●ネットワーク社会を変えるIPv6の世界

<横河電機>
各種普及活動で得た技術とノウハウを製品・サービスに導入
わが国のIPv6に貢献してきた横河電機の取組み


■わが国におけるIPv6普及促進の牽引役として業界をリード

 将来のインターネットアドレスの不足見込みや、2005年までにIPv6インターネット環境の実現を目標としている政府の“e-Japan戦略”などを背景に、「インターネット・プロトコル・バージョン6(IPv6)」の普及が進んでいる。IPv6は、膨大なアドレス空間と拡張性をもつことから、今後はコンピュータをはじめ、電話や自動車、家電製品など、さまざまなエレクトロニクス機器がインターネットに接続されるものとみられている。現在、世界各国で接続サービスの実施やIPv6対応機器の開発・実用化が進められており、移動体通信機器の標準プロトコルへの採用や、ルータなどの通信機器へのIP実装を推奨する動きが活発化している。わが国では、すでにIPv6の商用サービスを開始する事業者も多数登場し、企業、大学なども積極的にIPv6 に対応した通信技術や機器の開発に取り組んでおり、IPv6の先進国となっている。このように、各国でIPv6の普及に向けた取組みが進んでいるが、本格展開による高度情報社会を実現するには、IPv6網のインフラ整備と、その特徴を生かしたアプリケーションや各種機器等の開発と2つのレイヤーが必要である。

 この双方についてプロダクト、サービスを提供しているのが横河電気である。

 横河電機は、IPv6の標準化や対応ソフトウェアの開発をリードしてきた「WIDE(ワイド)プロジェクト」に1992年に参画し、IPv6の普及促進にいち早く取り組んできた。WIDEプロジェクトは、わが国のインターネット関連技術の先端的な研究開発と、その実証運用を行うことを目的に、慶應義塾大学の村井純教授をリーダーとして1988年にスタートした産学協同プロジェクトで、大学や国立研究機関、企業の研究所などから多くの研究者が参加している。同プロジェクトは、IPv6の開発、標準化に貢献し、また実際に電子機器を接続してIPv6ネットワークを提供する通信ソフトウェアを開発、実証し、ソースコードの公開をするなど、積極的にIPv6の普及促進に取り組んでいる。また1998年には、IPv6対応の通信ソフトウェアの開発を目的に「KAME(カメ)プロジェクト」(http://www.kame.net/)を発足。さらに同年、KAMEプロジェクトで開発された技術等の評価・検証を行う「TAHI(タイ)プロジェクト」(http://www.tahi.org/)を発足し、参加した企業や大学等が研究を進めた結果、1999年に同ソフトウェアの参照コードが完成した。横河電機は、WIDEプロジェクトへの参加後、KAMEプロジェクトでは、IPsecを担当し、TAHIプロジェクトでは、同プロジェクトの中心メンバーとして、IPv6 仕様適合性検証・評価システムを開発。IPv6対応のソフトウェアの評価・検証を行うなど、IPv6の普及促進をリードしながら、その取組みで得た技術、ノウハウを、同社のIPv6機器やアプリケーション、サービスの開発に反映させている。

 さらに2000年9月には、潟純Cドリサーチとの合弁会社「インターネットノード梶vを設立した。同社は、IPv6の特徴を活用したアプリケーションの企画・開発、事業化を行うことをミッションとしており、現在は、特にnon-PCを用いた各種サービスを開発している企業に対して、プロトタイプ製作、コンサルテーションなどのサービスの提供を行っている。

■IPv4とIPv6をシームレスにつなぐIPv6/IPv4トランスレータ「TTB」

 IPv6の移行は徐々に進んでいるが、現在のIPv4ネットワークが今すぐにIPv6ネットワークへと置き換わることはあり得ない。当面は、IPv4ネットワークの資源を活用しながら段階的にIPv6へと移行していく。この移行期に対応するため、2001 年1月に、IPv6/IPv4トランスレータ(プロトコル変換装置)「TTB1000シリーズ」をリリースした。同製品は、IPv6ネットワーク側のクライアントからIPv4ネットワーク側のサーバーにアクセスする機能を搭載した業界初のトランスレータである。そして2002年7月、情報通信キャリアやISP、SIer等の本格的なニーズに応えた上位機種「TTB3000シリーズ」をリリースした。業界初のIPv6/IPv4トランスレータとして登場したTTB1000シリーズは、ネットワークの主幹であるサーバーがIPv4の時期、つまりIPv6の導入期に必要な製品だったが、一方TTB3000シリーズは、IPv4とIPv6のシステムが混在する過渡期全般にわたり両システム資産の有効利用を可能にする製品である。プラグインタイプなので、面倒なアプリケーションやサーバーの設定が不要。TTB1000シリーズと組み合わせてTTB3000シリーズを複数台使用することで、負荷分散やシステム拡張を簡単に行うことができる。さらに、DNSプロキシ機能が同製品を監視し、障害の起きた同製品へのアクセスを回避するなど、システム運用の信頼性を確保している。


