●NTTデータのCRMビジネス戦略と最先端ソリューションへの取組み

 劾TT データ
 ビジネス開発事業本部
 CRM/コンタクトセンタ
 ビジネスユニット長
 吉川 明夫氏

顧客知経営の実現をコンセプトに
CRM/コンタクトセンタビジネスを展開


 多様化、高度化しながら拡大を続けるCRM市場。そのような状況下、NTTデータではCRMの導入検討段階から運用まで、顧客企業と一体となってCRMを成功させる取組みを行い、数多くの実績を上げている。また、CRM導入に際しての具体的なソリューションとして、名寄せ、業務モデリングなどの独自技術を開発するとともに、CRMの多様化、高度化、適用領域の拡大に向けたビジネスを積極的に展開している。ここでは、本特集の総論として、NTTデータのCRM/コンタクトセンタビジネス戦略を紹介する。

■CRMが注目される背景


 企業を取り巻く環境は大きく変化し、これを5つのCから見てみると、

・Customer(顧客)多様化するニーズ、興味の分散、需要のブーム化
・Context(社会)規制緩和、競争激化、経済低迷、技術革新
・Company(企業)人材の流動化、企業の合従連衡、構造改革
・Competitor(競合)異業種との競合、果てしなき価格競争、商品の短命化
・Collaborator(協業)垂直統合、異業種連携、別会社化


が起きている。いずれも企業に従来の延長ではない対応を求めており、これに柔軟に反応し、厳しい競争に打ち勝つためには、カスタマー・ドリブン型(顧客中心型)の経営手法に変革することが必要とされている。

 すなわち、顧客一人ひとりの嗜好や属性などに基づいて、「顧客」を「個客」として捉え、個客と長期間にわたる緊密な関係を維持し、変化する個客から選ばれ続ける企業への構造改革を図るというものだ。そのための経営手法がCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)である。CRMは、個客を理解し、個客に合った商品、サービス、情報を提供することによって、個客との良好な関係を継続し、長期にわたる収益向上を図ることが最大の目的だ。換言すれば、CRMとはITを活用して、変化する顧客ニーズの継続的な把握とそれに合わせた商品・サービスの開発・提供形態をマネジメントし続けることによって企業が顧客と長期間わたって緊密な関係を持続し、顧客満足度向上と企業収益向上の両立を図る手法といえる。

 CRMの考え方そのものは古くから実施されていた。その端的な例が常連客との間で日常的に交わしていた御用聞きのスタイルである。ITの進展によりこのような顧客中心型の企業経営を実現するためのCRMをシステムとして実現する技術基盤が整ったことから、1990年代後半より急速に普及し始めたといえる。

 特に、インターネットの進展に伴い、顧客は様々な情報に接する機会が多くなり、従来のように企業側からすべての顧客層を対象に画一的な情報を一方向で発信しても、顧客に受け取ってもらえない状況が生まれてきた。マス・アプローチが効かないと言われている現象である。このような従来の方法では売上増や収益率向上につながらないことが多くなっている。さらに一方で顧客は、企業が提供するサービスの品質や対応方法を評価し、それをネットを通じて瞬時に情報発信できるようになってきた。その情報が、他の顧客の行動に大きな影響を与え、商品あるいは企業そのものが、選択される時代になってきている。これに伴うコーポレート・ガバナンス(企業統治)の確立やコンプライアンス(法令遵守)体制の整備・強化も含め、急速に「顧客中心」「顧客主導」の企業経営への移行が始まっている。これが、CRMが注目されるようになった背景といえる。

■CRM導入を成功させるポイント

 CRMの重要性や有効性を認識し、CRMに取り組む企業が増加している。また、このようなニーズに合わせて、市場には様々なCRMのツールやパッケージが提供されている。しかし一方で、CRMを導入してみたものの、なかなか期待したような効果が得られないといった不満や、CRMの概念や一般論は理解できるものの、自社で導入した場合の具体的な方法論やROI(Return on Investment:投資利益率)がみえてこないといった声が多いのも事実である。CRM導入に失敗した主な要因として、以下の2点が考えられる。

@具体的な達成目標を含め、導入目的を十分に検討せずに、CRMのツールやパッケージを導入するだけで効果があがると考えてしまう。
ACRMは、ビジネスプロセスの変革と一体で導入しなければならないにもかかわらず、既存システムとの統合も含め、十分な検討を行わずに導入してしまう。


