●NTT 東日本ブロードバンドビジネス部の取組みPart 1●

STB向けブロードバンド映像配信サービスの取組み

■はじめに

　ADSL・FTTHの普及、接続料金の低廉化、CPU性能向上などパソコンでの映像配信サービス利用環境は大幅に改善されています。しかし、映像配信に係わる市場は立ち上がっていません。パソコンユーザを対象としたアンケート調査（スカイライトコンサルティング社が2002年６月に実施したWeb調査）によると、利用者は映像配信サービスに対して、「面白い」「情報が新鮮」等の肯定的イメージの一方、「画面が小さい」「動作が遅い」「設定が複雑」等の否定的なイメージを持つことが示されました。

　2002年７月に都内でオープンしたホテルは、宿泊者向けに新作のハリウッド映画や各種のオリジナルコンテンツ等を客室のTV モニタで手軽に楽しめるVODシステムを開発しサービス提供しています。また、賃貸マンション事業者は、2002年８月から入居者限定で、ハリウッド映画をはじめとするロードショー作品をVODメニューとして提供を始め、10月からサービス地域を拡大しています。

　映像配信サービスは、利用者とコンテンツホルダ、双方が満足することで成立します。非パソコンユーザを含めて考えると、映像配信サービスの市場拡大には、「面白い」「新鮮な」コンテンツを「大画面」でかつ「簡単な設定／操作」で提供することがカギとなります。

　また、コンテンツホルダは、コンテンツの安全性、視聴時の再生品質の確保、確実な課金等が担保できればIP系のストリーミングサービスに対しても優良コンテンツを提供する状況にあります。

■NTT東日本の提案する「セキュア映像配信システム」

　NTT東日本は利用者端末としてSTBを用いたセキュア映像配信システムの開発を進めています（図１参照）。

図1　提案するモデル

　これは、従来のパソコンを利用者端末とするインターネットベースのサービスが、コンテンツホルダは不正コピーを恐れて優良コンテンツを出さない、そのため、利用者は料金を支払う気持ちになれない、さらに、配信事業者は投資を控える、という悪循環に陥っている現状を、STB主体のセキュア映像配信システムにより、コンテンツホルダは安心して優良コンテンツを提供、利用者は多様なコンテンツに満足し、配信事業者は新たな投資を行う、という好循環に変えるものです（図２参照）。


図2 パソコン主体からSTB 主体の映像配信へ

・STB の役割

　利用者は、STBをTVモニタに接続し、簡単なリモコン操作だけでTV 並品質の映像配信サービスを楽しむことができます。STBは、暗号化されたコンテンツをストリーミング受信し、HDなどに蓄積することなくTVモニタに表示します。ハードウェア認証を組み合せることで不正アクセス、不正コピーを防止することができます。

・映像符号化技術

　インターネット向けの低ビットレート映像からハイビジョン品質の映像までをカバー可能な映像符号化技術としてWindows Media 9 とMPEG-4／H.264が注目されています。Windows Media 9 は、Windows Media 8 に比較して最大50％の圧縮性能向上、MPEG-2の1/3の帯域で同等の映像品質、720p／1080i のハイビジョン映像や5.1chオーディオ対応などが実現されています（マイクロソフト社の「Windows Media 9 Series Capa bilities and Benefits Overview」）。しかし、ソフト再生には相応のCPU能力が必要で、マイクロソフト社が提供するエンコード環境の性能や使い勝手が不明な状況にあります。

　MPEG-4／H.264は、ISMA（Internet Streaming Media Alliance）でのMPEG-4 Ver1.0策定に続き、参加メーカによる相互接続性の確認、仕様の拡張が進められており、さらに、年内にITU-TとISO/IECのJoint Video TeamがMPEG-4 Part 10としてH.264を承認する見通しです。しかし、ソフト再生に要するCPU能力やライセンス問題の状況を見極める必要があります。

　当面、セキュア映像配信システムでは、多様な映像コンテンツに対して画質の安定しているMPEG-2 を採用しますが、上記映像符号化技術の動向、デコーダチップの開発状況に注目しつつ、対応可能な映像符号化フォーマットの多様化を検討していきます。