●特別企画・フレッツサービスの広域化がユーザにもたらすメリット

 東急建設
 経営企画室
 広報・システムグループ
 リーダー

 木吉 博志氏
 東急建設
 経営企画室
 情報企画担当課長代理
 寺田 憲治氏

【導入事例:東急建設】
NTT東西の「フレッツ・オフィス ワイド」を活用し全国約500カ所の現場をブロードバンド接続
−ADSLの全国展開でアクセス・コスト1/3に−


■費用対効果が極めて大きいフレッツ・オフィス

 全国約500カ所の建設現場に作業所を構える建設業準大手の東急建設鰍ナは2000年末より、本年7月を目途に、すべての基幹業務システムをホスト系からオープン系に全面移行すると同時に、ブロードバンド環境を実現するネットワーク基盤の構築を行っている。これは、新しい基幹業務システム、サーバーの集約、全社員のパソコンの入れ替え、ネットワークの高速化など、情報通信環境を全面的に見直し、ブロードバンドによる情報流通・共有を図ることにより、社内・社外業務の効率化と取引先企業との連携強化を図ろうというものだ。

 同社では、本支店間の基幹系ネットワークの広帯域化に続いて、現場作業所を結ぶ支線系ネットワークに関し、従量制料金により増え続ける通信コストの削減とブロードバンド化を両立させるため、昨年8月、「フレッツ・オフィス」を導入。首都圏エリア(東京・神奈川・千葉・埼玉)の現場作業所を「フレッツ・オフィス」+「フレッツ・ADSL」によりネットワーク化することを開始し、昨年11月末には約260拠点を結んでいる。

 「フレッツ・オフィス」を導入した理由として、経営企画室の木吉博志広報・システムグループリーダーと、寺田憲治情報企画担当課長代理は、それぞれ次のように語っている。

 「最大の理由は投資対効果です。『フレッツ・ADSL』をアクセス回線とした定額制料金の『フレッツ・オフィス』によって、高速化が図れしかもコストが削減されることから、比較検討の余地はありませんでした。1拠点当たり25千円/月、年間260拠点で7,800万円のコスト削減効果は絶大です。

 「コストメリットに加え、接続の容易さという点もあげられます。私どもの現場の作業所は全国に約500カ所あります。その大半は工期が1年未満で、毎日どこかの作業所が開設・閉設されています。そのため、迅速にネットワーク接続できることは、必要条件です。

 その点、アクセスサービスが『フレッツ・ADSL』の場合、電話回線を引くだけで利用できるので、本社−現場作業所を結ぶネットワークに最適です。」

■フレッツサービスの広域化で「フレッツ・ADSL」の全国展開が可能に

 しかし、県域のサービスである「フレッツ・オフィス」は、各都道府県単位に基幹網と相互接続する必要があり、そのための設備やハウジングの費用が必要になる。このため、各都道府県に一定数以上の拠点がなければ、コストメリットが見込めず、全国津々浦々約500カ所の現場作業所すべてを同じような通信環境にすることは難しいという課題があった。

 この課題が、フレッツサービスの広域化によって一挙に解決された。「『フレッツ・ADSL 』の導入によって各拠点は、表1に示すように、概算で約1/3、年間1億3,152万円のコスト削減効果があると試算していましたので、本当に認可が下りるのを心待ちしていました。とにかく、勤怠管理や申請系はすべてWeb化されるので作業所でのデータ入力が増え、またCAD データや図面・工事進捗状況のデジカメ画像のやりとりなどが今後ますます増加します。新しい基幹業務システムを効果あるものとするためにも、ブロードバンド環境は必須になります。仮に認可が下りなかった場合、認可前の『フレッツ・オフィス』による全国展開も考えていました。認可後の新メニュー『フレッツ・オフィス ワイド』の導入は、関西エリアに関しても、NTT東日本様を窓口に、NTT西日本様とスムーズに連携して、進めていただいております。」(前出 木吉博志氏)同社では、NTT東日本とNTT西日本のフレッツのIP-VPNサービス「フレッツ・オフィス ワイド」を活用、一部県域では「フレッツ・オフィス」との併用という冗長構成でトラフィックを分散しつつ、「フレッツ・ADSL」をアクセスサービスとしたネットワークの全国展開を図っていく。本年6月までには、全国の現場作業所の約9割が、ブロードバンド化される予定だ。


表1 各拠点のADSL化によるコスト削減効果(概算)

 新サービスに関しては、「現場作業所は、通信にとって劣悪な環境の所が多々あり、なおかつADSL回線には減衰という問題がありますので、すべての作業所を同じようなブロードバンド環境にすることは現状では困難です。NTTさんには、速度品質の向上・維持技術の開発により、全国どこでも100%ADSL回線が使えるようにしていただけるよう期待しています。」(前出 寺田憲治課長代理)としている。

■業界注目の先駆的ブロードバンド情報流通システムも稼働

 現場作業所までのブロードバンド化に加え、同社では建設業界が注目する先駆的な情報流通システムが稼動している。その一つが、NTT東日本が提供する「OCI (Open Construction Information Sharing)ネットワークシステム」による「購買見積システム」だ。本システムは、協力会社を対象にした利用者限定の電子調達システムで、2001年9月より本格運用を開始している。最大の特長は、高精細な図面や写真を高速にやりとりできる点だ。これにより、これまで協力会社の担当者が東急建設に出向いて図面や工程表を取得していたのに比べ、発注業者の選定業務と工事見積業務の大幅な省力化・効率化が実現できる。協力会社にとっては、建設現場や周辺状況の写真も取得できるので、精細な積算が行えるというメリットもある。このため、本システムへ参加する協力会社の数も急増し、実際の調達件数もかなりの数に上っている。本年2月末現在で、協力会社500社が参加し、月間約7万〜8万アクセス、月間25,000〜30,000枚の図面がダウンロードされているという。「OCIネットワークシステム」は、購買/見積機能、図面管理機能、写真管理機能、文書管理機能を備え、本社・支店・現場作業所・協力会社間でブロードバンドによる情報の流通と共有を実現する建設業務向け情報流通ソリューションだ。同社では、昨年10月から、「OCIネットワークシステム」上で、工事物件の進行管理を行う「施行管理システム」の実証・実験も開始している。


図1 OCIネットワークシステムの画面イメージ

 建設業界は、ブロードバンド化が遅れていると言われる。それは、入れ替わり続ける多数の現場作業所を抱えるという点が大きな要因と思われる。ハード・ソフト、アプリケーションの進化に加え、高速通信環境があって初めて活きるブロードバンド。その意味で、全国の現場作業所への高速通信環境を安価に実現するフレッツサービスの広域化は、東急建設のみならず、建設業界に多大なメリットをもたらすものといえる。

 

 


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