インタビュー
Many to One to Manyの ECマーケットプレイスを提供


NTT コミュニケーションズ 取締役 ソリューション事業部 第三営業部長 井上英也

NTT コミュニケーションズ第三営業部は製造業を対象にした法人向け ソリューションを提供している。情報技術(IT )革命の先頭に立ち、常に 先進的なEC ソリューションを世に出し続けている第三営業部が、今後 はどのような戦略でビジネス展開をしていくのか、井上部長に伺った。

常に世の中を先取りした ビジネスを展開してきた

――今までのお仕事で印象に残って いることをお話しください。

井上私は入社以来専門的にはデー タ通信関連の仕事をしてきました。 1970 年代には、気象庁システム AMeDAS の開発に携わりました。こ れは、コンピュータから交換機に電 話をかけて全国の無人観測所からデ ータをとってくるというシステムで あり、今話題になっている通信と情 報処理が融合した、しかも端末機ま で自動化したシステムの魁( さきがけ)です。
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1990 年の大阪中央支店長の時代に は、既存のレガシーシステムに外付 けのTCP/IP インタフェースを追加 し、電話の新規加入手続きにかかる 時間を、30 分から7 分に縮めました。 今で言うBPR を行って、それをクラ イアントサーバシステムで実現した ということになります。このシステ ムの導入は法人ユーザに大いに喜ば れました。

LAN 工事のビジネスも世の中でブ ームになる数年前から始め、毎年 倍々の売り上げを達成してきました。 なんとなく、今を予感させるよう な仕事をしてきたという感じがして います。

もうフロンティアの時代ではない、 皆が一仕事を始め出した

――変化の激しい時代ですが…。

井上世の中はIT 革命を起こそうと しています。社会全体が1 つの大きな 時代の節目という息吹を感じている からです。そういう息吹と合致した仕 組みをいかに早く作るかということ を請われている状況かもしれません。 昨日まではまさにフロンティアに直 面していて、次に何が起きるかわから なくても思い切って飛びこまないと いけなかったのですが、今日という日 は既に世界中で実践が進み始め状況 が変わってきています。ですから、成 功のためにはIT 技術を使って顧客の 要請に素早く応えて行くことです。そ れらに対する問題点が見つかればも っけの幸い。うまく克服すれば大成功 が約束されます。素早くしかも効果的 な解を得る為にはプレーヤ相互が連 携して知恵を出し合う、そんな時代で あると思います。

技術は後から追いついてくる

――インターネットは便利ですが問 題も多くあります。

井上一時期、インターネットが世 に紹介され、一部のイノベータやア ーリーアダプタにもてはやされた時、 冷静な人達からセキュリティをどう するかという問題提議がありました ね。盗聴、改ざん、なりすましなどの 心配がありましたが、成功したビジ ネスでそのことを第一義にやってい るビジネスはほとんどないのです。 ビジネスとして成り立つ限界内で必 要な所だけしかやっていません。

たとえば、会員制にするなど、必ず しも技術的でない側面のビジネスの 進め方がものすごくたくさん出てき ています。勇気を出してやれば、そん なにお金を掛けずにビジネスがおこ せますし、そうこうしているうちに 使い勝手の良い技術が開発されてく るものです。ビジネスモデルがしっ かりしていれば、技術は追いついて くるということが言えると思います。

ビジネスモデルを持て

――ビジネスを成功させるポイント は何でしょう?

井上このようなビジネスを行う場 合、ビジネスモデルをきちんと持っ て仕事をしなければいけないと思い ます。そのビジネスモデルを作るた めにはビジョンが必要ですね。どう いうイメージの仕事をするか。そし て、どういうお金の儲け方をするか。 どなたがお金を払って下さるか、そ のお金でもって自分はどのような利 益を出すのか。そういったビジネス モデルについて明確な意識、構想を 持って対応しないといけない時代に なってきたと思います。

特にグローバリゼーションの時代 と言われているように、世界規模でビ ジネスが起こるわけです。当然、多く の人が同じようなことを考えます。心 配事が多くて、それにコストをかけ過 ぎたら、利益が少なくなるどころか先 を越されてビジネスが成立しなくな ります。またお客様に前例のあるサー ビスを提供しても、誰もそれを買って くれません。何らかの自分としての新 しい価値を付加して売り出しをしな ければなりません。その売り出しをす るためには「えっ?」という視点の ビジネスモデルを作らなければなり ません。こういうしっかりと売り手の 意思を反映したビジネスモデルを作 っていくということがものすごく重 要ではないかと思います。新しい商取 引の文化をひねり出す、Generate が 大事だと思っています。

――マーケットとして大きな分野は どこでしょうか?

井上現在のバーチャルマーケット の大きさでいくと、B to C (Business to Consumer )よりもB to B (Business to Business )の方がはるか に伸びています。これからのビジネ スをスピードアップするには、企業 間取引の効率化が重要だということ です。私どもも、そこにフォーカスし てビジネスを展開していきます。し かし数年後にはGDP の約60 %を占め るB to C 取引が電子化されるでしょ うから、この部分に対する備えも必 要です。

B to B を支える Many to One to Many 環境を提供

――ではそのような企業間取引の傾 向は?

