●テクノロジー・リーダーを目指す新生日本HPのビジネス戦略
 日本ヒューレット・
 パッカード
 代表取締役社長
 高柳 肇氏


INTERVIEW】
豊富なビジネス・ポートフォリオで
最適なソリューションを提供
テクノロジー・リーダーとして市場を牽引する

世紀の合併といわれたヒューレット・パッカード(HP)とコンパックの合併が成立し、日本においても2002年11月に新生日本HPが誕生した。IT市場にIBMと並び称される巨大な企業が出現したわけだが、その新生日本HPが目指すものは何か。舵取りを担う高柳社長に戦略を聞いた。

■プラットフォーム・プロバイダーNo.1が当面の目標


――まず、新生日本HPが目指す企業像から教えてください。

高柳 私たちは、このIT市場の中でテクノロジー・リーダーになると高らかに宣言して合併しました。私たちが目指すのは、あくまでテクノロジーを中心としたソリューション・プロバイダーです。お客様に最適なソリューションとサービスを提供するためには、まず優れたハードウェア・プラットフォームを提供する必要があると考えているからです。これまでの歴史を見ても、優れたテクノロジーが優れたソリューションを生みだし、また新たなビジネスモデルを作り上げてきました。特に日本のマーケットにおいて私どもがソリューション・プロバイダーとしてトップに立つには、優れたテクノロジーに裏付けされたハードウェア・ベンダーとしての確固たる地位が必要なのです。そのため、最新のテクノロジーを持つプラットフォーム・プロバイダーとしてNo.1になるという目標を掲げたわけです。

――そのプラットフォームの優位性とは。

高柳 新生日本HPはUNIXサーバでもIAサーバでも、そしてストレージでも日本で最強のマシンを持ちます。さらにはPC からNonStopサーバまでを含めても、プラットフォームでは最強のビジネス・ポートフォリオを持つわけで、こうしたプロダクトをお使いいただくお客様に向けてサービスを提供していこうと考えています。また、次世代アーキテクチャについても、HPとコンパックが統合することでItaniumに代表されるIA-64アーキテクチャをディファクト・スタンダードにし、その市場でもHPが主導権を握れると確信しています。

■新生HPの支柱となる4つのビジネスユニット

――HPは4つのビジネスユニットを持つとお聞きしていますが。

高柳 新生HPはサーバ、PC、サービス、プリンタという4つのビジネスユニットで構成します。そして、それぞれのビジネスユニットでNo.1の製品を備えています。たとえばサーバ分野ではIAサーバ、UNIXサーバそれぞれで市場の30%以上のシェアを持ち、圧倒的なマーケット・リーダーの地位を確保しています。また、PC、プリンタでも世界トップクラスの製品を提供しています。こうした製品力とともに、サービス分野では優れた人材を抱負に抱えています。実は、新生HPの中ではサービス部門のスタッフが一番多いのです。ワールドワイドでは全社員14万人のうち6万5,000人、日本では6,000人のうち4,000人がサービス部門に所属しています。テクノロジー・リーダーだからサービスには力を入れないということではまったくなくて、サービス分野でも製品とサービスを上手く組み合わせたマネージド・サービスなど、テクノロジー・リーダーにふさわしいサービスを提供していこうと考えているわけです。

――HPとコンパックの合併によってIT市場においてはIBMに対抗するジャイアンツがもうひとつ誕生したことになるわけですが、それによってお客様にはどのようなメリットが提供できると考えてよいのでしょうか。

高柳 まず言えることは、このIT市場においてチェック&バランスが生まれるということでしょう。どのような産業分野でも、1 社独占的な市場は決してお客様にとってよいものではありません。これからHPとIBMが切磋琢磨し、お互いに技術研鑽し、そしてコスト/パフォーマンスに優れた製品を提供するということがお客様にとって一番望ましいわけです。またそれが、業界の発展にとっても一番よいことではないでしょうか。

 しかし、だからといってHPとIBMだけで世界で100兆円といわれるこのIT市場を左右することはできません。これからもシリコンバレーからはいろいろ新しい会社が出てくると思いますし、またすでにソリューションをベンダーがプラットフォームといっしょに提供するという時代ではなくなっていますね。そこで私たちもアプリケーション・ベンダーやSIerなども含めて、パートナーの方々といかに協調して最適なソリューションを提供するかを最大のテーマと考えています。私たちは合併によって豊富なビジネス・ポートフォリオを手に入れましたが、しかしERPやSCMなど個別のソリューションを自分たちで提供しようとは考えていません。こうした分野ではそれぞれすでにリーディング・カンパニーが存在しており、私たちは世界中のソリューションやソフトウエア製品の中から優れたものを選んで、これをシステムとして販売して行こうと考えています。

 このように、いろいろなベンダーとアライアンスを組むためには私たち自身がオープンでなければなりません。オープンでなければ、さまざまな企業とのアライアンスやパートナーシップでビジネスを広げていくことはできません。

■営業拠点の再編により日本市場が単独でターゲットに選ばれる

――新生HPの中では、日本がひとつの地域(リージョン)として、いわば格上げされたと伺っています。これは日本市場重視政策の現れですか。

高柳 合併と同時に世界のHPの営業拠点が変わりました。これまではHPは世界市場を米国、ヨーロッパ、アジアの3地域に分け、日本はアジアの一部のカントリーという位置づけでした。しかし、合併とともに、世界の地域割りは、米国、ヨーロッパ、アジア、そして日本と4つに再編されました。日本を単独で米国、ヨーロッパに並ぶ、ひとつの重要な市場と位置づけたわけです。これはHPの中で日本が重要な地域をして認識されたことと同時に、私たちにとっては日本独自のお客様の要求に的確に応える体制を整えることができるということを意味しています。日本のお客様は特に品質に対して厳しい、そして高度な要求があります。新生HP の新しい体制によって、こうした厳しい要求にでもさらに応えることが可能となりました。

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(こちらは2003年2月号になります)

(この続きの内容)
■それぞれの企業文化が集結し新しい企業文化を創る

 

 


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