●今私が気になる技術と人材
 株式会社NTT データ
 ビジネス開発事業本部
 決済ビジネス事業部長
 山田 英司氏


複雑化する世の中を乗り越えるには、
業務そのもののルールやプロセスを変える
熱意をもった人材が必要。

シンプルで分かりやすいWebサービスに注目

―はじめに、現在のお仕事についてお話していただけますか。

山田 私が所属しているビジネス開発事業本部決済ビジネス事業部は、ANSER、CAFIS等の社会インフラとも呼べる決済ネットに関わるビジネスを担当しています。

 具体的には、ANSER、CAFIS、ATM・CDの中継ネット等のEFT、マルチペイメント・ネットワーク、そしてB2B、B2C関係の新規ビジネスの企画・開発といった5つのビジネスユニットで、決済に関わるサービス提供事業を主軸に、個人・法人向けのWebバンキングサービス関連事業、ICカード関連事業等々、ネットワークビジネスの根幹を成す事業を展開しています。

 これまでは、どちらかというと決済データの中継というところに主眼を置いてきましたが、これからは、事業会社やカード会社の加盟店等に対して、ASPを核としたさまざまなアプリケーションサービスを提供し、以前の単なるデータ中継ネットの枠を越え、各企業の皆様にご利用いただける付加価値の高いサービスを提供していきたいと思っています。

―このような事業を推進されていく中で、現在、関心のある技術についてお話していただけますか。

山田 ASPが事業の核になっていきますので、新しいサービスを既存の決済プラットフォームの上にのせていくということになると、やはり現在注目されているWeb サービスに関心があります。Webサービスは、いろいろな人々がさまざまな目的で利用していますので、定義が曖昧な部分がありますが、私はWebサービスを、異なるWebサイトのアプリケーションを連携させて、さまざまな処理を自動的に実行するための技術として定義しています。Webサービスの要素技術には、XMLをベースに、SOAP、WSDL、UDDI等があり、このような言葉だけを聞いてしまうと「難しいもの」と捉えてしまいがちですが、実にシンプルで分かりやすい概念でつくられている技術ではないでしょうか。

 WWWが極めて単純な構造で広く普及したのと同じように、インターネットに関連して生まれた技術ですので、非常に接しやすいですね。

 その昔、オブジェクト指向がシステム開発の究極の姿ではないかといわれていましたが、今日ではかなりの分野でオブジェクト指向が浸透しています。このWebサービスにもオブジェクト指向の要素がかなり含まれていると思います。それは、シ
ステム開発をすることなく、既存のサイト上のアプリケーションと連携して処理を実現できるなど、拡張性、さらには未知の可能性を秘めているからです。

 私どもとしても、決済ネットワーク上にWebサービスを駆使したアプリケーションサービスを提供していきたいと考えています。

ビジネスプロデューサーと呼べる人材が求められている

―Webサービスをはじめとした新技術を活用してシステム開発が単純に行えるようになると、それに携わる人材についても、求められるものが変わってくると思いますが。

山田 そうですね。しかし、我々が求めるSEには、コンピュータやネットワークの基礎知識をしっかりと持ちながら、お客様や仲間内のさまざまな事象を上手くコーディネートしていくためのコミュニケーション・スキルや、法律や会計などのビジネスに関する基本的な知識が必要です。

―その中でも、特に重視しているスキルは何でしょうか。

山田 NTTデータは付加価値の高いサービスの提供を常に心がけていますが、やはりサービス・プロバイダー的に振舞うとしても、インテグレーション力が根底になければなりません。そのためにも、システムを開発していくうえでのプロジェクトマネジメント・スキルは必須だと思います。これをしっかりと身に付けたうえで、プロジェクトに参画していくことが大切です。

 例えば、プロジェクトマネジメントの資格として「PMP(Project Management Professional)資格」がありますが、このような資格を取得していきながら、プロジェクトを推進していくことが必要だと思います。

 また、Webサービスを利用して簡単にシステム開発を行えるようになりますので、これからは、お客様のさまざまな課題や悩みを理解したうえで、それを乗り越えていくための新しいソリューションを開拓し、システムという形に結実させていくことのできる、深い業務知識に裏打ちされたビジネスを創造できる人材、いわゆるマインド的にもアグレッシブでさまざまなことをコーディネートしていけるビジネスプロデューサーと呼べるような資質を持つ人材が求められてくると思います。

 一つのシステムを構築するには、さまざまな困難があると思いますが、その一つひとつを粘り強く解決して目指すべき姿を実現するという強いウィルを持った人材が、これからのSE像ではないかと思います。

使命感と熱意でルールを変えていく

―ビジネスプロデューサーと呼べる人材になるためのポイントはありますか。

山田 これだけ世の中が複雑になると、業務そのもののプロセスやルールを変えていかなければ、せっかくの可能性の芽をすべて摘んでしまうことになってしまいます。特に日本の企業には、ルールを変えられないさまざまなしがらみがあります
が、それを乗り越えてルールを変えていかなければ、本当の意味での変革は実現しません。ビジネスに対する燃え滾るようなマインドで、障害となるルールを変えていく人材を多くの企業が求めているのです。

 オブジェクト指向の歴史を見てみると、かなり前から今日の姿を予測していたことに気がつきます。しかし当時は、さまざまな制約により、理論のままでした。ところが、今日、当時の制約を乗り越える技術の登場により、かつての理論を現実化することが可能となりました。それだけに、“今までのやり方にしばられない”、“不合理な点があったら本来のあるべき姿に変えていく”というような信念を持ちながらビジネスを推進していくこと、さらには、“世の中をいい方向に変えていく”といった使命感と熱意を持った人材が必要だと思います。

―本日はありがとうございました。

(聞き手:本誌副編集長 菊地勝由)

 

 


Copyright:(C) 2002 BUSINESS COMMUNICATION All Rights Reserved