井上2 つの傾向があります。1 つ は、産業界でプレーヤが最良の製品 又はサービスの供給の為にベストプ ラクティスを求めて合従連衡しはじ めているということ、もう1 つは、資 材や部品の調達を安く早く確実にす る為にオープン取引をしようとして いることです。オープン取引という のは、過去の取引関係や系列にとら われない取引を時々の場合に応じて 行うことですね。この2 つの軸を押 さえながら、個々の顧客のご要望に 応える情報通信システムを提案して いこうと考えています。

――具体的にはどのようなシステム になるのでしょうか?

井上従来は、企業ごとに個別のネ ットワークでやっていましたが、も うその時代ではなくなったといえま す。特定又は不特定の多くの企業を その都度の取引形態に応じて自在に 結ぶことができる形になると思いま す。そのためには、1 対1 ではなく、 N 対N の接続になります。システム 的には、真ん中に仲介者がいるMany to One to Many の形式になります。 One が共通の場となります。そうい うネットワーク、マーケットプレイ ス(市場)を提供しようと思っていま す。情報の築地市場と思ってもらえ ばよいと思います。


――なるほど。これは分かりやすい ですね。(笑)

井上たとえば、1 月4 日に報道発 表したMRO 調達支援サービスは、文 具、OA 機器や出張用チケットなどの 企業活動に間接的に必要となる物 品・サービスをインターネット上で 効率的に取引できるサービスです。こ の環境の上に、多くのオフィス用品を 販売する企業や、物品を購入する企業 が参加します。そうすると、販売する 側は低コストで顧客と連絡ができ、購 入する側は簡単に複数企業の商品を 比較検討でき、お互いにメリットを享 受できます。試算したところ、コスト メリツトは極めて大きいものとなり ます。 なお、業種ごとの商取引そのもの に関わる仕事は、それぞれのマーケ ットプロデューサに任せて、私ども は、その取引の場と必要な情報通信 ツールを提供していきます。Many to One to Many の仕組みを提供し、One のバリエーションを広げていくこと によって、結果的に通信の需要を吸 収していくということが私どもの目 指すべき方向になると思います。

第三営業部の強み

――第三営業部の強みは何でしょう か?

井上一番の強みは、世界に通用す る製造業各社とのビジネス経験によ り、情報通信システムを活用する場 合、経営課題と必要となるソリュー ションとの間の関係を分析する高度 なスキルを保有していることです。 それから、これはソリューション 事業部全体のことですが、ネットワ ーク技術の進展を即座に商品に反映 する力を持っていることがあげられ ます。 さらに、私どもはたくさんのベン ダの製品を方法論と解決策に使うわ けですが、そのベンダ評価ができま す。たとえば、IPsec ルータの評価な どを自前で客観的に行いますから、 常にお客様に最適なソリューション を提案できます。 もうひとつ、トラブル等が発生し たときに即座に対応する力がありま す。企業経営の生命線となっている 情報通信のしくみに対して、速やか にリカバリショットを打てるので、 お客様は安心できるわけです。

――最近は、企業向けのソリューシ ョンを提供する場合に、キャリアグ レードの品質が求められるようです が…。


井上SLA (Service Level Agreement ) ですね。私どもも、ソリューション事 業部の施策として昨年11 月よりサー ビスを開始しました。これには、NTT のキャリアとしての長年の経験が大 いに生かされています。

――再編前の法人営業本部から変わ ったことは?


井上NTT コミュニケーションズに なってからは、新しいサービスにつ いてお客様と相談をしながら、内容 と開発の時期を決めるということを 積極的にやりはじめました。それか ら、価格についても、お客様と話し合 って、納得のいくものになるように しています。

急成長するe ビジネス

――将来展望について聞かせて下さ い。

井上少なくとも、利益率をいかに うまく確保し、それを拡張させていく かということを四六時中考えなくて はいけない時代になってきました。そ れから、技術が進歩し、お客様の文 化もどんどん進んでいきますから、そ ういう変革のスピードに対してどう 対応するかを必死で考えています。 特に1 年前から強く感じているの ですが、お客様に新しいeCommerce に使われている概念や機能を使った サービスに切り替えようという意識 が実ビジネス上にものすごく強く出 始めています。ですから、仕事はと ても忙しいものになってきていま す。eCommerce だけで見れば3 倍、 5 倍というスピードでこの半年くら いはいくのではないでしょうか。そ れから、先ほど申し上げましたが、 1 企業に提案する解決策というの が、わりと共通的な解決方法になる 傾向がありますから、1 つ解決する とぐっと販売が伸びるはずなのです よ。逆に出遅れてしまうと全然お客様 がつかなくなる可能性がありますね。 だから、最初が大切ですね。そこを乗 り切ればいくらでも数字的な成果が でてくると思います。 とにかく、忙しく、かつ、楽しみな 時代になったと思います。

――本日はどうもありがとうござい ました。


インタビューを終えて

井上部長は、国内最大のEC プロジ ェクト、エレクトロニックコマース ネットワーク(ECN )の運営を統括 するとともに、コマースネットジャ パンの運営委員長も務めるEC 界のキ ーパーソンである。さらに、ERP 推進 フォーラムの副会長も務めている。 通信と情報処理の融合、BPR 等を早 い時期に実践してきた人だけあって、 話の内容に説得力があった。時には 過激な発言もあり、NTT コミュニケ ーションズの勢いを感じさせるイン タビューだった。
(編集長 黒田幸明)