●特別企画・フレッツサービスの広域化がユーザにもたらすメリット

 西日本電信電話
 取締役・サービス開発部長
 高野 博明氏

地域IP網広域化の意義
−利用者の利便性向上を第一に考えた業務拡大−


昨年11月22日にNTT東西会社が認可申請していた「地域IP網の県間接続によるフレッツサービスの広域化」が、本年2月19日、総務省より正式認可された。これにより、従来都道府県単位で提供されていた各種フレッツサービスが、県をまたがって広域で利用できるようになった。地域IP網の広域化(県間接続)は、音声通信の規制がそのままIP通信の世界にも持ち込まれていたことからの開放、さらには利用者の利便性の向上という面で非常に意義深い。本稿では、改めて地域IP網広域化の意義と、利用者のメリットについて考察してみたい。


■地域IP網の県間通信が認可に

 NTT東日本及び西日本(以下NTT東西会社と記す)が、昨年11月22日に認可申請していた「地域IP 網の県間接続によるフレッツサービスの広域化」が2月19日、総務省より認可された。これをうけてNTT東西会社は翌20日、地域IP網を県単位から両社のサービス提供エリアに広域化(県間接続)するのに伴い、地域IP 網を利用したフレッツサービスの広域メニューの追加と提供条件の変更を実施すると発表した。総務省のホームページで公表された171件のパブリックコメントに象徴されるように、NTT東西会社の県間通信進出を脅威と受け止めるキャリアの反対意見はあったものの圧倒的多数の支持を得て、地域IP網の県間接続によるフレッツサービスの広域化が3月より開始されることとなった。広域化は、NTT東日本では3月4日に首都圏エリア(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)で開始し、平成15年度の早いうちに自社エリア全域に拡大する予定としており、NTT西日本では3月4日に京阪神エリア(大阪府・兵庫県・京都府)から開始し、5月に関西エリア(奈良県・滋賀県・和歌山県)、平成15年度早期に自社エリア全域に順次拡大する予定としている。

 今回の地域IP網の広域化によって、ISPにとってはバックボーン回線への接続ポイントを集約できるようになるほか、フレッツサービスの広域化によって、利用者は県内エリアでのみの通信に限られていた各種フレッツサービスが、他県の拠点とも通信できるようになるなど、多くのメリットをもたらすものと期待されている。

■NTT法改正をうけた活用業務の一環
 使いやすいサービスの提供が第一義


 NTT 東西会社がこうしたサービスを提供できなかったのは、1985年の電電公社民営化と同時に制定された「日本電信電話株式会社等に関する法律」(いわゆるNTT法)の規制による。同法はNTT東西会社の業務を地域通信事業に限定していた。しかし、これは音声通信の規制をそのままIP通信の世界にも適用しているということで、インターネット時代にはそぐわないとして、2001年11月末のNTT法改正によって、「地域電気通信業務等の円滑な遂行及び電気通信事業の公正な競争の確保に支障を及ぼすおそれがないと認めるときは、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社が、地域電気通信業務等を営むために保有する設備若しくは技術又は職員を活用して行う電気通信業務その他の業務(活用業務)を営むことについて、認可をしなければならない」とされた。つまり今回の県間通信が、NTT東西会社の保有する地域IP網を活用して行う“そのほかの業務”に相当するということだ。この点について、NTT西日本の高野博明取締役・サービス開発部長は次のように語っている。

 「世間ではNTT東西会社の県間通信事業進出との見方が多いようですが、私どもとしてはネットワークの利便性を高め、お客様がより使いやすいサービスを提供していくということが第一義だと思っています。もともと広域化というのは、2001年のNTT法改正による活用業務において、設備や技術あるいは社員といったリソース(資源)を上手に使ってユーザの利便性を向上することが目的の一つとうたわれています。今回の広域化は正にこの活用業務の最初の具体的な例であり、我々が持っている資源を世の中に還元するという主目的に合致していると考えています。

■地域IP網の広域化でISP事業者との相互接続形態が多様化

 地域IP網の広域化に伴い、ISPが地域IP網と接続する場合に、NTT東西会社それぞれの提供エリア内で、これまで通り県単位で接続回線を提供する形態だけでなく、図1に示すように接続回線を集約する形態が利用できるようになる。NTT東西会社は、速やかにサービス提供を開始するため、県間伝送路の構築に必要な光ファイバ設備を公募により調達することとしている。インターネット接続の場合、ISPは各県の地域IP 網からインターネットへの接続には自前のネットワークを使うが、複数の都道府県で事業展開している中小のISPは、インターネットにつなぐためだけに自前の広域ネットワークを持つことが負担となってきているケースも多い。そのようなISPにとっては、どこか1カ所の地域IP網と接続するだけでNTT東日本エリア全域、あるいはNTT西日本エリアの全域と接続できることになる。つまり、各県から集める部分はNTT 東西会社の地域IP網に任せることで、多大なメリットを享受できる。


図1 ISP事業者との相互接続形態

 ちなみに月額の県間接続料は、大規模容量クラス(GbE:1Gb/s毎)がポート当たり156万円、中規模容量クラス(FE:100Mb/s毎、ATM:135Mb/s まで毎、DA/HSD:1.5Mb/s、6Mb/s毎)がポート当たり52万円。このほかに、回線管理運営費(1回線当たりNTT東日本が139円、NTT西日本が147円、1請求書当たり125円)が必要となっている。


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