(株)NTTデータ ビジネス開発事業本部
副事業本部長(決済グループ)
山田英司氏
 

 インターネットの急速な普及・拡大に伴い、BtoB、BtoCを問わず決済の仕組みが大きく進化する中、新規参入プレイヤーも含め決済ビジネスの競争が一段と激化している。このような市場環境のなかで、ANSER、CAFISという日本を代表する決済プラットフォームを持つNTTデータは、高付加価値サービスの提供に向け新たなビジネススキームの開拓を含む様々な取組みを推進している。そこで、ビジネス開発事業本部で決済グループを統括する山田英司副事業本部長に最近の状況を聞いた。

■“決済”というものが、
日常生活に密接不可分に

―はじめに、最近のトレンドを含め、決済ビジネスを取り巻く市場環境をどのように捉えていますか。

山田 市場環境そのものは、従来と同様に競争が非常に激しく、新規プレイヤーが次々と参入してくる分野であるというのは変わりがないと思います。インターネットの普及・拡大によって、エレクトロニックコマースが日常生活に完全に浸透してきていますし、いろんな形で決済を行うようなシーンが数多くでてきました。このため、多彩な決済ソリューションが、身近なものとして浸透し始めているというトレンドは変わりがありません。最近の新しい動向でいいますと、例えばVISAインターナショナルが中心となって進めている、携帯電話の赤外線通信機能を使用した新しいクレジットの決済スキームや、つい先日もソニーとNTTドコモがFeliCa(フェリカ)ICチップを搭載した携帯電話による新しいサービスを提供する合弁会社を設立するといったニュースにもみられるように、携帯電話を使用した新たな決済サービスといった動きが活発化するものと思われます。ますます“決済”というものが日常生活に密接不可分となっていくようなトレンドが続いています。

■マーケットの動きに迅速かつ柔軟に対応するためグループ制を採用



―そのような状況の中、決済ビジネス事業部から決済ビジネスグループへと組織を再編されましたが、その狙いは

山田 ビジネス開発事業本部の下部組織である事業部をなくし、事業本部長に各BU(ビジネスユニット)が直結する形にしましたが、配下の20以上もあるBU間の連携をより円滑に促進することを目的として、関連のあるBUをいくつかのグループに括るグループ制を採用したわけです。私が主管する従来の決済ビジネス事業部には、5つのBUがありました。これに、新たにクレジットリースBU、トータルビリングBUを加え、7つのBUからなる決済グループとして再編しました。マーケットの動きに迅速かつ柔軟に対応するために、よりフラットな組織にしたというのが、組織再編の狙いです。

■小額決済のための新しい決済スキームの開拓に注力

―先ほどの携帯電話を使った決済スキームなど、新しいトレンドに対応した決済ソリューションの開拓も含め、様々な取組を行っていると思いますが、最近特に注力されている分野は。

山田 これは、携帯電話を利用した決済スキームもそうですが、いわゆる小額決済の流れを、なんとか上手くビジネスに乗せていきたいということで、現在様々な検討を行っています。クレジットカードや、電子マネー的なものを活用することで実現されていくと思いますが、小額決済が注目される大きな要因として、決済の手数料をいかに安価に設定するかという点があげられます。インターネットでいろいろなものが売買されるようになっても、小額商品の場合、決済手数料が高いとそれが阻害要因となってブレイクしないということになります。したがって、小額決済のための新たなソリューションが求められています。最近は、電子マネーをはじめ、いろいろな小額決済スキームがでてきていますが、私どもでもより簡易な、しかもより既存の決済ソリューションを上手く活用したような新たな切り口を模索しています。すでに、いくつかの試みを行っており、なんとか形のあるものにしていきたいと思っています。これが、私どもにとっての当面の課題です。

■サービスシーンにフィットする多彩な決済ソリューションの提供に注力

―小額決済以外に注力されている分野は。

山田 その他、インターネットバンキング関連のソリューションと、エレクトロニックコマース用のゲートウェイサービスにも注力しています。

―EC用のゲートウェイサービスとは。

山田 要するに、インターネット決済のアウトソーシングサービスです。ネットショップを対象にクレジットカード決済処理サービスを提供する事業者に対して、必要なシステム・運用を総合的に提供するサービスで、「CAFIS BlueGate」の名称でこの7月より提供しています。いずれにしましても、決済というのは単独でビジネスが成立するものではありません。何かのサービスと組み合わさって初めて価値のあるものです。したがって、様々なサービスシーンごとに、それぞれジャストフィットする決済ソリューションを、どんどん提供していきたいと思います。

―クレジットカードのIC カード化への対応は。

山田 それについては、私どもはいち早く取り組んでおり、INFOX(クレジット決済処理端末)のICカード対応や、IC カードの認証についてもCAFISの中に認証機能を組み込むなど、対応は万全です。

■中長期的なトレンドを想い描き、先駆的な決済サービスの提供を指向

―最後に、決済ビジネスを展開するうえでの貴社の強みと、今後の抱負をお聞かせください。

山田 NTTデータは非常に幅広いサービスを提供していますし、CAFIS、ANSERというわが国の代表的な決済プラットフォームを持っています。これには、ほとんど日本全国のあらゆる業態の金融機関や様々な企業が繋がっています。この決済プラットフォームを持っていることが、他社にはない私どもの最大の強みです。この強みを最大限生かしつつ、いろいろな金融機関やクレジットカード会社、事業会社などとアライアンスを組みながら、常に一歩先んずる形でより利用者にとって利便性の高い、高付加価値ソリューションを含めた新たな決済サービスを提供していきたいと考えています。
 また現在は、各BUが独自のソリューションを追求していくということで、ある意味専門特化した形でビジネスを展開しています。しかし、今後は単に一つのBUにとどまらず、いろいろなBUのソリューションを組み合わせた複合的なソリューション展開が求められると考えています。中長期的なトレンドを想い描いて、そこに向けて一歩先取りするようなサービスを、R&D的な形でもよいので提供していくことを指向していきたいと思っています。

―本日は有り難うございました。


(聞き手・構成:編集長 河西義人)

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