情報通信に かける 私の夢
使いやすいソフトウェアの開発を目指して


INS エンジニアリング株式会社
DoCoMo システム事業部
◆日高 雅子◆


以前、新聞の投書で「夫がパソコ ンで“チャット”している時、わた しはとても寂しい思いをする。外で 飲んでいてくれるほうが、まし。」 という記事を読んだ。なるほど、旦 那様が画面越しに友人と楽しく会話 していると、側にいる自分は何とな く取り残された気分になってしまう のだろう。

ここ数年のパソコンや携帯端末の 急激な進歩と普及で、私達の生活は 加速度的に便利になった。

拙宅でもパソコンでインターネッ トを始めたのだが、一番乗り気でパ ソコンの前から離れないのは、なん と、還暦を過ぎた義母だ。“メルト モ”も確実に増やしている義母だが、 パソコンの操作にまだまだ不安を抱 えている。パソコンが自分の想像を 超えた動作をすると、「変な操作を して、壊してしまったのでは」と思 うようだ。その度に、「マウスでク リックしただけなのに、変な動作を するパソコンのほうが悪いんだよ。」 と説明するのだが、彼女は苦笑いす るばかり。また、ワープロソフトが 落ちたと言っては、大騒ぎをしてい る。

前述のご婦人や義母をみていると 「快適」とはなんだろうと、システ ム開発に携わる者として考えずには いられない。これだけコンピュータ が普及し世間の関心が高まっても、 大半の人々は「冷たさ」「敷居の高 さ」のような印象を感じているので はないだろうか。

私は、長い間、汎用性のあるプロ グラムが「良い」プログラムだと信 じてきた。5 つの機能で5 つのこと ができるより、2 つの機能の組み合 わせで5 つのことができるプログラ ムのほうが「使いやすい」と考えて きたのだ。しかし、最近、汎用性の あるシステムが果たしてユーザにと って使い易いシステムなのか疑問を 抱くようになった。

現在、私は、ある企業の顧客情報 を管理するシステムの開発・運用支 援に携わっている。限られた人数で 開発・運用支援を行うため、私は要 求定義から、設計・製造・試験と開 発全般に加え、納入後の運用支援ま で全般に関わっている。また、中規 模システムながら、1000 万件を超 える顧客情報を管理し、常時15 台 以上のクライアントがサーバに接続 しているため、性能面での苦労が多 い。しかし、じかにお客様からヒア リングしてその要求を確認し、納入 後の反応も直接聞くことができるた め、日々やりがいを感じている。

さらに、感謝状という形でお客様 から評価していただいた時は、入社 以来最高の達成感を味わえた。

ところで、このお客様もシステム に関しては、様々なことができる画 面より、1 回クリックするだけで、 目的の帳票が出力される方を好まれ る。確かに汎用性を持たせた機能の 画面は複雑になりがちで、選択・入 力項目も多くなる。また、様々な拡 張性を考慮しすぎ、性能悪化をまね く恐れもある。しかし、お客様の要 求そのままだと、融通の効かないシ ステムとなり、次開発に多大な労力 を必要としてしまう。

私は、お客様のヒアリングと設計 に多くの時間を割くことで、この問 題に正面から取り組んでいる。特に ヒアリングは、3 ヶ月の開発期間中 に2 ヶ月もかけたことがあるほど重 要に考えている。

パソコンを含め、情報通信技術は 日進月歩の勢いで発展している。そ して、そこに人が関わる限り、ユー ザインターフェースの重要性は増す ばかりである。新聞に投書されたご 婦人、義母、私どものシステムのお 客様が抱えている不満や不安を完全 に取り除くことはとても難しい。

しかし、誰もがストレスや不満を 感じることなく操作できる「使いや すい」ソフトウェアの開発を目指し ていきたい。