 CRMを成功させるポイントとして、NTTデータのビジネス開発事業本部CRM/コンタクトセンタの吉川明夫BU(ビジネスユニット)長は次のように語っている。

 「まず、CRMの導入目的を新規顧客の獲得にあるのか、優良顧客化やリテンション(解約防止)活動にあるのかなど明確にしたうえで、業務プロセスの分析を行い目的達成のためにどのような業務プロセスの変革が必要かを検討します。CRMの導入は、段階的に行うことが望ましく、まずスモールスタートで成功事例を構築してから段階的に全社に広げていくというのが効果的です。そしてCRMを実践し、成功させるための重要なポイントは、CRMのクローズドループ、すなわちCRMのPDCA(Plan・Do・Check・Action)サイクルをスパイラルに循環させながら各々の精度を高めていくことです。顧客戦略を策定し、施策を実施し、その実施結果を的確に分析・評価し、次の顧客戦略に反映させるというCRMのPDCAサイクルの循環には、フロントシステムからバックエンドシステムまでのシームレスなデータ統合と業務統合が不可欠になります。」

 つまり、CRMはシステムを導入すれば成功するというものではない。顧客中心の観点に立って、顧客価値を最大にするためのビジネスプロセスの変革とそれを支える情報システムの整備について、企業全体の組織活動を包含した戦略に基づいて行うことが極めて重要であるといえる。

■顧客知経営の実現に向けたNTTデータのCRM関連ビジネス

 当初、コールセンタの強化による顧客対応業務の効率化からスタートしたCRMは、図1に示すように、顧客接点(コミュニケーションチャネル)を電話・FAX中心からモバイルやEメールやWebサイトに拡大してチャネル間統合を図ったeCRMへと進化してきた。さらに最近では、コンタクトセンタやSFAといったフロント系システムと、分析などのバックエンド系システム、さらにはSCM(サプライチェーン・マネジメント)やERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)などの基幹系システムとをシームレスに横断するような業務統合とデータ統合を行い、前述したCRMのPDCAサイクルを効率よく循環させるプロセス間統合が重要視されてきている。特にバックエンド系に関しては、フロント系で収集した情報をもとに、DWH(データウェアハウス)やODS(オペレーショナル・データ・ストアー)を活用した顧客分析とマーケティング・オートメーション(MA)を行うアナリティカルCRMの高度化が要求されている。


図1 CRMの現状と動向

 NTTデータでは、今後さらに経営資源としてCRMの活用がより重要になると捉えており、「顧客をよく理解することにより得られた知識により、経営資源を全体最適化し、ROI向上とコーポレートガバナンスの確立やコンプライアンスの実現を目指す“CRMを中心とした顧客知経営”の実現が不可欠であると考えています。そして、ソリューション層から、業務プロセス層、知識層、戦略層まで、一貫して顧客知による経営全体をサポートすることが重要です。」(前出 吉川明夫BU長)つまり、従来の人・物・金に加え、CRMの活用によって得られるお客様からの知見(ニーズ、声)が重要な経営資源となり、それを戦略的に有効活用することが企業発展のカギになるということだ。

 このような顧客知経営のコアとなるCRMは、まさに次世代のCRMといえる。次世代CRMの実現には、図2に示すような戦略的な情報システムの構築が不可欠であり、そのためには単なるSIだけではないビジネスコンサルやITコンサル、AP開発、保守運用、教育、アウトソーシング等多くの周辺サービスを含め幅広いサービスの提供が重要である。


図2 CRM実現に必要な情報システムとNTTデータの事業モデル

 NTTデータでは、CRMを中心にKM(ナレッジマネジメント)、ERP、SCM等の基幹系情報システムまで含めた企業の情報システム全体を戦略的にビジネス展開している。特に顧客接点からバック系システムまで一貫してCRMのビジネスを展開しているのがCRM/コンタクトセンタビジネスユニットだ。同組織は、コンタクトセンタビジネス担当、CRMソリューション担当、CRMビジネス担当から構成されている。コンタクトセンタビジネス担当は、コンタクトセンタビジネスに関する戦略立案、企画・開発・営業を行っている。

 CRMソリューション担当は、CRM/コンタクトセンタ構築に関する業務分析・設計・開発といったSI業務に加え、市場で販売されている様々なCRM/コンタクトセンタに関するパッケージの中から、いかに最適なものを活用してソリューション展開するかといった戦略立案も行っている。CRMビジネス担当は、CRMビジネスに関する戦略立案、企画・開発を行っている。基本的には分析、コンサルティングが中心であるが、新規事業関係や子会社との連携関係も担当している。

 CRM関連ビジネスの展開にあたってのNTTデータの最大の強みであり特長は、これまで多くの企業を対象にCRMの導入を手がけ、成功させた実績にある。特にテレコム、金融業界では、豊富な実績を誇っており、業界固有の様々な運用ノウハウを蓄積し、それをメソッドとして提供している。また、このような長年の実績に加え、提案・企画段階からベストオブブリードによるCRMソリューションの導入、さらには運用・保守、教育まで、ワンストップでカバーしている点も大きな強みといえる。

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