●ブロードバンド時代をリードするネットワークソリューションカンパニーSC ComTex”の全貌
 エスシー・コムテクス
 代表取締役社長
 大澤 善雄氏


INTERVIEW
ベンチャーの技術を確かなものにして、日本で展開
−ASPも含めIPネットワークのトータルソリューション提供に注力−


2001年4月、住友商事情報産業部門の通信ネットワーク関連ビジネスを集約してスタートした「エスシー・コムテクス(SC ComTex)」。グローバル・パートナーシップに加え、独自の「先見性」と「技術力」により、大手通信キャリア、サービスプロバイダー向けから、一般企業、コンシューマーまで、幅広い分野に世界の最新技術を使用したトータルソリューションを提供している。本格的なブロードバンド時代の到来を迎え、ネットワークソリューションカンパニーとして今後どのような舵取りをしていくか、大澤善雄社長に聞いた。

■ブロードバンド通信インフラ整備を集中的に行う会社として設立

―まず、エスシー・コムテクス設立の背景と会社概要からお聞かせください。

大澤 エスシー・コムテクスは、昨年4 月にブロードバンド化の進展に伴う通信インフラ整備に対応したネットワークソリューションを提供する会社として設立されました。設立の背景として、住友商事のグループ企業の中で、ネットワーク、特にブロードバンドのインフラ整備に対応する製品なりソリューションに特化した会社がなかったということがあげられます。例えばIT系のグループ会社として、「住商情報システム」という一部上場会社がありますが、こちらはソフトウェア開発からスタートしたSI事業を主体にしており、特に金融系に強い会社です。さらに「住商エレクトロニクス」という店頭公開企業がありますが、こちらはエンジニアリング業務、オフィス業務のサーバーシステム構築を中心にやっています。ということで、通信インフラ、ネットワークに特化した企業は住友商事グループとしてなかったわけです。

―社名の「エスシー」はSumitomo Corporation(住友商事)の頭文字と聞きましたが。

大澤 技術を売り物にする会社に育てたい、という事から、社名には住友商事の色合いを無くしたいという意見が有ったのですが、一方で、戦略子会社としての位置付けもあり、頭文字を使うという形で期待の大きさを込めました。その際、4つの大きな事業の柱を考えていました。第1の柱は、セキュリティの関係です。3年ぐらい前は2億円程度しかなかったものが、年に倍どころではなく一桁ずつ伸びるような勢いでセキュリティビジネスが育ってきており、不正侵入対策やウィルス対策などセキュリティのビジネスをさらに大幅に伸ばそうということです。第2の柱は、ISDN/ブロードバンドルータがあります。現在、ヤマハのルータを取り扱っています。このビジネスは少し特殊で、製品の企画、販売前の技術検証、広告宣伝やマーケティング、さらには技術サポートも当社が主体的に行っています。メーカーの営業部の機能を当社で担っており、通常の販売代理店的なビジネスと違って、「何年の何月にはこのタイプの製品をいくらで作ってください」とかなり長期にわたるコミットもして、相当リスクを踏んだうえでやっています。

 ヤマハルータを利用してのVPN監視サービスや、ルータの管理ソフト「RT Manager」という当社独自の製品も展開しております。第3の柱はCitrixの“MetaFrame”という世界的に注目されているサーバーベースドコンピューティングを快適に実現するためのソフトウェアを提供しています。売上げも順調に伸びており、日本の代理店の中で、No.1の実績を誇っています。またCitrix社認定の教育センターである、CALC(Citrix Authorized Learning Center)を東京・大阪・福岡にて開校しております。第4の柱は、アメリカの最先端技術を積極的に取り入れ、急成長している、VoIP、WDM等、IPを使った高速のブロードバンド通信機器という新しいビジネスがあります。

