ジェネシスの次世代戦略とソリューション

Genesys Telecommunications Laboratories,Inc.
Senior Vice President
Yuri Shtivelman (ユリ シティーベルマン)


昨年11 月号でも紹介したとおり、 ジェネシス社は、CTI ミドルウェア としてデファクトに近いシェアを誇 っている。一方、ジェネシス社はア ルカテル社に買収されて、今後はど うなるのだろうと気にしている人も 多いだろう。

ちょうど、ジェネシスのShtivelman 氏が来日したので、CTI をとりまく 最新の状況やジェネシス社の今後に ついてインタビューした。

急成長を支える インターネットスイート

――前回、手塚社長にお話しを伺っ た時(本誌1999 年11 月号)もそうで したが、今も売れ行きは順調なよう ですね。

Shtivelman 昨年9 月28 日にアル カテル社との買収に合意しました。 それにより、ジェネシスが出す一企 業としての決算は今期が最終になり ますが、売り上げは右肩上がりに伸 びてきています。

――インターネット スイートは、 電話とインターネットを融合した新 しいソリューションとして興味深か ったのですが、販売状況はいかがで すか?

Shtivelman 非常に良い評判をい ただいています。アメリカでの実績 ですが、昨年6 月末には既に100 社 以上に導入されました。このソフト ウェアを導入されるお客様には2 つ のタイプがあります。

1 つは、非インターネット業界で ビジネスに実績があり、これからイ ンターネット業界へ進出しようとし ている企業です。例として、フォー ド、メリルリンチ、メリタノードバ ンク(スウェーデン最大の銀行)や アウトソーシング系の企業などがあ ります。

もう1 つはちょっと意外かもしれ ませんが、ドットコムと呼ばれている インターネット上でビジネスを展開 している企業です。

ドットコムの企業は、インターネッ ト上で何でも出来るので電話などは 必要ないと思われていました。ところ がリサーチしてみるとユーザが何か 商品を買った場合、インターネットだ けでなく電話でもカスタマサービス を受けられる方が、67 %も売り上げが 伸びるという結果が出ました。

アメリカでは若い世代にリアルタ イムにコミュニケーションができる チャットに人気があり、問い合わせ にe メールは面倒というような風潮 があります。一方、インターネット 電話は、音質や企業のファイアウォ ール越しには使えないという問題点 があります。

――なるほど。それで、インターネ ットと電話を組み合わせたインター ネットスイートが採用されるという わけですね。

Shtivelman 今アメリカでは、2 本目 の電話線を引くことが多くなってき ていますが日本ではどうでしょう? ――日本ではISDN を引いて対応す ることが一般的です。ISDN だと2 回線使えますから、簡単にインター ネットスイートを利用する環境が整 います。

アルカテルとの関係

――ジェネシスがアルカテルに買収 されたニュースには驚きました。

Shtivelman なぜ我々が買収に応 じ、また、なぜ相手がアルカテルか ということをお話ししましょう。

確かに業績は非常に伸びていま す。しかし、ご存知のように株式上 場している会社は3 カ月ごとに査定 があります。大きな会社だと多少の 赤字が株価に影響することはありま せんが、中小規模の会社では株価が かなり影響します。つまり、弊社は 今までの好調な業務実績を常に維持 して行かなくてななりません。また、 今まで競合していた会社が次々と大 会社に吸収され、より大きな企業へ とかわっていきました。弊社として も、競争相手として同等の資金力と 組織力を兼ね備える意味でアルカテ ルとの買収に応じたのです。

次になぜアルカテルが買収相手か と申しますと、まず、情報通信業界 で技術的にも揺るぎない強い立場を 持っているところが魅力でしたし、 アルカテル側もソフトウェアに力を 入れていきたいという希望がありま した。しかし、我々にとって最も重 要だったのは、プラットフォームを どこにも依存しないという弊社の方 針をアルカテルが認めてくれたこと です。これは非常に重要なことで、 これにより、今まで築き上げてきた 弊社のパートナーとの関係を従来通 り維持できます。また、会社名も、 そのまま残ります。

つまり、より新技術開発に専念で きるようになったということです。

――IBM とLotus のような関係な のですね。

Shtivelman その通りです。

新技術への取り組み

――今後は、どのような技術展開を していかれるのでしょう?

Shtivelman メディア、アプリケー ション、産業の3 つの方向を見据え て製品開発を進めていきます。

メディアでは、単に音声だけでな く、e メールなどの新しいメディアも 扱えるようにしていきます。今まで のコールセンタは、新しくコンタク トセンタと位置づけていきます。

アプリケーションについては、顧 客対応の様々なノウハウをエージェ ントなどで実現し、より使いやすい 機能を実現していきます。たとえば、 インターネットスイートにAI 機能を もったコンテントアナライザを組み 込み、顧客への返事を自動で送れる ようにもしていきます。

産業については、それぞれの業態 ごとにコンタクトセンタの最適なソ リューションを提供できるようにし ていきます。

――あまりに市場を独占して裁判沙 汰にならないようにしてください ね。(笑)

IP 化するPBX

――電話(PBX )で強かったジェネシ スがVoIP (Voice over IP )では、どの ように取り組まれるのでしょうか?

Shtivelman 一般回線でのVoIP は まだ困難ですが、イントラネット上 ではもうすでに始まっています。 我々も、Genesys Gateway Keeper を開発し、PBX をイントラネットの IP 環境に取り込んだソリューショ ンを提供しています。ここでは、IP 環境用のIVR (自動音声応答装置) も使えます。

――unPBX というPBX をコンピュ ータで肩代わりさせる技術がありま すが…。

Shtivelman 既存のPBX を Windows NT 環境などで肩代わり させる方法(PC PBX )は今後減る でしょう。一方、IP 環境でPBX 機能 を実現するコンピュータ(IP PBX ) は増えていくでしょう。ジェネシス も、IP PBX に対応した製品を出し ていきます。

ビジネスルータ

――ビジネスルータという言葉を聞 きましたが…。

Shtivelman コールセンタ運営の費 用の3 分の2 はエージェントの人件 費が占めています。それを効率化す るソフトが、ビジネスルータです。 ビジネスルータでは、顧客対応の データなどを分析して、アクション までを行います。データウェアハウ スの分析ツールがレポートしか出さ ないところと根本的に違います。

――もっと詳しく聞きたいのです が、時間がありません。

Shtivelman 4 月に、東京と大阪で フェアを開催する予定です。そこでは、 アメリカ、ヨーロッパの最新の事例を 含めて詳しくご紹介する予定です。

――では楽しみにしています。本日 はどうもありがとうございました。

(聞き手 本誌編集長 黒田幸明)