨタ自動車では、1990 年代の世 界的な合理化の流れを反映し、より 効率的な生産体制と事業運営の核と なるエンタープライズ・システムを 指向し、積極的なダウンサイジング を開始した。その推進役となったの はシステム開発部システム運用室で ある。システム運用室では、1996 年 から既存のメインフレームの運用に 加え、クライアント/サーバ・システ ムを本格稼動するに当たり、開発部 署とともに最新テクノロジを駆使し たC/S システムの運用管理ツールの 選定を行った。

それまで主にメインフレーム中心 で運用管理を行っていたシステム運 用室は、C/S 関連のシステム開発と 運用については開発部署とエンドユ ーザに任せていたが、96 年を境にし てサーバ数の増加、さらには基幹業 務系システムもC/S へ移行する動き が本格化し、いよいよシステム運用 室による運用管理段階に入ったので あった。

人手をかけぬダウンサイジング ポイントは運用管理ツール

システム運用室には、管理・マネ ジメント層から「人手をかけない運 用管理実現」を要請されていたが、 それは当初からの同室の方針でもあ った。サーバ台数が10 台20 台と増え るとき、人手に頼った運用では、 TCO の面からも避ける方針を採った のである。

トヨタ自動車システム開発部シス テム運用室の佐藤敏郎室長は、運用 管理ツールについて、次のように語 っている。

「全社共有で使うサーバについて は、システム運用室で引き受けると いう条件のもと、より最先端のテク ノロジを採用した管理ツールを整備、 採用させて欲しいと要望を出しまし た。メインフレームも、時代の流れ として同様の傾向にありました」 当時の最新テクノロジを調査・分 析し、各社の様々な運用管理パッケ ージを、デモや資料によって性能を 比較した。当時、システム運用室で は、ホスト系の運用監視ツールに関 する情報収集や実際の使用は行って いたが、UNIX やNT は主に開発部で テストマシン上に導入していた程度 だった。当然、システム運用室の評 価は、オペレーション上UNIX と NT 双方が運用管理できる点に絞ら れ、さらに現場での高評価も加味さ れて最終的にEcoTOOLS が採用され たのである。

1998 年12 月時点で、システム運用 室は数十名体制で、ほとんどがメイ ンフレーム運用担当者であり、その 一部がC/S との兼任として配置され ている。それ以外は社外のスタッフ やオペレータが数十名弱いるだけ だ。この中で監視担当者は24 時間監 視を3 交代で、ホスト系、C/S 系、ネ ットワークを含め、わずかな人数で 行っている。これはまさに優れた運 用管理ツールがあってはじめて実現 できた少人数体制といえるだろう。

オープン系サーバの台数は数百台 あり、そのうちの百数十台を EcoTOOLS が監視している。監視 対象となっている半数のサーバがミ ッション・クリティカルな基幹系業 務を担っているからだ。UNIX と NT とが混在した環境であり、また 将来はさらに数百台のサーバで基幹 系業務処理行うという計画もあり、 EcoTOOLS による監視の重要性は 高まる一方だ。

近年は、ユーザ管理のサーバも TCO 削減を目的にEcoTOOLS によ る運用管理を行う方向になり、 EcoTOOLS の評価は、利用期間に 比例して高まっているようだ。

ホームページでレスポンス・データ をユーザに通知

システム運用室では、ユーザへの 対応として、業務系アプリケーショ ンに関するヘルプデスク対応を行 い、PC のハード・ソフトに関する 対応はアウトソーシングしている。 レスポンスについてユーザからの開 発部門への質問を少しでも減らす目 的もあり、ホームページ(HP )を 利用し、EcoTOOLS で収集したデ ータを開発部門向けに提供する。シ ステム開発部門が予想していた負荷 範囲内であるかどうかを判断できる よう、CPU 負荷、スワップ情報、ユ ーティライゼイションなどのデータ をグラフ化して提供し、サービス・ レベル管理への利用や対応策の検討 などに有効活用している。

