●今私が気になる技術と人材
 株式会社NTT データ
 人事部長
 和田 賢太郎氏


先見性と洞察力をもちながら
ポータルなスキルを身につけて、
真のプロフェッショナルをめざしてほしい

事業の選択と集中を推進し柔軟に対応していく

―はじめに、現在のお仕事についてお話していただけますか。

和田 人事部長として、人事に関するすべての仕事と人材開発を担当しています。

 分社当時は人事と人材開発は分かれていたのですが、この二つは車の両輪のような関係ですので、どちらが無くても困ります。そこで、3年程前に人事部に統合し一体的に運営することになりました。

―この人材開発の内容について説明していただけますか。

和田 NTTデータの主要業務であるシステム開発(SI)という仕事は、まさに人が付加価値を創造している仕事ですので、「システムづくりは人づくりから」というキーワードで、人材(本当は「材」ではなく「財」)育成の重要性について、社内を啓蒙しています。つまり、システムを構築するためには、まず人材を育成しないといけないということです。今後、私たちのビジネスは、人のパフォーマンスをいかに向上させていくかが非常に重要になってきます。そしてパフォーマンスを向上させるためには、各自の努力が第一ですが、会社としても、適切に支援していくべきだと思います。その結果、本人が成長し、会社の業績も向上して、両者がWin-Winの関係になることができるのです。この関係をつくり、維持していくことが人材開発の仕事であり、そのトリガーとなるのが人事だと思います。この点が人事・人材が車の両輪である所以ですね。

 また、SIという仕事は、技術だけあれば良いというのではなく、製造業や金融業などの業務ノウハウをかなり必要とします。業務ノウハウは短期間で身につくものではなく、ある程度の経験が必要ですので、ベテランの方は自分がこれまで培ってきた業務ノウハウを活かして仕事を行い、技術ノウハウは若手が担当するといったように、若手とベテランがそれぞれの持ち味を活かして共存できるような人材の活用策も大切です。

オープンソース・セキュリティ・プロジェクト管理技術に注目

―現在注目している技術についてお話していただけますか。

和田 今一番気になっている技術はLinuxやオープンDB等のオープンソースです。情報システムの手助けなしでは会社や国の運営も成り立たないという状況の中で、基盤となるシステムの中身がブラックボックスでは、お客様も不安を感じてしまいます。当社の前身であるNTT では、自社開発のハードに独自のOSを搭載した純国産のコンピュータ「DIPS(Dendenkousya Information Processing System)」をもっていました。すべて自社製のコンピュータですので、何か問題が生じた場合でも、すべてがわかっているので、すぐに対処できました。オープンソースならば、ソースコードが公開されているので、自分たちでそのシステムの改良や再構築が行え、DIPSと同様に何か問題が生じた場合でも、適切な対
処を迅速に行うことができ、お客様に安心してシステムをご利用いただけると考えます。

 2番目に気になる技術として、セキュリティがあげられます。社会は今後ユビキタス時代に向かっていき、ますますコンピュータが身近な存在になりますが、そうなればなるほど、セキュリティの重要度が増していきます。eコマースを例にとれば、世界中のどこからでも時間と空間を超えて買物ができるので非常に便利ですが、同時にインターネット犯罪等に巻き込まれるという危険とも背中合わせだということを忘れてはいけません。誰もがコンピュータを使う環境になってくるからこそ、セキュリティが非常に重要なポイントになるのです。

―NTTデータのコアコンピタンスに関連して、注目されている技術等はありますか。

和田 一番重要なのは、プロジェクト管理技術です。SIはプロジェクトを完遂させることが仕事なのですが、プロジェクトは人が行うものなので、暗黙知の世界です。ですからその技術を形式知化して教えることが非常に難しいので、徒弟制度のような中でしか育成ができていません。

 もちろん研修は行っているのですが、研修の場で教えられることは全体の1割くらいで、残りの9割はOJT(On The Job Training)の中でしか教えられないのです。先輩の技術を見て盗み、自分のプロジェクト管理のやり方をつくり上げていかなければならないのです。ここで大切なのは、先輩の技術を盗んでも良いが、同じことを行っても駄目であるということです。つまり「守・破・離」により自分のプロジェクト管理技術をつくり上げることがポイントだと思います。

先見性や洞察力を持ち、未来を先取りできる人材が必要

―次に人材についてお話していただけますか。

和田 NTTデータでは「Insight for the New Paradigm〜未来のしくみを、ITでつくる。」というコミュニケーション・ワードを掲げ、未来を先取りするシステムづくりをめざしています。未来のしくみをつくるには、現在だけを見ていては駄目です。コンピュータの世界はものすごく進歩が速いので、今日の技術を使っていては1年も経つと陳腐化してしまいます。5 年後、7年後を見通した技術を用いてシステムつくらなければ、お客様に満足していただくことはできないでしょう。最新の技術はまだ枯れてない技術ですから、いろいろな問題を内在していることが多く、これらの問題を予測して、プロジェクトを進めるこが必要です。さらに、技術だけでなく、お客様のビジネス状況の変化等も想定し、先見性や洞察力をもって、さまざまな面から未来を先取りすることが大切です。ですから常に世の中の動きを見て技術を勉強し、自分の中で未来の仮説を立て、お客様に提案し、納得してもらえるような人材が求められてくると思います。

―現在、話題になっている人材の流動化についてはいかがですか。

和田 最近は終身雇用や就社という観念が薄れ、人材の流動化が話題になっていますが、せっかく当社に勤めたのであれば、ポータルなスキルを身につけた、真のプロッフェショナルになってほしいと思います。当社の中だけで内弁慶になっていては、お客様は認めてくれません。ある分野に関しては「右に出る者はいない」といわれるくらいの人材になることが必要です。そして、外部でも充分通用するような人材になっても、やはり「NTTデータで働きたいと」思わせるような会社でありたいと思います。そうなった時に、お客様から見ても社員から見ても、当社が本当の魅力ある会社になったということになると思います。私と人事部のみんなの目標は、それに一歩でも近づけていくことです。

―本日はありがとうございました。

(聞き手:本誌副編集長 菊地勝由)

 

 


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