私が気になる3つの技術



NTT ファシリティーズ
取締役
関西事業本部長
坂本 健一



永久磁石だけで 永久に回り続ける 夢の発電モーター

太陽光や風等の自然エネルギーは クリーンで資源の枯渇問題もないエ ネルギーであることから、これらの エネルギーを利用した発電は地球環 境の面から理想的な発電装置と言え る。しかし、ご存知の通り経済性の 面で課題がありなかなか導入されな いのが現状だ。

そこで、気になる技術は永久磁石 だけで永久に回る発電モーターの発 明である。幼いころに磁石やコイル を使って電気モーターを作った人は 多いと思うがその逆で、永久磁石の エネルギーをうまく利用できるよう 磁石の構成を工夫し、その反発力や 吸引力で永遠に回り続けるモーター を実用化する技術である。真剣に研 究している人もいるようで、仮に実 用化されれば、家に一台これを置け ば、クーラー、照明等全ての電気製 品が永久磁石のモーターが発電する 電気でまかなえるようになる。家庭 は永久に電気代はただ、もはや石油 の枯渇や地球温暖化を心配する必要 がないという夢の技術だ。

エネルギー保存の法則からすれば 永久にエネルギーを取り出せること はありえないが、発想としては楽し い。

高い発電効率が得られる セラミックエンジン

コージェネレーションは近年のエ ネルギー問題を背景に代表的な省エ ネルギー機器の一つとして導入が盛 んになってきた。コージェネは廃熱 の利用によっての効果がきわめて大 きいことから、利用はやはり熱を多 く利用する工場やホテル、風呂、温 水プール等を中心に利用されてい る。一方、電気使用量の大半を占め る一般の事務所等では熱の需要が少 ないため、なかなかコージェネが導 入されてないのが実状である。そこ で、このような熱需要の少ない一般 の事務所への導入拡大を考えると、 発電効率が高く熱は付録的な使い方 でもペイできる電気利用主体のコー ジェネが好ましい。発電効率を高め る種々の方式が導入されているが、

今後の技術として気になるのがセラ ミックエンジンだ。断熱性・耐熱性 に優れた高強度セラミックで作り燃 料消費効率を上げるのが狙いであ る。現在まだ試作段階だが、ディー ゼルエンジン、ガスエンジン及びガ スタービンの各種エンジンで開発が 進められている。実現すれば電気だ けの利用でもペイできるほどの経済 効果が出ることから、対象範囲は急 に広がりを示すため楽しみだ。

ごみ発電

日本の廃棄物処理は高温多湿の気 候条件、狭い国土の事情により「燃 やして埋める」処理が主流。これを 反映して、都市ごみを焼却する率が 欧米諸国と比べて非常に高いそうで ある。1995 年度の実績を見ると全ゴ ミ(粗大ゴミから家庭のごみまで含 む)の約8 割が焼却されている。い つも何気なく出しているごみの8 割 が燃やされているのである。4 人家 族で計算するとおおよそ1 年に1 ト ンのごみが燃やされている計算にな る。CO 2 を排出するごみ焼却は基本的 には好ましくないのだろうが、燃や すことにより1 /10 になるため埋め立 て処分場の延命策としては不可避だ。

燃やすのならもっと効率よく高温 で燃やして熱エネルギーを発電に利 用する試みも始まった。固形燃料化 プラントがその一つだ。埋立地の延 命として役立つほか、発電用の化石 燃料の節約にも貢献し、またただ同 然の燃料であることもあり発電単価 は相当安いはず。ごみ発電の発電全 体に占める割合は低いが、こんなに メリットがあるので、分別回収やご みの安定供給など運用面での難しさ もありそうだが、もっとみんなに訴 えれば市民を巻き込んだ大きな協力 体制が出来ると思う。




シトリックス・システムズジャパン
代表取締役社長
田中 正利
●高速デジタル・ワイアレ ス通信(衛星、その他)
●次世代音声技術(高度音 声認識、自動読み上げ)
●サーバ・セントリック・ コンピューティング
(Application server,Data server,Web server 、 Communication server など)

情報システムが人間生活のあらゆ る場面で不可欠な基盤である事は、 もはや紛れもない事実であり、電気、 水道、道路などとともに、情報シス テム、情報ネットワーク無くして人 間社会は成り立たない。情報システ ムは人間に迎合し、人間のライフサ イクルに合致しなければならないが、 残念ながら今までの情報社会は人間 生活にいろいろなストレス、影響を 及ぼしてきたも事実である。



21 世紀の時代は基本的には省資 源、低成長時代の時代で、人々の生 活パターンは必要なものを出来るだ け所有するのではなく、必要な分だ け利用しその対価をサービスとして、 サービスの提供者に支払う仕組みに 急速に移行していくと思われる。

このような時代に合う将来の情報 システムの最も一般的な構成を予測 してみると、あらゆるアプリケーシ ョン・ソフト、データ、コンテンツ 等の資源は、サーバに格納され管理 される仕組みが便利である。情報シ ステムのユーザは、システムの管理 から全く独立して自由でなければな らない。

ユーザは情報システムを、あたか も電話や水道や電気を使うように、 その詳しい仕組みには一切関知せず、 ただ、利用した分を支払うだけで良 いように扱われるべきである。 これによりユーザはアプリケーシ ョン、ファイルを所有する事により 発生する管理の苦労、陳腐化による 償却から解放され最低のコスト、投 資で必要な情報資源の利用が可能に なる。

情報通信システムは、現在もこれ からもあらゆる事業の推進に不可欠 であり、将来はもっと人間生活のあ らゆる場面で使われ、従来のB to B (Business to Business )から更にB to C (Business to Consumer )に進 んで行くであろう。



これからの情報システムに求めら れる条件は、人間の生活に柔軟に迎 合できるシステムであり、ユーザが 何時でも好きな時に、好きな場所で、 好きなアプリケーションを、好きな デバイスから利用出来なければなら ない。そのため情報システムには利 便性(Convenience )、簡易性 (Simplicity, Easiness )、移動性 (Mobility, Any place )、即時性 (Real time, Any time )、強健性 (Robustness )、普遍性(Ubiquity )、 信頼性(R e l i a b i l i t y )、機密性 (Security )が重要となる。また人間 は五感で物事を感じ考える。人間は 自由に動くし、気ままでわがままで ある。更に人間は怠け者であるので、 情報システムが、人間の性格にあわ せたサービスを提供するべきである。



こうした状況を考えると、当面必 要な技術として私の脳裏に浮かんで くるのは、高速低価格のワイヤレス 通信技術(衛星通信、PHS 、無線 LAN 等)であり、音声技術を中心と した人にやさしいマンマシン・イン ターフェース(音声認識、自動読み 上げ等)であり、それらを支えるサ ーバ中心のコンピュータ技術(サー バ・セントリック・コンピューティ ング等)であり、最終的にはこれら の技術を、効率良く、安く、安心し て利用できる管理、運用の仕組みに なると考える。私はこうした環境を Digital Independence と呼ぶ。