従来は、企業ごとに個別のネ
ットワークでやっていましたが、も
うその時代ではなくなったといえま
す。特定又は不特定の多くの企業を
その都度の取引形態に応じて自在に
結ぶことができる形になると思いま
す。そのためには、1 対1 ではなく、
N 対N の接続になります。システム
的には、真ん中に仲介者がいるMany
to One to Many の形式になります。
One が共通の場となります。そうい
うネットワーク、マーケットプレイ
ス(市場)を提供しようと思っていま
す。情報の築地市場と思ってもらえ
ばよいと思います。
――なるほど。これは分かりやすい
ですね。(笑)
井上たとえば、1 月4 日に報道発
表したMRO 調達支援サービスは、文
具、OA 機器や出張用チケットなどの
企業活動に間接的に必要となる物
品・サービスをインターネット上で
効率的に取引できるサービスです。こ
の環境の上に、多くのオフィス用品を
販売する企業や、物品を購入する企業
が参加します。そうすると、販売する
側は低コストで顧客と連絡ができ、購
入する側は簡単に複数企業の商品を
比較検討でき、お互いにメリットを享
受できます。試算したところ、コスト
メリツトは極めて大きいものとなり
ます。
なお、業種ごとの商取引そのもの
に関わる仕事は、それぞれのマーケ
ットプロデューサに任せて、私ども
は、その取引の場と必要な情報通信
ツールを提供していきます。Many to
One to Many の仕組みを提供し、One
のバリエーションを広げていくこと
によって、結果的に通信の需要を吸
収していくということが私どもの目
指すべき方向になると思います。
――第三営業部の強みは何でしょう
か?
井上一番の強みは、世界に通用す
る製造業各社とのビジネス経験によ
り、情報通信システムを活用する場
合、経営課題と必要となるソリュー
ションとの間の関係を分析する高度
なスキルを保有していることです。
それから、これはソリューション
事業部全体のことですが、ネットワ
ーク技術の進展を即座に商品に反映
する力を持っていることがあげられ
ます。
さらに、私どもはたくさんのベン
ダの製品を方法論と解決策に使うわ
けですが、そのベンダ評価ができま
す。たとえば、IPsec ルータの評価な
どを自前で客観的に行いますから、
常にお客様に最適なソリューション
を提案できます。
もうひとつ、トラブル等が発生し
たときに即座に対応する力がありま
す。企業経営の生命線となっている
情報通信のしくみに対して、速やか
にリカバリショットを打てるので、
お客様は安心できるわけです。
――最近は、企業向けのソリューシ ョンを提供する場合に、キャリアグ
レードの品質が求められるようです が…。
井上SLA (Service Level Agreement )
ですね。私どもも、ソリューション事
業部の施策として昨年11 月よりサー
ビスを開始しました。これには、NTT
のキャリアとしての長年の経験が大
いに生かされています。
――再編前の法人営業本部から変わ ったことは?
井上NTT コミュニケーションズに
なってからは、新しいサービスにつ
いてお客様と相談をしながら、内容
と開発の時期を決めるということを
積極的にやりはじめました。それか
ら、価格についても、お客様と話し合
って、納得のいくものになるように
しています。
――将来展望について聞かせて下さ
い。
井上少なくとも、利益率をいかに
うまく確保し、それを拡張させていく
かということを四六時中考えなくて
はいけない時代になってきました。そ
れから、技術が進歩し、お客様の文
化もどんどん進んでいきますから、そ
ういう変革のスピードに対してどう
対応するかを必死で考えています。
特に1 年前から強く感じているの
ですが、お客様に新しいeCommerce
に使われている概念や機能を使った
サービスに切り替えようという意識
が実ビジネス上にものすごく強く出
始めています。ですから、仕事はと
ても忙しいものになってきていま
す。eCommerce だけで見れば3 倍、
5 倍というスピードでこの半年くら
いはいくのではないでしょうか。そ
れから、先ほど申し上げましたが、
1 企業に提案する解決策というの
が、わりと共通的な解決方法になる
傾向がありますから、1 つ解決する
とぐっと販売が伸びるはずなのです
よ。逆に出遅れてしまうと全然お客様
がつかなくなる可能性がありますね。
だから、最初が大切ですね。そこを乗
り切ればいくらでも数字的な成果が
でてくると思います。
とにかく、忙しく、かつ、楽しみな
時代になったと思います。
――本日はどうもありがとうござい
ました。
井上部長は、国内最大のEC プロジ
ェクト、エレクトロニックコマース
ネットワーク(ECN )の運営を統括
するとともに、コマースネットジャ
パンの運営委員長も務めるEC 界のキ
ーパーソンである。さらに、ERP 推進
フォーラムの副会長も務めている。
通信と情報処理の融合、BPR 等を早
い時期に実践してきた人だけあって、
話の内容に説得力があった。時には
過激な発言もあり、NTT コミュニケ
ーションズの勢いを感じさせるイン
タビューだった。
(編集長 黒田幸明)