 これら4つの柱を統合してスタートしたわけです。

■戦略投資会社PVPとの二人三脚による先端製品の発掘力が最大の強み

―ブロードバンド関連ビジネスを展開するうえで、貴社ならではの強み・特徴は。

大澤 伝統的なメーカが強いわが国のネットワーク機器分野に切り込んでいくには、やはりブロードバンド先進国である米国から、最先端の技術に基づく製品を持ってくる必要があります。このようなことは、どこでも同じように考えますが、住友商事では、自ら米国シリコンバレーでベンチャーに投資するIT分野の戦略投資会社として「プレシディオ・ベンチャー・パートナーズ(PVP)」を1998年8月に設立しました。高い技術力を持つ米国のベンチャーを発掘し、βバージョンの構想だけはできているという段階で投資をし、育成し、日本向けの商権を取るということを始めたわけです。PVP 社は、現在ネットワーク機器を中心にソフトウェア、半導体など58社に100MUS$の投資残があります。米国のベンチャーに投資してIPO や事業売却によって収益を上げることよりも、むしろ日本に紹介されていない最先端の技術を持つベンチャーの製品を輸入したり、投資先の企業が日本に進出する際に合弁会社を作ってビジネスチャンスを広げることが主な狙いです。

―投資を絡めて商権を獲得する。

大澤 当社が行う技術の評価・検証や日本におけるマーケティングはPVPが投資の可否を判断するにあたって重要な材料となっているだけではなく、米国のVC にとっても貴重な情報であり、PVPと共同投資をする動機になっています。

■独自の検証力、NTT-AT社の評価支援でベンチャーの技術を確かなものに

―投資先ベンチャーの技術、製品の評価・検証は非常に難しいと思いますが。

大澤 頭の中だけ、紙の中だけみたいな製品が日本で本当に売れるかどうか。詳細が分からない、ステルスモードの案件に投資していいのかどうか。これを誰が評価するのかというのは、大きな課題です。我々には、次世代の技術を紹介されても本当にそれが日本で売れるのか、マーケッタビリティがあるか、仮に市場性が高いとしても、儲かるようなビジネスモデルになるのかどうか評価が難しいわけです。社内のエンジニアが日夜、次々に持ち込まれる新しい製品の評価・技術検証に取り組んでいますが、さらに新しい技術の先を見るのにプロの眼が欲しかった。そこで、エスシー・コムテクスを設立する際に、NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)に出資をお願いしました。NTT-ATは、NTT研究所の技術をインキュベートする会社ということもあって、沢山のドクターがいらっしゃいます。それからNTT-ATを窓口にNTTの中でいろんな評価をしていただける。これが我々にとって非常に大きな魅力です。通信系の新しい技術がどんどん紹介されてくるのをフィルタリングするのにNTT-ATと組んで、スクリーニングを行っています。それから、NECや住友電工をはじめとする住友グループカンパニーの中でも評価をしていただいています。技術的には優れているものの、日本の市場に適合しないものについては、日本のパートナーとのアライアンスを模索した上で、日本市場に適合するようにカスタマイズしたり、グレードアップするというようなことも行います。このように、いろいろな手をつくし、ベンチャーの技術を確かなものにして、かつ日本市場に最適な形にして提供するようにしています。

―ベンチャーの製品を日本で展開する際に一番留意している点は。

大澤 ベンチャーの製品というのは、はっきり言ってキャリアクラスのお客様からすると「怖くて買えない」ということになりがちですが、それをどうやって解決していくか。まず、エスシー・コムテクスのエンジニアがきっちりしたサポートをする。これが第一です。そのためには、優秀なエンジニアが必要です。会社をスタートさせてから中途採用を重ね、現在は社員の4 割程度が経験豊かなエンジニアです。大手の通信機器ベンダー、SIerから、30才代の優秀なエンジニアが転職してきました。しかし、それに加え、さらにお客様にご満足頂くサービスを展開するために、製品ごとにNTTコムウェアやNTT-AT、旧電電ファミリーなどとのパートナー連携によってメンテナンスやサポートを行う体制を組んでいます。もちろん、コールセンターも設置しており、24時間365日の対応を行っています。日本のお客様、特にキャリアクラスのお客様がベンチャーの製品を導入しやすいように、出来る限りサポートするという方針でビジネス展開しています。


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(こちらは2002年10月号になります)

(この続きの内容)
■設立時の設計図通りではないものの急上昇の成長プロセスを実現
■コンテンツからくるリクエストをインフラビジネスに活かす
■ASPも含め、IPネットワークのトータルソリューション提供に注力
■AIHのA-Boneに関連した海外展開やコールセンターの海外運営も視野に

 

 


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