図1 TTBとTTBの基本構成例

■IPv6対応機器をネイティブで管理する「LMaT-AR」


 IPv6の普及とともに、ネットワークを構成する機器の管理ツールも当然、必要になってくる。IPv6はIPv4に比べ家電や自動車などその利用範囲が格段に広がることが予想されることから、IPv4の管理ツールの代用では機能的に限界がある。IPv6の高度な機能を監視・制御するためには、IPv6をネイティブ(仲介装置等を利用せずIPv6パケットで直接監視・管理すること)で管理できるツールが必要である。

 横河電機の汎用ネットワークツール「LMaT」は、1988年に国産初の総合ネットワーク管理ソフトウェアとして発売して以来、多くの企業、研究機関等で採用されている。そのノウハウと、IPv6の普及活動に積極的に関わってきた技術を活かして、横河電機は2002年7月にIPv6をネイティブで管理する機能を搭載した「LMaT-AR」をリリースした。LMaT-AR は、IPv6をネイティブで管理できる汎用の管理ツールとしては、世界初の製品である。また、IPv6だけでなく、IPv4機器で構成されたネットワークと、IPv6とIPv4機器が混在したネットワークの管理も可能である。また、IPv6の普及に伴い、従来の対象範囲からNon-PC機器を含めた対象範囲へと拡大していくことから、管理ツールには新たな管理機能や管理手法が求められてくるが、このLMaT-AR は、オブジェクト指向言語を用いた共通インタフェースを持たせることで、容易な機能の追加や拡充を実現している。さらに、操作機能、管理機能、通信機能といった機能ごとにモジュール化したことで、ネットワークの最適な管理ポイントごとに必要な機能だけを実装できるので、小規模から大規模まで、さまざまなシステムを最適なコストで構築することができる。


図2 LMaT-ARの構成例
上:集中管理システム、
下:分散型システム


■IPv6時代に向けたnon-PCサーバー「マイクロノード」

 IPv6の実装を容易にし、新たなアプリケーションと新たな市場をつくるためには、IPv6の機能を組み込んだ超小型コントローラが必要である。横河電機は、KAMEやTAHIなどの各種IPv6普及活動に取り組んできたが、ここで得たノウハウを
もとに、IPv6の特徴を活かすアプリケーションや管理システムとともに、機器の企画・開発を展開。このIPv6機能を搭載した機器を「マイクロノード」と呼んでいる。

 マイクロノードとは、目的化されたnon-PCサーバーで、インターネットを通じて新しいサービスを実現するために、それぞれのアプリケーションに最適な機能を提供することをミッションとしている。このマイクロノードが初めて人々の前に登場したのが、2001年6月に開催された「Networld+Interrop 2001 Tokyo」である。温度測定が可能なセンサー内蔵マイクロノードコンセプトモデル「HotNodeTM」(写真1参照)を、IPv6で運用されるShowNet に100台規模で接続するというデモンストレーションを実施。独自に自身の温度履歴を残すとともに内蔵Webサーバーで公開するという高機能性を発揮し、現在も多くの引き合いがある。また2002年には、汎用マイクロノード「Real Space6(RS6)」を研究開発用途に限定数リリースした。


写真1 HotNode

 このRS6は、IPv6とIPv4に対応できるデュアルスタック構成により、さまざまな環境での対応を実現している(図3参照)。各種機器とインターネットとをつなぎ、ネットワークからの要求に対してさまざまな処理を行うなど、ユーザーのプログラム開発を強力にサポートすることから、多くの問い合わせが殺到し、リリース後間もなく完売した。


図3 RealSpace6の構成例

 これまでのアプリケーションは、PCを接続することを前提に考えていたため、生活との整合がうまくとれない部分が多くあった。しかし、このマイクロノードの登場により、その環境が変わろうとしている。マイクロノードは、PCのように操作者を必要とせずに、アプリケーションに必要な情報を自動的に信号変換し、ネットワークを通じて伝達することができる。つまり、マイクロノードの所有者は、サービスを受けるためにPCの操作を学習したり、ネットワークへの接続を指示したりする必要がないのである。マイクロノードは、PCが直接入出力できなかった情報も扱うことができ、PC操作者が常駐できない場所からも常時データを発信することができるなど、サービス提供者はこれまで実現できなかった新しいサービスを実現できるようになる。

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(こちらは2003年2月号になります)

(この続きの内容)
■マイクロノードが拓く新たな生活とビジネス

 

 


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