また、アプリケーションに重大な 障害が発生しそうな兆候が見られた 場合、メッセージ・ログを介して統 合管理コンソールに表示させ、24 時 間体制で監視する担当者に通知す る。このような運用自動化は、リソ ース管理、キャパシティ・プランニ ングといった側面でも開発部門への 有益なフィードバックとなり、開発 と運用との連携が非常に緊密になる ということに結びついている。

同様のデータを情報管理部門にも 見てもらうことで、採用したツール やシステムが十分に機能しているか を継続的に確認してもらうというこ とも行われている。

将来を見据えたBD やERP 管理 コスト削減からScrap &Build へ

すでにトヨタ自動車では大規模な ERP が導入され始めている。

世界規模の生産拠点を抱えるた め、導入には多くの課題が山積して いた。海外との連携の場合、それぞ れの拠点でのメリットは大きいもの の、部品管理のDB 一つをとっても、 10 年スパンの在庫保証もあり、DB サイズの巨大化や複雑化など、多く の課題に直面しながらERP に取り 組まれている。

最も重要な課題は、コストの削 減・抑制だ。既存ハードウェア資産 をいかに有効活用するかと、レガシ ーとなったものをスクラップ・アン ド・ビルドの手法で置き換えるかと いう視点に立ち、より効率の高いシ ステムやDB に移行していく、シス テム全体の再配置が求められている という。そうした意味においても EcoTOOLS によるデータ収集や管 理は、プランニングに必要な情報を 蓄積する役割を担っている。

EcoTOOLS を実際に使用してい るシステム運用室システム管理グル ープの西野正行係長は、次のように 述べている。

「レガシーになりつつあるシステ ムを思いきって廃棄し、サーバのリ ソースを有効活用しながら、保守な どのメーカサポートも視野に入れた システム全体の再配置のタイミング を検討していく上で、継続的な監視 データの収集や分析は欠かせないも のです。各リソースの活用プロセス の仕組みを理解し、様々なリソース 情報を基にシステムをアップグレー ドしていくことが非常に重要だと認 識できました。これもEcoTOOLS を採用した効果だと思います」

購買調達用ホームページの 監視にもEcoTOOLS を使用

数多くの関連会社、仕入先を抱え るトヨタ自動車では、それら外部と の安定したネットワークの運用も重 要な課題の一つだ。仕入先企業とは 独自のTNS というネットワーク・ システムを活用し、VAN によるデ ータ交換が行われてきたが、昨今、 オープンな取り引きが求められるよ うになり、1997 年から資材調達専用 ホームページが開設された。

部品等のセールス・エントリーが このホームページ上で行われ、品質 レベル、価格、性能などが満たされ れば、購買調達担当者が実際の商談 に入るという手法だ。

このようなビジネス上重要なホー ムページも、より安定した運用が求 められるため常時EcoTOOLS によ って監視している。

EcoTOOLS で監視しているこれ らのサーバは、本社(豊田市、名古 屋市)と周辺工場をはじめ、東京本 社の海外部門のサーバもある。サー バの種類も多岐にわたり、ありとあ らゆるメーカのサーバを使用してい るが、そのほとんどにEcoTOOLS を載せているという。

今後の課題として、前出の西野氏 は、こう述べている。

「将来的に要員面での体制も考慮 しながら、データベースのチューニ ングや、EcoTOOLS のデータベー ス・モジュールであるEcoPMON な どを活用して、パフォーマンスをチ ェックしたいと考えています。また、 開発部門の協力を得て、こうしたツ ールを活用することでシステム開発 段階でのパフォーマンスを見て、具 体的な運用手法の開発へフィードバ ックすることも、運用部門として実 現していきたいと考えています」

システムの運用管理、監視や保守、 エンドユーザへのサービス・レベル の維持・向上を充実させる上で、 Eco TOOLS の豊富な機能をさらに 活用できる体制づくりが進められて いる。