●今私が気になる技術と人材
 NTTコムウェア株式会社
 IT営業本部 第四営業部長
 黒瀬 節夫氏


質的な変革量的な変革に対応できる柔軟性と拡張性をもつことが技術と人材にも求められている

新たな営業プロセスを構築・実行

―はじめに、現在のお仕事についてお話していただけますか。

黒瀬 IT営業本部は一般市場向けに営業する部門で、官公庁、金融、流通製造、通信公益等のお客様を担当する四つの営業部があります。

 私が担当している第四営業部は、コモンキャリア(Common Carrier)と呼ばれる通信事業や公益事業のお客様を担当しています。私どもの営業部では、市場のニーズに応えつつ営業力を強化するため、新たな営業プロセスを構築し、それを実践しています。

―この営業プロセスの内容について説明していただけますか。

黒瀬 これは、営業活動を7つのプロセスに分けて考えたものです。最初のステップがビジネスアセスメントで、お客様の購買意欲を確認します。次のステップは、最も重要な勝つためのシナリオを作るプランニングのステップで、次の5つのステップの行動計画を作成します。このシナリオに従って、私どもがこれまで培ってきた技術、ノウハウ、ビジネスモデルを売りこみ、お客様の立場に立った提案を行います。そして契約、構築へと進んでいくプロセスになっています。

―このプロセスを進めていく上で、気をつけている点はありますか。

黒瀬 これからのビジネスで最も重要なポイントは、「私どもが持っているソリューションや技術と、お客様のビジネスとの整合性を、如何にとっていくのか」という点だと思っています。お客様のニーズに応え、「ハイ、このソリューションでいきます」では、お客様の「ウォンツ」に応えていないからです。私どもの新しい営業プロセスでは、お客様のビジネスをよく分析して、「このソリューションで、こういう価値が生まれます」ということを基本スタンスにしています。

―最も苦心されているのは、どの段階でしょうか。

黒瀬 当初は、勝つためのシナリオを作るステップが最も重要なポイントでしたが、最近では世間並みに、やっと契約のステップの重要性を認識するようになりました。次第にポイントが移行していることは、営業プロセスがうまく回転しているためであると捉えています。

第二の激動は技術主導で始まった

―現在、関心のある技術、製品についてお話していただけますか。

黒瀬 やはり、VoIP (Voice over Internet Protocol)を中心とした技術ですね。電気通信事業における最初の激動期は、NCC(New Common Carrier)が登場した時で、これは官主導のものでした。しかし、現在迎えている第二期の激動期は、技術指導のものと認識しています。この第二期の激動を起こした技術の中核となっているのがVoIPです。

―第二期の激動は、何がきっかけになったのでしょうか。

黒瀬 かつての通信市場は、通信技術の多くの部分を特定の企業が独占していました。そのため、1 つの機能を開発するにも、長い時間と多額の費用を要していました。このような状況は、例えば、ある企業が億単位の費用をかけて機能を開発・構築しても、数日後にはそれをコピーした同じような機能が他の企業で実装されるという、ユーザーの立場からいうと非常に不満の残る状況を招いていました。しかし数年前から、移植性の高いUNIXをOSに、またプログラミング言語としてJavaを使用するこ
とにより、付加価値の高いアプリケーション機能を簡単に組み込むことができるようになりました。その結果、開発の時間は劇的に短縮され、価格も格段に安くなりました。これにより、企業自らが開発した付加価値の高い機能を他社に売ることができるようになり、誰もが通信市場に参入できるようになりました。そして、現在の激動期を迎えたのです。

―VoIPについて、最も注目している部分はどこでしょうか。

黒瀬 コンタクトセンターや企業の内線電話での活用にフォーカスしています。コミュニケーション手段の多様化により、コンタクトセンターには電話・ファックス・Web・e-Mail等に対応できるマルチチャネル化が求められています。さらに企業にとっての顧客価値に基づくコンタクトセンターの進化が要請されています。

 一方、社内の内線電話は、VoIP 網による音声とデータの統合により、大幅なコスト削減を可能にしています。

お客様と商品の両面から進めていく

―次に、人材についてお話していただけますか。

黒瀬 まず営業系では、お客様のビジネスおよびビジネスプロセスの問題を解決するソリューションを提案できる「クライアントスペシャリスト」と呼べるスキルをもつ人材と、お客様の全ビジネスにわたって営業責任をもつ「クライアントエグゼクティブ」と呼べる人材が求められてくるでしょう。また、インダストリーアプリケーションのノウハウでビジネスをドライブする「インダストリーマネージャー」や、VoIPやCRM、ERP等のソリューションでビジネスをドライブする「ソリューションマネージャー」といった人材も必要になってくると思います。私どもの営業部では、インダストリーマネージャーやソリューションマネージャー制のトライアルを行っています。

―技術系で気になる人材は?

黒瀬 技術系では、お客様の問題解決のお手伝いをする技術者として、「プログラマー」と「システムズエンジニア」が良く知られています。ところで「システムの命は柔軟性と拡張性にある」わけでして、それを保証する「アーキテクト」が今後のシステム構築の上で極めて重要な役割を演じると確信しています。ここで言っています柔軟性とはビジネスの質的な変革に対応できることであり、拡張性とは量的な拡大に対応できることです。さらに、重要な役割を担うのは、ビジネスストラテジーとITストラテジーとの整合性をとる「コンサルタント」であると考えています。

―柔軟性と拡張性は、人材に対しても求められていることですが。

黒瀬 サイバーエイジと呼ばれる今日では、技術革新のスピードが極めて速いため、要素技術などの専門分野のスキルを追いかけるには大変なものがあります。そこで要素技術を超越した、「IT用語を使わずに情報システムを語ることができる」ような人材が求められていると言っていいと思います。

―本日はありがとうございました。

(聞き手:本誌副編集長 菊地勝由)

 

 


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