特集
●NTT東日本


 NTT東日本のブロードバンド(BB)ビジネス市場開拓の尖兵として、BBビジネスモデルのインキュベート(孵化)から事業化までを積極的に展開している法人営業本部のブロードバンドビジネス部。インフラ整備とブロードバンドアクセスの普及拡大で、これまで開拓し温めてきた卵が続々と孵化し始め、巣立ちの時期を迎えたという最近の状況について、ブロードバンドビジネス部の清水博部長に聞いた。

インフラ整備とサービスの普及拡大で、離陸し始めたブロードバンドビジネス

東日本電信電話株式会社 理事
法人営業本部ブロードバンドビジネス部長
清水 博氏
―はじめに、ブロードバンドを取り巻く現在の市場環境をどのように捉えていますでしょうか。

清水 この1年で、光回線(FTTH)やADSLが技術革新や市場の急速な成長により値下がりし、日本は世界一安価に利用できる高速インフラ基盤が確立されつつあります。国内のブロードバンド通信の加入件数も、今年5月末時点で1千万を突破し、2年前に比べ約十倍と急速に普及が拡大し、全世帯数の3割近くに達しています。これにより、インフラとしてのブロードバンドというものが、一般の方々の目に見えるようになってきました。NTT は、光回線(FTTH)を中心としたフルラインアップでのインターネットアクセスサービスを展開し、積極的にブロードバンド需要の掘り起こしを図っています。NTT東日本の「フレッツ・ADSL」や「Bフレッツ」の加入者も順調に増加しています。インフラが整備されてきたことで、中小企業や一般消費者向けのマーケットも見えてきましたし、ビジネスとして離陸し始めたと捉えています。

コンテンツ流通ビジネス拡大のためのインキュベーション活動を積極展開

― B B ビジネス市場拡大に向けたNTT東日本の尖兵としての貴事業部の最大のミッション及びビジネス戦略は何かをお聞かせください。

清水 ブロードバンド(BB)をキーワードに、新しいビジネスモデルをインキュベートしていくことをミッションとしています。要するに、BBビジネスの卵を発見し、あるいは生み出し、それが元気に育つように温めて孵化させることが私たちの使命であり、ブロードバンドの便利さ、快適さが、直接、実感できる、そうしたサービスの形を生み出していくのが、私たちBBビジネス部です。
 具体的には、NTT及びNTTグループの研究成果、並びに世界最先端の技術などをもとにブロードバンド環境上で展開されるビジネスのアイデアを発掘し、市場調査を行い、関連技術を開発し、トライアルの実施・検証などを経てプロジェクトを事業化します。BBビジネスの黎明期を抜けつつある現在、BBビジネス部では、『BBコンテンツサービスの流通』に注力し、次世代検索エンジンから著作権管理までの「プラットフォーム構築」、映像配信、アプリケーションストリーミングなどの「コンテンツ配信」、ビジネス支援アプリケーションからアカウント・アグリケーションなど幅広いサービスを提供しています。
 BBコンテンツサービスを流通させるには、実に様々な企業がかかわり合います。また、様々な分野のサービスがあります。BBビジネス部では、これら業界の垣根を越え、各社と協業することで新しいビジネスモデルをインキュベートし、BBコンテンツ流通ビジネスを促進しています。

DRM、IPv6、MPEG2 同報ストリーム配信など新技術の実証実験を積極展開

―BB ビジネスを展開するうえで強みとなる、貴社がこれまで培ってこられた技術やサービス基盤の概要をお聞かせください。

清水 BBビジネス部では、著作権保護技術、IPv6、次世代ストリーミング配信、大容量配信サービスなど、最新技術を活用した実用化、利用実験に積極的に取り組んでいます。DRMとも呼ばれる著作権保護技術を用いてコンテンツを安全に配信できるようになれば、ストリーミング配信だけでなく、ダウンロード配信やCD-ROM等のメディアによる配布など、コンテンツ流通が様々な形式で促進されていくと考えられています。BBビジネス部では、著作権保護技術を利用し、B2B、B2E、B2Cへの配信という複数の配信モデルを実現するコンテンツ配信プラットフォームを開発しました。
 また、IPv4はもちろん次世代ネットワークプロトコルIPv6にも対応したP2P技術を活用した高品質映像配信への取り組みも行い、B2B向けMPEG2同報ストリーム配信のトライアルなども行っています。

「光」ならではの特性を、「GAME onフレッツ」のトライアル提供で検証

―新しいビジネスモデルやビジネススキームの開拓で最近注力されている取組みとして、どのようなものがあるのでしょうか。

清水 2003年6月、NTT東日本及びNTT西日本は、(財)韓国ゲーム産業開発院と、日本国内でフレッツ・ユーザーを対象に韓国オンラインゲームのトライアル提供を実施することで合意し、「GAME onフレッツ」として9月25日からトライアルを開始いたしました。約1年間に渡り、ロールプレイングゲームなど多彩なジャンルの韓国オンラインゲーム約10タイトルを無料で提供し、有力なBBコンテンツとして期待されるオンラインゲームについて、日本市場でのビジネス性などを検証します。今回のトライアルの目的は、フレッツでしか遊べないゲームを提供することによるプロモーション効果だけでなく、わが国のオンラインゲームの潜在市場を活性化させ、地域IP網の特徴を生かした新たなビジネスモデルを開拓し、またゲームにおける「光」ならではの特性を検証するところにあります。

出始めたインキュベーションの成果、数年後、数千億の事業規模を目指す

―最後に、ビジョンも含め、今後の抱負をお聞かせください。

清水 BBビジネス部では、NTT東日本グループ一体となって、グループのトータルパワーを最大限に発揮するとともに、様々な方向に向けて事業を推進しています。これまでのインキュベーションの成果として、NTTビズリンクの「BizLink マネージドLANサービス」や、NTTブロードバンドプラットフォームのシームレスなユビキタスBB サービス「無線LAN倶楽部」、NTT-XのASPサービス「ビジネスgoo」、NTT東日本が開発したアカウント・アグリゲーションソフト「InfoBond」を用いた、ぷららネットワークスのASPサービス「あぐりっぱ」など、既にグループ企業で事業化され、拡張段階に入ったBBビジネスがあります。今後、インキュベーションスピードを加速するとともに、NTT東日本のグループパワーを結集することによって、数年後には現在より一桁多い、数千億円の事業規模を目指しています。
 一方2002年11月、NTTグループは5年先の光による本格的なブロードバンド&ユビキタス時代を展望するとともに、グループ全体として目指す新ビジョン「光ブロードバンドでレゾナントコミュニケーションへ」を策定しました。NTT東日本としては、目前のリアルのBBビジネスに注力すると同時に、レゾナントコミュニケーション環境の実現に向け、光によるブロードバンドを積極的に推進していきたいと思います。インターネットでホームページを見る、TVでデジタルコンテンツを見る、ブロードバンドを使っていろいろなコミュニケーションをする、そういったことがごく当たり前のようになる時代が一日も早くくるようにすることが、私たちの仕事だと思っています。そのためにも、いろいろな分野で仕事をされている方、また利用者の方々とも一緒になって知恵を出し、クリエイティブなビジネスモデルを実現していきたいと思っています。

―本日は有り難うございました。

(聞き手・構成:編集長 河西義人)




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