サプライチェーン支援サービス
~MRO調達プラットフォーム~



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MRO 調達の電子化について

MRO とは、Maintenance, Repair and Operation のことで、文具、パ ソコン、オフィス家具、交通機関の 手配/航空チケットの購入、清掃な ど、直接商品を製造するために用い る部品・材料ではないが、企業の生 産活動に必要とされる物品やサービ スを指す。

従来、企業間商取引の電子化に対す る取組みでは、企業の製品の資材であ る部品・材料などのダイレクト調達物 品が対象とされていた。特に製造業に おいては、部品調達まで含めたサプラ イチェーンの構築が課題の1 つであ り、調達先との戦略的提携や、SCP (Supply Chain Planning )ソフトな どを用いて生産計画と連動させたシ ステムを構築している企業も増えて きている。また、企業間でEDI *1 な どを用いる取組みも一般的になりつ つある。

一方、それ以外のMRO と総称さ れる物品・サービスの企業間商取引 に対しては、その取引額が企業活動 の中で大きな比重を占めるにも関わ らず、電子化・オープン化に向けた 取組みは、ほとんど行われていなか った。それにはいくつかの理由が考 えられる。MRO 物品の予算管理が総 枠であるため、その無駄な部分が把 握できなかったこと、管理が部門ご とに行われているため電子化に必要 なビジネスプロセスの変更が難しか ったこと、調達の時期や間隔が不定 であり効率化が難しかったこと、な どがあげられる。しかし、MRO の調 達については、企業調達金額の総出 に対する比率が大きく、中でも調達 金額に比較して購買コストが非常に 大きいことが問題となっており、ビ ジネスプロセスの変更も含めてその 電子化が企業にとって最も重要な課 題の1 つとなっている(図1 )。

製造業においても、今や部品・材 料の調達の合理化に並ぶ重要事項と 認識されている。

MRO 調達システムモデル


このような状況の中、いくつかの MRO 電子調達のための仕組みが考 えられている。そのビジネスモデル には、大きくわけてサプライヤモデ ル、バイヤモデル、マーケットプレ イスモデルと呼ばれるものがある。 それぞれの簡単な説明を以下に示す。

1.サプライヤモデル(図2 )


サプライヤモデルはサプライヤが バイヤの利用する環境を基本的に用 意する。そのため、バイヤはパソコ ンとインターネットの接続環境を準 備するだけで良く、すでにインター ネット環境を保有する企業にとって はMRO 調達を始めるのに初期投資 が全く無いといってよいほど導入が 容易なものである。実例としては、 コンピュータメーカのダイレクト販 売、文具メーカのインターネット販 売がある。

一方、このモデルではサプライヤ がWeb のインタフェースを提供し、 そこで行われた商取引の情報をサプ ライヤ側がためこむことが原則であ る。したがって、バイヤ側が自分の 方法で自社の支払等の月次処理を行 うにはサプライヤから情報を引き渡 してもらう必要が出てくる。多くの サプライヤモデルではバイヤに情報 提供サービスをするものの、その情 報がバイヤにとって適した形で提供 されているとは言えないのである。

結局のところ、複数のサプライヤを 使いわける大手のバイヤ企業にとっ ては、それぞれの調達インタフェー スや調達プロセスがばらばらなもの になるため、利用することが極めて 困難という状況である。

一方、サプライヤ側も大手のバイ ヤ企業に対して1 つのインタフェー スやプロセスを押し付けるわけには いかず、強力なバイヤ企業の調達プ ロセスや購買システムに合わせた個 別の変更要求を受け入れている。そ の結果、個別のインタフェースやプ ロセスの作りこみに対応せざるをえ なくなり、カスタマイズにかかるコ スト負担が厳しくなっている。

2.バイヤモデル(図3 )


バイヤモデルとは、バイヤとなる 大企業が強大な購買力を背景にサプ ライヤに利用を半ば強制する形で参 加させるようなケースである。実例 としては、大手電気メーカなどの大 企業調達の多くが相当する。現在バ イヤモデルによる調達を行っている 企業は自社でシステムを開発したケ ースが多いようだ。自社での調達の 整備が出来次第、そのシステムを他 のバイヤ企業へ水平展開しようと努 力することが一般的であるが、他企 業へのシステム販売に成功した事例 はほとんどないのが実状である。

サプライヤにとっては、従来の電 話やファクスによる見積もり依頼が Web やe-mail に変わったと考えれ ば、人手によって対応できる範囲に ある。ただし、バイヤ各社ごとにシ ステムを使い分けなくてはならない ため、インタフェースが複雑になる。 また、バイヤ側は取引の条件にシス テム利用を半ば強制するが、中小規 模のサプライヤにはパソコンとイン ターネットとセキュリティソフトの 準備といった点がハードルとなって いる。したがってサプライヤ側への 導入効果も少ないと言える。 また、バイヤ側についてはシステ ム管理やサプライヤ管理などにコス トがかかるという問題がある。

