今日の焦点
またまた出現した大型合併

企業間の合併ニュースも最近は日 常茶飯となって、大抵のことには驚 かなくなっているが、最近報じられ た2 つの合併はその規模の大きさ、 組み合わせの特異性によって、世間 を驚かせた。1 つは本年1 月10 日 に発表された米国のAOL とタイム ワーナーとの合併である。AOL は 約2,000 万人の会員を抱え、マイク ロソフトなど2 位グループに5 倍以 上の差をつけているネットのサービ ス・プロバイダだ。一方、タイムワ ーナーは出版大手のタイム、映画の ワーナー・ブラザーズ、音楽のワー ナー・ミュージック、放送のCNN などを擁するメディア企業である。 このようなインターネットと伝統メ ディアの結合は今まで考えられない ことであったが、今やインターネッ トがメディアの世界でも大きな存在 であることを明確にした。

この合併によって、まず手をつけ るのは音楽ではないかと言われてい る。MP3 による音楽の配信は今脚 光を浴びているが、AOL はこれま で音楽のレーベルを持っていないこ ともあり、この分野に本格的に参入 していなかった。しかし、タイムワ ーナーはマドンナなどのアーティス トを抱えており、この合併により音 楽のネット販売が十分に可能となっ た。しかも、本年1 月24 日には、 タイムワーナーと英音楽大手の EMI が合弁新会社を設立し、音楽 事業で統合することで合意したと発 表した。この合弁により、売上高 80 億ドル、世界の約4 分の1 を占 め、ユニバーサル・ミュージックに 並ぶ世界最大級のレコード会社が誕 生する。

新会社は、約2,500 組のアーティ ストを抱えることになる。これを AOL のネットで直接配信すること になれば、強力な音楽のネット販売 網が確立され、ネットによる音楽配 信を支配できる立場を築くことがで きる。しかも、近い将来に実現する であろうインタラクティブ・ビデオ あるいは映画のネット配信について も、リーダーシップを発揮すること が可能となった。この新会社は、 人々が情報を得たり、商品を買った り、娯楽を享受したりする方法を根 本的に変える先駆者の役割を果たす ことになるかもしれない。

もう1 つは英携帯電話最大手の英 国ボーダーフォン・エアタッチと独 通信・機械大手のマンネスマンとの 合併である。昨年11 月にボーダー フォン・エアタッチはマンネスマン に約13 兆円の過去最高の敵対買収 を仕掛け、マンネスマンはこれに対 抗すべく種々画策を図ったが、過半 の株主の支持を得ることができず、 結局は友好的合併に踏み切ったもの である。この合併は規模としては史 上最大級の約19 兆円と言われてお り、新会社の携帯電話加入者は約5 千万人と世界最大となった。欧州で は昨年から携帯電話業界の合従連衡 が相次いでいる。ドイツ・テレコム は英ワン2 ワンを買収、フランス・ テレコムも独E プルスを買収、また 今回の合併の一方のマンネスマンも 伊オミテルや英オレンジを傘下に収 めていた。ボーダーフォンは昨年、 米エアタッチを買収して世界最大級 の携帯電話会社になり、さらに米ベ ル・アトランティックとも携帯電話 事業について業務提携を締結してい る。携帯電話事業は、次世代携帯の 技術規格である「W- CDMA 」の導 入により、今後は国や地域を越えた 統一方式となり、市場から国境が消 え、国を越えた再編がそのまま競争 力強化につながるということにな る。その意味で、この新合弁会社は ネット通信を中心とした次世代携帯 電話でリーダーシップを競う地位を 確保したと言える。

わが国ではJ −フォングループに ボーダーフォンが20 %以上出資し ており、アジア市場への本格的な進 出を企てるであろう。携帯電話の一 方の覇者NTT ドコモも海外進出を 狙っており、アジア市場でこの新合 弁会社と激突することになろう。 本年10 月にはDDI 、KDD 、IDO の合併による新DDI も誕生する。 上記の2 つの合併に驚いているうち に、またまた大型合併が報じられる かもしれない。情報通信の世界はま さしくビッグバンの時代である。