●ユビキタス環境の実現を目指した高機能オールIPビル−NTT DATA品川ビル
 劾TTデータ 取締役
 ビジネス開発事業本部
 副事業本部長
 高草 英博氏

【インタビュー】
IT×(建築+電力)を強みに、
ビルのトータルソリューションを提供


去る6月20日、品川駅・東口にユビキタス環境の実現を目指した高機能オールIPビルが竣工した。このNTT DATA品川ビル(愛称:アレア品川)は、IPによる統合ビルネットワークを基幹とした次世代ビル管理システムやセキュリティシステムなど先進の情報通信インフラを装備。同時に省電力装置などを配備し、地球環境にも配慮した次世代のオフィスビルである。ビル建設の経緯から今後のビジネス展開までを高草英博取締役・ビジネス開発事業本部副事業本部長に聞いた。

■品川駅東口・NTT街区の玄関口に
 NTT DATA品川ビルが竣工


―去る6月20日、NTT DATA品川ビルが完成しましたが、そもそもの建設の経緯からお聞かせください。

高草 平成9年の秋頃にこの土地を売り出すという話があり、当時、それまでの人生の内で一番考えたというくらい熟考し、土地を購入しました。理由は、まず隣地がNTTグループの共有地(持株53%、NTTデータ47%の割合で所有)であるということです。品川駅東口再開発地区のB-3エリアにあたるこの土地を取得することで1つのNTT街区として一体的活用で有効に使えるという点に加え、1街区全部を押さえることにより全体の資産価値が大幅に向上します。また、再開発は品川駅東口を副都心化しようというものであるし、新幹線の品川駅も開業が予定されている非常に魅力的な土地であるということで、平成10年4月に購入しました。区画整備事業が終わるまでの3年間で基本計画や設計、環境アセスメントなどを行い、13年4月に着工して約27カ月の工期で15年6月20日に竣工しました。


写真1 NTT DATA品川ビルの外観

―ビル建設の目的は?

高草 都内の複数箇所のビルに分散しているNTTデータのソフトウェア開発部隊を1カ所に集約し、オフィスコストを削減すると同時に、生産性向上を実現することが大きな目的です。特に、品川には先ほど言ったようにNTT品川TWINSとアネックスビルがあります。TWINSのデータ棟はコンピュータビルで、お客様のシステムを数多く収容し、多様なサービスを提供しています。そういうシステムの開発部隊や運用部隊をこのビルに集約すれば、非常に作業効率も向上するという意味での生産性、あるいは駆付け時間の短縮化による品質向上という効果も認められるということがビル建設の狙いです。それもあって、新しいビルと従来のNTT品川TWINSとアネックスビルの間を自由に行き来できるように、雨に濡れないような通路を設けています。今まで、NTTデータはコンピュータビルだけは所有していましたが、コンピュータビルとオフィスビルをセットにして、現場の生産性だとか品質を向上するという取組みは今回が初めてです。

■ITを駆使した次世代のオフィスビル

―先進の情報通信インフラの整備に加えて、地球環境にも配慮した高機能オールIPビルということですが、建設のコンセプトと主な特徴をお聞かせください。

高草 簡単にいいますと、@環境に配慮したビル、A最新のIT技術を使ったオールIPビルの構築、B柔軟性や拡張性を持たせたビルというのが主要コンセプトです。具体的な内容は別稿で紹介すると思いますが、いくつか他にはない特徴があります。まず、22階から27階の6フロアをデータセンタ互換フロアにしています。床荷重1トン/u、データセンタとして使えるしオフィスとしても使える構造に最初から設計しています。また3〜5階には、日本で2番目に国際コンファレンスセンター協会(IACC)の認定を受けた「東京コンファレンスセンター品川」を開設しました。

 次に環境対応という点では、外断熱やペアガラスなどを用いた空調負荷の軽減、さらに省エネ機能もある自動電圧調整装置の「エコリスタTM」といったNTTデータの独自の技術(特許出願済)に基づいた商品や、「EcoVistaTM(エコビスタ)」と称する最先端のエネルギー管理システムを導入しています。また、再開発地区の各エリアを結ぶ地下車路の排気ガス対策として、排気ガスを吸い込んで、特殊なバクテリアをたくさん入れた土の中に吹き付けることでNOXやSOXを浄化するシステムも導入しています(写真2参照)。さらに他にない取組みとして、赤・緑・青のLEDを用いた複数のカラー照明装置による環境演出も行っています(写真3参照)。

   
写真2 バクテリアを使って
    排気ガスを浄化
  写真3 LEDを使用したカラーライト21照明システムに
    よる環境演出

―統合LAN、LONWORKS(R)技術を核にした次世代ビル管理システムをはじめ、貴社のIT技術・ソリューションが積極的に採用されている。

高草 駒場の研修センターでは、照明や空調などビルの建築設備の部分をLONWORKSによりIT化しましたが、今回はオールIPビルの建設ということで、IPWORKSをコンセプトに、LONWORKSを一歩進化させた次世代ビル管理システム「e3BISIONTM(イーキューブビジョン)」を導入。そして、制御系から業務系、映像監視、IP電話等ビル内すべての通信設備を一つのIPネットワークに統合しています。もちろん、全館IP 電話を導入していますし、セキュリティ面では非接触ICカードを用いた入退室管理システムやIPカメラによる監視システムを導入しています。

■IT×(建築+電力)という特長・強みを活かしビジネスを展開

―アレア品川は、貴社のFMビジネスを展開するうえで格好のモデル、フラッグシップになりますね。

高草 正にそうですね。その意味でこのビル全体をショールームにしたいという思いはありますね。FM(ファシリティマネジメント)ビジネスを展開するうえで、ITに強く、しかも建築及び電力の優れたノウハウを持っている。つまりIT×(建築+電力)という私どもの特長・強みの象徴的な実績がこのアレア品川といえます。

―先ほどのIT技術・ソリューションの外販も含め、今後のビジネスの抱負をお聞かせください。

高草 先ほど述べたIT×(建築+電力)という強みを活かし、IPをベースにしたビルのトータルソリューションを提供していくことが重要であると考えています。そのほうがお客様にとってもビルの付加価値が上がるし、トータルコストも抑えられます。また、来たるべきユビキタス時代に柔軟に対応できるビルインフラが作れます。ビジネス戦略的には、部分的ではなく、ビルのトータルソリューションを提供する。社内の体制も、LONWORKSの部門やネットワーク部門、環境部門など各部門が連携してビジネス展開していく。ネットワーク専門の営業でもLONWORKSの提案も行い、省エネの提案もするといったように、営業も相互に連携して、トータルで提案していくことが必要だと思っています。

―本日はありがとうございました。

(聞き手:本誌編集長 河西義人)

 

 


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