私が気になる3つの技術



NTT ドコモ
情報システム部長
日向 実
Tel :03 −5156 −1400
E- mail :hyuga@nttdocomo.co.jp


NTT ドコモ情報システム部では、 コンピュータやネットワークを駆使 し、3 千万を超えるお客様のサービ スオーダー処理や顧客管理、料金請 求・収納等を行っており、高度なコ ンピュータ利用は不可欠となってい る。情報技術のイノベーションは、 企業に対して格段の業務の拡大・改 善をもたらす可能性を持っている。 しかも最近は、以前の5 年分のイノ ベーションが1 年で生まれようとし ている状況にあり、特にモバイル+ インターネットのインパクトは大き な可能性を持っている。私は、個別 要素技術よりもシステム化技術やア プリケーションにより興味があり、 次の3 点が気になっている。
i モードの業務利用

社内OA の推進により、オフィスで の生産性が高まっているが、個人か らのデータエントリ作業は相変わら ず大きなネックとなっている。i モー ドは、(これまでOA アクセスが出来 なかった)細切れの空き時間をうま く活用することで、このネックを打 破する可能性を持っている。また、 情報が必要なその時・その場所で検 索し、またデータを持ったその時に データ入力が出来る(これまではい ったんメモ書きし、後でまとめてパ ソコン入力)点は、これまでのメデ ィアにない新たな武器を社内OA に 与えてくれている。

ネット金融

金融分野は、情報システムの先進 ユーザと言われている。しかし、これ がかえってその基本的なサービス範 囲やコストを古い形を留めることに 繋がっていると思う。これまでの横 並び思想から、サービス改善のイン センティブが湧きにくかったことも 大きい。今のインターネットやサー バ・パソコン・携帯端末等の圧倒的 に強力かつ低コストなツールの出現 は、金融分野に大きなパラダイムシ フトを起こすと思う。私共がシステ ム構築を進める上で金融関係が絡ん だ部分が隘路となるケースが多い。 利用側にとって、金融を経由すると リアルタイムに情報が届かない、明 細が不十分で消し込みに支障をきた す、手数料が高い、等の不満が多い。

規制緩和に伴い、IT をフルに生 かした新たな金融機関が出現しつつ あり、これまでとは発想の異なる21 世紀タイプの金融システムが出現す る可能性がある。これらと私共のシ ステムがネットワーク化されること で大幅に利便性の高いシステム作り が可能となるだろう。

m- Commerce

m はモバイルを示し、パソコン主 体のe-Commerce から携帯電話等を 使った商取引への拡大を意味してい る。携帯電話のメリットは、その圧倒 的な数量と持ち主との密着時間の長 さ、素早い立ち上がり時間と片手で 操作出来る利便性等にある。この携 帯電話に、金融決済機能、物流システ ムとの連動等が重なると巨大な仮想 市場が出現する可能性がある。

NTT ドコモでは、毎月お客様にお届けし ている「事前案内書兼領収書」をi モ ード等でお知らせすることが出来る サービス(e ビリング)を、今年から 開始した。申し込んだお客様には、印 刷・郵送が不要となることから、基 本使用料も割引くようにしている。 これはまだ今後展開されるであろう 多様なサービスのほんの入り口に過 ぎないが、B to C サービスにおける 携帯電話の可能性は大変大きい。個 人認証技術とセキュリティの確立が 前提となるが、携帯電話は最初から 個人が持ち歩いて自らが管理するこ とを前提としていることから、認証 面ではアドバンテージがある。世の 中、身の回りのモノ全てにコンピュ ータが入る時代になる。この時、人間 とコンピュータがコミュニケーショ ンする基盤としてm-Commerce の基 盤が使える。つまり、あらゆるコンピ ュータのリモコンとして携帯電話が 機能する可能性がある。




東京大学情報基盤センター助教授
WIDE プロジェクト
ボードメンバー
江崎 浩
Tel :03 −5684 −7303
E- mail :hiroshi@wide.ad.jp


IPv6 技術

IPv 6 技術により、身の回りのセン サーなどすべての機器がインターネ ット接続され(ユービキタスコンピ ューティング;U b i q u i t o u s Computing )、グローバル空間からの アクセスを可能にすることが期待さ れる。プライバシー、セキュリティー の問題は解決すべき重要な課題であ るが、IPv 6 技術を用いたUbiquitous Computing 環境は、これまでには想 像もできなかったビジネスモデルを 出現させるであろう。インターネッ トの発展は、エンドエンドモデルに よってもたらされたものといっても 過言ではない。「ネットワークは可能 な限りシンプルに、高度な機能はす べてエンドノードで行う」のである。 しかしながら現実はというと、携帯 電話のインターネット接続やケーブ ルインターネットでは、アドレスの 不足のために、エンドエンドモデル を維持することができず、アプリケ ーションの自由度を著しく奪い取っ ている。問題なのは、アドレスの不足 を逆手に取り、囲い込みモデルを用 いたビジネス構造が作り出されてい る点である(これは、家電産業のビジ ネスモデルに同じである)。

オープンなネットワークとオープ ンなプラットフォームがインターネ ット上に技術とビジネスモデルの突 然変異を発生させ、その発展を支え てきた。これを維持するためには、 十分なアドレス空間の継続的な供給 が必要となる。次世代のインターネ ット基盤は、今後も継続する接続機 器の増加と通信量の増大に対応し、 信頼性のある産業・生活基盤として の役割を果たさなければならない。 その核となるのがIPv 6 技術である。

光伝送技術

数年以内に、キャリアが開発した光 技術により、キャリア自信が苦しめら れる光景を我々は目にするであろう。 キャリアとは電話事業者であり、ISP である。光ファイバを用いたデータの 転送速度の向上と、光ファイバのコス トの低下により、新しい情報ネットワ ークアーキテクチャが登場しつつあ る。インターネットは、光伝送技術の 進歩により、巨大なIX (Internet eXchange )となるであろう。これは、 電話事業者、広域インターネットプロ バイダ、専用線事業者のすべての競争 相手になり、最終的には、これらすべ てを飲み込むことになるであろう。こ のようなネットワークの構造に対し て、どのようにキャリアの構造を変革 していくかが重要な課題となる。

ポリシー管理制御技術

現在のインターネットは、行き先 を告げると、どんな道や乗り物に乗 せられるか選択できない交通システ ムと同じである。特急のグリーン車 か、満員の各駅停車に乗せられるか 分からない。マイルを貯めるために、 航空会社を選択することもできない。 そんなシステムでは、ビジネスマン はスケジュールを立てることもでき ず、疲弊してしまうであろう。

ユーザ(エンドユーザとシステム の運用者)が希望するポリシーにし たがってネットワークを管理制御す る技術をポリシー管理制御技術と呼 ぶ。ポリシーをネットワークに反映 させるための技術開発がIETF (Internet Engineering Task Force ) において進められているが、現在2 つの技術が並行して議論されている。 「SNMP+MIB 」(SimpleNetwork Management Protocol +Management Information Base )vs 「COPS +PIB +LDAP 」 (Common Open Policy Service Protocol +Policy Information Base +Lightweight Directory Access Protocol )である。

どちらが、業界標準として認めら れるか興味ある点であるが、いずれ にしても、次世代インターネットは、 ユーザのポリシーを反映することの できる技術を導入することで、やっ と通常の交通システム並みに、ビジ ネスとして使用可能なものとなる。