3.マーケットプレイスモデル(N: 1:N モデル)(図4 )


サプライヤモデル、バイヤモデル の欠点を克服するために登場したの が、マーケットプレイスモデルであ る。マーケットプレイスモデルでは、 バイヤとサプライヤの間にマーケッ トプレイスと呼ばれる情報交換を集 中的に行う空間、いわばバーチャル な電子市場を提供する。マーケット プレイスには複数のサプライヤ(m ) と複数のバイヤ(n )が1 つのマー ケットプレイス(1 )に接続されて いるためm:1 :n のモデルともいえ る。また、マーケットプレイスには 複数のサプライヤから提供された電 子カタログ情報が集積しておかれて いるため、カタログを比較検討して 物品を購入することができる。

こういったマーケットプレイスに より、バイヤ側は 「電子調達のイン タフェースの統合」、「オープンな市 場からの調達による価格、品揃え、 サービスの選択肢の拡大」、「サプラ イヤ管理も含めた構築・運用コスト の削減」といったメリットを得るこ とができる。また、サプライヤ側に とっても、「複数バイヤ向けのイン タフェースの統合」、「電子カタログ をマーケットプレイスに集中管理す ることによるカタログマネジメント のシンプル化」、「バイヤ管理も含む 構築・運用コストの削減」、「大市場 への参入による売上拡大」といった メリットを得ることができる。

MRO 調達プラットフォームに ついて

NTT コミュニケーションズでは、 マーケットプレイスモデルを取り入 れた、MRO 調達プラットフォームソ リューションを提供する(図5 )。こ のようなマーケットプレイスにより、 バイヤ企業、サプライヤ企業はバー チャルな電子市場の上で、オープン な商取引を実現することができる。

NTT コミュニケーションズでは、 このマーケットプレイスによるコス ト削減効果を、バイヤ企業において は調達コストを1 /2 に、購入価格を 2 〜3 割削減、また、サプライヤ企 業においても販売コストを1 /4 に削 減できる可能性があると試算した。 バイヤ、サプライヤそれぞれの調達 プロセスの削減効果を試算した結果 を図6 に示す。

マーケットプレイス構築にあたっ て、企業間EC サービス分野におけ るリーディングカンパニーである CommerceOne 社 *2 (1999 年7 月 NASDAQ 上場)が提供するソフト ウェア、MarketSite 、BuySite 、 Hosted BuySite を用いる。Market-Site とは、バイヤとサプライヤの間 に位置するマーケットプレイスを実 現するソフトウェアであり、バイヤ やサプライヤなどのマーケット参加 者の管理や取引トランザクションの 処理、統合カタログの提供などの機 能を持つ。BuySite とはバイヤ企業向 けに提供する電子購買のためのシス テムである。ワークフローの管理、在 庫・価格照会、発注、オーダー状態照 会、社内システムとの連動などの機 能がある。Hosted BuySite とは BuySite のホスティングバージョン である。Hosted BuySite を利用する バイヤは、特別なソフトウェアを準 備しなくてもブラウザを通して BuySite の機能を利用することがで きる。 これらのソフトウェアは、米国コ マースネットとコマースネットジャ パン *3 の提唱するeCo フレームワー ク *4 に準拠しており、従来は困難で あった企業間取引の相互運用性の確 保や、各企業の独自の基幹系システ ムと本マーケットプレイスとの接続 を、低コストかつ短時間で実現する ことができる新しい世代の製品であ る。eCo フレームワークは、XML *5 やCBL *6 といった標準技術を利用し ているため拡張性に富み、既存電子 市場や既存企業システムとの接続に も柔軟に対応できるため、従来の商 取引慣行もそのままシステム化する ことが可能となる。同社のソフトウ ェアを用いたサービスは、米国では ロスアンジェルス郡、欧州ではBT などが試行運用を開始しており、米 ゼネラル・モーターズ(GM )も自 動車部品調達のためのポータルサイ トを構築するために同社のソフトウ ェアを採用することを発表してい る。

これからの展開について

MRO 電子調達プラットフォーム は今後、次のような形で発展してい く予定である。

1.グローバルトレーディングコミ ュニティ(図7 )

米国のコマースワンが運営するマ ーケットプレイスだけでなく、英国 や、シンガポールにおいてもマーケ ットプレイスが構築されている。世 界のマーケットプレイスを結びつけ ることで、グローバルな調達コミュ ニティを実現することが可能になる。


