私が気になる3つの技術




NTT コミュニケーションズ
データネットワークサービス部長
野村 雅行



マルチサービスイッチング アーキテクチャ/MGC (Media Gateway Control )

インターネットに代表されるデー タ通信トラフィックの急激な増加や 放送のデジタル化に対応するため、 音声、データ、映像を融合した柔軟 で効率的なネットワーク作りが、通 信網の次の課題となっています。こ のような次世代通信網では、従来の 回線交換型のネットワークから帯 域、品質を自由に選択できるパケッ ト交換型のネットワークになるとと もに、ネットワークを統合すること で、激しく変化するサービスニーズ に対応できるようになります。

具体 的には,サービスニーズとして、音声、 TCP/IP 、専用、フレームリレー、 ATM 、映像といった種々のメディ アがありますが、これらのメディア をスイッチングするプラットフォー ムは、メディアに関係無く統一し、 サービスニーズが変化しても、ネッ トワーク資産が、無駄にならないよ うに考えております。

さらに、この ようなスイッチングプラットフォー ムへ各種のメディアを変換するため のアダプテーションプラットフォー ムやスイッチングプラットフォーム を制御するための信号を制御する信 号プラットフォームを独立すること で、拡張性にとんだ次世代網のアー キテクチャを構成できます。

このよ うな検討は、サービススイッチング アーキテクチャとして開始され、 Media Gateway 機能として一部具体 化が始められており、我々も次世代 網に向けた取組みを始めています。

トラフィック制御技術

データ通信の多くはIP ベースにな りつつあります。さらに、音声や映 像の配信もIP で通信することが始め られています。データ通信でも、バ ッチ型、リアルタイム型など種々の 品質要求があり、音声、映像では、 その要求レベルが大きく変化します。 このように大きく変化するIP 通信へ の要望について、各通信の要求に合 った品質を提供する技術がトラフィ ック制御技術です。

現状のルータで は各IP パケットが独立にルーティン グされ、IP パケット間に関連性を持 ったルーティングが出来ませんので、 エンド‐エンドの通信アプリケーシ ョンに合ったパケット制御もできま せん。

トラフィック制御技術では、 IP パケットのキューイング制御、ト ラフィックシェーピング技術等を使 い、発着IP アドレス、TCP の内容な どのIP パケット内の各種情報をもと にエンド−エンドの通信アプリケー ションの必要とする品質を提供する ことを目指しています。

我々のネッ トワークサービスではすでに一部の 機能を世の中に先駆けて導入し、サ ービス提供していますが、今後のト ラフィック制御技術の進展に合わせ て、いち早くサービス提供してゆく 予定です。

デジタル放送

BS デジタル放送は、2000 年末の放 送開始に向けて着々と準備が進めら れています。地上波のデジタル放送 の検討も進められています。また、 デジタルVTR によるデジタル化した 映像も提供が始まっています。

この ような放送、映像のデジタル化は、 劣化の無い映像を衛星や広帯域デジ タル通信網により、手軽にエンドユ ーザへ届けることを可能としつつあ ります。

これに伴い、新しい市場の 創造が大いに期待されています。た とえば、このようなデジタル化によ り、双方向通信を使った映像の配信 が可能となり、これまでの一方向に 伝えるコマーシャルから商品に興味 を持つユーザにアンケートを取るな ど、対話型の広告の展開が可能とな ります。

今後デジタル通信技術を生 かした、新しい市場を支える通信サ ービスの提供に、積極的に取り組ん でいきたいと考えています。


NTT コミュニケーションウェア
NWC 事業本部 開発部長
伊藤 路夫



ビジネスオブジェクト

長年、ソフトウェア開発に携って きた技術者の端くれとして、ソフト ウェアの生産コストを飛躍的に下げ てくれる「銀の弾丸」を捜し求める 夢、期待はどうしても捨てることは 出来ない。

一言で言えば、業務シス テムの開発において、きわめて再利 用性の高い部品化が実現できないだ ろうかと言う夢であり、この本命の 技術として、ビジネスオブジェクト の技術に以前から注目していた。

業 務システム開発において生産性向上 に有効な部品化と再利用が遅々とし て進まなかったのは、各企業に閉じ た個別業務システムの受注生産マイ ンド、既存の実行環境間の部品流通 の難しさ、オブジェクト指向設計、 開発技術が未成熟等の多くの障壁が 存在したからと思われるが、ここ数 年は、企業間の連携、プラットフォ ームのオープン化およびJava 、 CORBA 等のオブジェクト指向開発 環境の急速な進展が進み全ての障壁 が一掃されつつある。

本格的なビジ ネスオブジェクトがインターネット を介して流通し、ソフト生産コスト が一桁下がる日が近いのではないか と期待している。

ASP (アプリケーション・ サービス・プロバイダ) 構築技術

最近、アメリカを中心に爆発的に 拡大しているASP サービスに注目 している。NTT がまだ電電公社で あった時代に、大型計算機を共同利 用していただき販売在庫管理業務を 提供するオンラインサービスが存在 した。

ハード、ソフト、ネットワー クは隔世の感があるが、アプリケー ションサービスをレンタルでご利用 頂くというビジネスの側面および集 中型でネットを介してサービスを提 供するというアーキテクチャ面で捉 えると、サービスの発想は全く同じ である。

一度、廃れたアーキテクチ ャが復活した理由は色々あるだろう が、構築技術に劇的なブレークスル ーがあったことが最も大きいと思わ れる。

とりわけ気になる技術を上げ るとすると 高速、高セキュリティ、 安価なインターネット 低価格、高 信頼、高性能なサーバベースコンピ ューティング実現技術 オールイン ワンで完成度の高いERP パッケー ジの3 つである。

これらの技術は、 ASP の隆盛とともにここ2 、3 年 間は急速な発展を遂げることは疑い の余地がないと思っている。

ビジネスモデル特許

「油断も隙も有ったものではない」 という意味で最近気になっているの で敢えて取り上げた。

ビジネスモデ ルを特許にするという事例は、過去 にも皆無ではないかも知れないが、 所謂、死角に入っていて、意識的に 特許を取得した例はほとんどなかっ たと言っていいと思う。しかしなが らコロンブスの卵の様に、誰もが、 ビジネスモデルを狙って特許を取得 する時代が到来したわけである。

ソ フトウェアに関わる人間としては、 方式特許やアルゴリズムの特許と同 じように重要なノウハウとして扱わ なければならない時代が到来した事 になる。

特に気になるのは、従来、 特許性の範囲外と見逃して認識して いた部分の権利保護の問題、さらに、 調査不足等による無意識の権利侵害 発生の問題であろう。

ここ数年は防 衛的な意味でもビジネスモデル特許 の申請、調査が欠かせないという意 味で油断のならない時代が来たと思 う。

この風潮を前向きに捉えて画期 的なソフト開発による一人勝ちより も、画期的なビジネスモデル特許の 発明により、さらに、手っ取り早い 一人勝ちの手段が出現したと解釈す べきかも知れないと感じている。