●NTTデータの金融サービス向けビジネス戦略
 劾TT データ 取締役
 金融システム事業本部長
 金融ビジネス事業本部長
 小南 俊一氏


INTERVIEW】
真のお客様情報に基づき、コストの削減と経営の高度化/差異化を実現

金融市場を取り巻く環境は極めて厳しく、金融機関の情報システム化ニーズは、多様化、高度化へと加速している。本特集では、激動する金融市場に対して新たな視点からビジネスを展開しようとしているNTTデータの金融サービス向けビジネス戦略について、事業本部長である小南俊一取締役にお話を伺い、最新のソリューションと各種サービス、製品等について紹介する。

■金融業界における二つのトレンド


――はじめに、現在の金融業界の動向についてお聞かせください。

小南 先端的IP サービス領域での開発機能をより一層強化するため、2002年5月に、新しいR&D組織として先端IPアーキテクチャセンタを設置しました。NTTコミュニケーションズの技術戦略は、将来指向と全体思考の2 つがキーです。つまり、将来を見据え、ネットワークや設備、サービス等をトータルに考える。これを我々はアーキテクチャと称しています。このような視点で、最先端の技術力と開発力を維持し、NTTグループのR&Dや世界中のパートナーと連携を取りながら、新たなIPサービスを創出することが主なミッションです(図1)。背景には、“インターネット”が質的大転換期を迎えていることがあげられます。ご存じのように、インターネットは、そのオープン性、自由な拡張性により爆発的に普及しました。一方で、生活基盤への浸透に伴い、信頼性・安全性への不安も増大しているし、多くのマスユーザにとっては、未だ生活必需品の域には達していません。


図1 金融分野の今後の事業展開に向けた取組み事例

――これら二つのトレンドの背景について、もう少し具体的に教えていただけますか。

小南 金融業界を経営環境、制度といったカテゴリーにわけて分析しますと次のようになります。

 まず経営環境については、効率化重視の取組み、いわゆる「本業回帰」へと向かっています。多くの金融機関が本来の業務を核とした体制へと回帰しているのです。また、BIS(国際決済銀行)規制に基づいた「資産の圧縮」への動きも活発化しています。

 次に制度的なものを見てみますと、「リスク/収益管理」が非常に重要視されてきています。この背景には、自己資本比率の保持や自己責任に基づく銀行経営が強く求められるようになった点があげられます。また、国際会計基準による、減損会計、時価会計、連結会計といった流れがあり、一方では、間接金融から直接金融への流れもあります。さら
に、「製販分離」という流れも発生しています。これは、製造チャネルと販売チャネルとが独自の展開によって流通を行うというもので、このような流れは、業界/業態間の垣根が低くなってきたことから生じてきたものでしょう。

■お客様と同じ目線で、問題解決に取り組み、お客様のニーズを捉える

――コストの削減、経営の高度化/差異化といった大きな流れを踏まえて、NTTデータのビジネス戦略についてお話していただけますか。

小南 当社は金融分野のシステムインテグレータとして、金融業界全体の動向やお客様が抱えている経営課題を深く理解すべく、各金融機関の経営者の方々と同じ目線で問題の解決に取り組んでいくことをコンセプトとして、ビジネスを展開しています。

 目の前のお客様に対しては、コストの削減が第一の重点ポイントです。また、その先にあるエンドユーザに対しては、多様化するニーズに対応した戦略が必要です。そのためには、エンドユーザのマインドをよく理解するため、企業および個人に対して真の情報収集を展開していきます。そしてこれを我々のお客様である金融機関に対してフィードバックしていきます。例えばこれまでの金融機関の商品は、金融機関のニーズを重視してきたところがありますが、これからはエンドユーザのニーズを吸い上げた商品づくりが重要です。

――コストの削減に対しては、どのような戦略をお考えですか。

小南 金融機関に対しては、第一にコスト削減を実現するビジネスモデルを提案・提供していくことです。その一つが「共同化」。いわゆるアウトソーシングの推進です。NTTデータは、これまで「地銀共同センター」をはじめとしたアウトソーシング/共同化への取組みについて、高い実績をもっています。これからも、この実績をもとに、本業回帰という流れを踏まえながら、各金融機関の戦略目標を全面的に支援しながらコスト削減と効果を高めて参ります。その施策としては、ビジネスプロセスの計画・構築・運用管理のアウトソーシングを実現するBPO(Business Process Outsourcing)の展開や、統合ATMネットワーク等に見られる共同化があげられます。
 この結果としてコスト低減につながり、それがひいてはエンドユーザへの貢献につながります。

――経営の高度化/差異化に対しては、どのような戦略をお考えですか。

小南 我々の取組みとしては、ITをコアとした差異化によって、高度化を図っていくことになります。何をもって高度化かといいますと、まずリスク管理があげられます。例えば、リスク管理等のASPモデルを構築し、経営の高度化・差異化を図っていく。また、資産の圧縮も高度化の一つです。我々の取組みとしては、証券化ビジネスを推進していきます。

――現在金融業界を取り巻く環境が大きく変化していますが、この点についてのお考えはございますか。

小南 そうですね、まず技術面での環境の変化があげられます。インターネットやブロードバンド、そしてモバイルの普及によって、チャネルおよびコンテンツが益々多様化してきました。この流れはさらに加速していくでしょう。

 金融業界としては、業界/業態間の垣根が崩壊し、業界の枠を超えた商品及びサービスの流通が活発になると思います。そして、決済の即時化(STP、DVP)の推進や、現物管理から電子化へと流れが推移していくでしょう。

――業界/業態間の垣根の崩壊に対しては、どのような戦略をお考えですか。

小南 規制緩和や垣根崩壊、技術革新の流れに対応した業界内外を結ぶ社会・経済インフラの提供を展開していきます。例えば、「保険会社共同ゲートウェイ」のような取組みをさらに推進していきたいですね。

 さらに、我々が長年にわたり蓄積してきた金融分野のシステムインテグレータとしてのノウハウを一般事業会社にも展開していくことも考えています。「次世代CMS」などはその代表的な取組みです。

――パートナー企業や他事業本部との連携についてはどうでしょうか。

小南 ビジネスというものは、切り口が異なることでさまざまなモデルが生まれてきます。例えば、ANSERやCAFISといった社会インフラとも呼べる決済ネットワークに関わるビジネスを担当しているビジネス開発事業本部との連携により、さらに多彩なビジネスモデルを提供できると思います。またBPOについては、コンサルティング会社等の運用管理面でのノウハウをもつ企業とパートナーを組んで取組むことも検討しています。

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(こちらは2003年2月号になります)

(この続きの内容)
■明快なWill(意思)を発信していく

 

 


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