2.マーケットプロデューサーによ るマッチメイキングビジネス
マーケットプレイス上ではさまざ まなビジネスが可能になるが、その ひとつとしてバイヤとサプライヤ間 取引のためのマッチメイキングがあ る。このような新たなマーケットを 創出する役割を「マーケットプロデ ューサー」と呼ぶ。つまり、マーケ ットプレイスは、単なるバイヤ、サ プライヤの取引の場でなく、新たな ビジネスが生まれる場にもなるので ある。

3.ダイレクト調達物品への展開

オークション、見積 もりなどの機能を活用 することで、MRO 物 品だけでなく、ダイレ クト物品のオープンな 調達のプラットフォー ムを構築することが可 能になる。MRO とい うことで、電子カタロ グからの選択をメイン にしていたが、リバー スオークションのよう ないわゆる入札機能の活用により、 より広範囲な物品の調達に適用する ことができる。

4.決済・認証機能の追加

決済・認証などを行う機関とのイ ンタフェースをAPI として準備して いるので、企業取引の一連の流れを 完結させることができる。

以上のように、NTT コミュニケ ーションズが提供するMRO 調達プ ラットフォームソリューションは、 単なるMRO のわくを超えた企業間 のサプライチェーンを構築するため に必要な機能をすべて備えている。 さらにマーケットプレイスとして新 たなオンラインビジネスを開拓する 能力を秘めている。
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*1 EDI (Electronic Data Interchange )とは企業間など異なる組織間で、 標準規約に基づきネットワークを通じて電子的にデータをやりとりするこ と。国内企業におけるEDI 実態調査-1999 -(財団法人日本情報処理開発協会 産業情報化推進センター)によると、電子データ交換を行っている企業は調 査した704 社(EDI 導入に前向きなJEDIC (EDI 推進協議会)主要企業) のうち527 社の74 .9 %であるが、業種によって普及率にかなりばらつきがあ る。(例:電気100 %、機械20 %)また従来はVAN を用いていたためコスト 高となり広く普及していなかった。業種間をまたがるEDI 、中小企業まで 含めたEDI 、インターネット等を利用した低コストのEDI 等が課題となっ ている。

*2 CommerceOne 社はBtoB 分野における電子商取引(リアルタイム電子 調達、バイヤ・サプライヤマネジメント)のソリューションを提供するリー ディングプロバイダ。1994 年1 月に設立され米国カリフォルニア州ウォル ナットクリークを本拠地としている。( http://www.commerceone.com/

*3 コマースネットジャパン(CommerceNet Japan )は、エレクトロニッ クコマース(EC :電子商取引)を推進する非営利の民間団体。米国コマー スネット(CommerceNet )の日本における唯一の提携団体であり、同団体 と全面的に協力し、国際的な視野から日本のエレクトロニックコマースの普 及と発展に貢献している。現在94 社(1999 年11 月現在)が参加しており、 電子商取引の発展のため革新的な取り組みを行っている。

*4 米国CommerceNet が提唱したEC システム間の接続を容易にするため の概念。個々のEC システムが自らの情報(自社のビジネスに関する記述、 システム仕様など)をネットを通じて公開することで、取引相手をネット上 で探し出すことや、取引先のEC システムとの相互接続のための仕組み(ト ランスレータ等)の構築を容易にすることができる。

*5 XML (eXtensible Markup Language )とは、インターネット上で多 様なコンテンツを扱えるように設計されたデータ記述言語。従来のインター ネット上の標準的な記述言語であるHTML は文書を表示することに優れて いたものの、コンピュータプログラムでは内容が理解できないという欠点を もっている。XML はこれを解決するため設計された汎用記述言語で、プラ ットフォームやアプリケーションに依存しない情報交換を実現する。そのた めEC 分野では高い期待が寄せられている。最初の標準仕様は98 年2 月に WorldWide Web Consortium (W 3 C )(http://www.w 3 .org )が定めて いる。XML を企業間取引に用いる動きもさかんになっており、XML を用い た各種フレームワークや各業界における標準化等が進められている。(例: BizTalk フレームワーク、RosettaNet 、OBI 等)

*6 CBL (Common Business Library )とは、企業間でやりとりされる、 製品情報、受発注情報、出荷情報などのビジネス文書をXML で記述する際 の標準文書型定義集。CBL を用いて複数企業間の取引を共通化することに より、方式の異なる各社のシステムを容易に相互接続することができる。 CommerceOne 社が提唱し、CommerceNet, Microsoft Corporation (米 国), UN/CEFACT, OASIS などが支持を表明している。(http://www. commerceone.com/cblpressroom.htm )