NTT、ハイフレームレートによる滑らかでシャープな映像のライブ伝送を実現

~世界初、リアルタイム4KハイフレームレートHEVCコーデックを開発~

日本電信電話 2018年4月05日

日本電信電話株式会社(以下、NTT)は2018年4月5日、現在、4K映像の標準となるフレームレート(FPS; Frames Per Second)の50/60pより高いフレームレート(ハイフレームレート)の100/120p4K映像を「H.265/HEVC」により圧縮・伝送することを可能とし、特にスポーツなど動きの速いシーンが多い映像などで高い臨場感を実現するリアルタイム4KハイフレームレートHEVCコーデックを開発したと発表した。本コーデックにより、放送やスポーツのパブリックビューイングにおいて更なる高臨場な伝送を実現することが可能になる。さらに今後は、VRや監視などハイフレームレート映像の活用が期待される分野での新たなアプリケーション創出を目指すという。

ハイフレームレートによるモーションブラーの低減効果(左:ハイフレームレート映像、右:標準映像)

開発の経緯

日米欧の衛星放送を中心として超高精細映像Ultra HD(UHD)サービスが開始されてきているが、NTTは最新の映像符号化国際標準規格「H.265/HEVC」に対応した専用LSIである4K映像対応HEVCリアルタイムエンコーダLSI「NARA」を2015年3月に発表するなど、これまでもUHDサービスの進展に貢献してきた。最近では、UHDサービスのキラーコンテンツとなっているサッカーやカーレースなどに代表されるスポーツコンテンツにおいて、更なる臨場感を実現するために、動きの速いシーンを鮮明に表現することができるハイフレームレート映像への関心が放送・映像配信業界を中心に高まってきている。

今回の開発成果により、新たにハイフレームレート映像のリアルタイム伝送を実現することを可能とし、今後、ハイフレームレート映像のライブ中継の実現など、更なるUHDサービスの進展に寄与していくことが狙いだ。

技術の概要

新開発のコーデックは、4KハイフレームレートHEVCエンコーダと4KハイフレームレートHEVCデコーダで構成され、各々1Uサイズのコンパクトさを実現している。

4KハイフレームレートHEVCエンコーダは後方互換性を保つことが可能なテンポラルスケーラブル符号化方式に対応しており、ハイフレームレート映像対応受信機ではハイフレームレート映像として、従来のハイフレームレート非対応受信機においても標準フレームレート映像として復号することが可能な符号化ストリームを出力することが可能だ。

さらに、本コーデックは様々な伝送路に対応することが可能なMMT(MPEG Media Transport)プロトコルに対応しており、階層別配信により、標準フレームレート映像の復号に必要なベースレイヤとハイフレームレート映像の復号に追加で必要となるエンハンスメントレイヤのデータを異なる伝送路を用いて別々に伝送することを可能にしている。

技術のポイント

1. 2チップ並列処理による、ハイフレームレート符号化・復号機能

「NARA」を2チップ連携して動作させ、チップ間で相互データ転送を行うことにより、映像品質を保ちながら、4Kハイフレームレート映像符号化に要求される高速な処理性能を実現。また、既存の4Kハイフレームレート非対応受信機でも復号が可能となるように、4K標準フレームレート映像をベースレイヤ、4Kハイフレームレート映像のための差分データを構成するエンハンスメントレイヤに分けて符号化するテンポラルスケーラブル符号化に対応した。

2. MMTプロトコルによる階層別配信機能

異なるIPストリームでベースレイヤとエンハンスメントレイヤを伝送する階層別配信機能を実現。階層別配信により到達時間にバラつきが生じることがあるが、MMTを使って順番を再構成することで、4Kハイフレームレート対応受信機ではハイフレームレート映像を再生することが可能となっている。

リアルタイム4KハイフレームレートHEVCコーデックの技術的ポイント

今後の予定

今後、NTTは、リアルタイム4KハイフレームレートHEVCコーデックを用いて、NTTコミュニケーションズが提供中の映像ネットサービス(http://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2017/0403.html)による映像素材伝送の4Kハイフレームレート対応など様々な超高精細映像UHDサービスの実現に貢献していくとしている。

なお、2018年4月9日よりアメリカ、ラスベガスで開催される世界最大の放送機器に関わる展示会「NAB Show 2018」のNTTグループブースにおいて、8Kハイフレームレート映像のリアルタイム伝送デモンストレーションを本コーデックの4台並列動作により実施するという。

 

詳細はNTT持株会社によるニュースリリースを参照
http://www.ntt.co.jp/news2018/1804/180405a.html