●今私が気になる技術と人材
 東日本電信電話株式会社
 理事 設備部長
 矢澤 久司氏


日々進化する技術と変化する市場に対して
センシティブに取組み解決していく人材を
今、求めています。

新技術にチャレンジしていきたい

―はじめに、現在のお仕事についてお話していただけますか。

矢澤 私が所属している設備部では、 新技術・新方式の実用化、仕様化提案、導入支援および設備の効率化と経済化といった設備構築に関する基本方針。請負工事関連等のエンジニアリング業務。中長期、単年度の設備投資計画および各支店の設備工事計画策定の支援と調整を担当しています。また最近では、以上の業務と並行して、NTT東日本が提供しているフレッツサービス、メトロイーサ等の各種IP系のサービスの実現・拡充におけるネットワークを中心とした技術検討、方式策定等も担当しています。NTT東日本の事業は、ある面でいうと設備産業になりますので、我々設備部は、すべての事業、部門に関わるかたちで、その一端を担っていることになります。

―現在の業務の中で、どのような技術について関心がありますか。

矢澤 現在の私の立場から見ますと、個別の技術はすべて要素技術ですので、関心のあるものは“すべて”ということになってしまいます。その中でもポイントをあげますと、現在は「質」「量」ともに変革が激しい時代ですので、オペレーションを含めた柔軟性と拡張性のある技術、それは「品質」とも言い換えられますが、これらについては、何でも“食べてみる”という感じです。

―“食べてみる”とは、どのような意味ですか。

矢澤 ここでいう“食べてみる”とは、言葉はよくありませんが、つまり“よく勉強してみる”ということです。興味のある技術については、どんどん学び、チャレンジしていきたいですね。

―お客様に対しての技術では、何か関心のあるものはありますか。

矢澤 やはり、お客様の多様なニーズを容易に実用化できる技術や方式について興味があります。現在、世の中に出ている技術や商品、アプリケーションといったものは、どちらかと若年層向けのところがありますが、これからは、少子高齢化の時代に向けて幅広い年齢層に対応した技術、製品が必要になるでしょう。これらの技術、製品に求められるのは、利用者側からいうと“使い勝手の良さ”、提供者側からいうと“手離れの良さ”です。

要求条件を満たした技術が不足

―ネットワークおよびサービスに関連した技術の中で、何か関心のあるものはありますか。

矢澤 やはりキャリアの要求に合致した技術、製品に注目しています。現在利用されているデファクト技術には、素晴らしいものがたくさんありますが、その多くがプライベートネットワークから発展してきたものですので、まだまだキャリアからの
要求条件に対して、仕様や信頼度が充分でない部分があります。現在は、「良かろう」「高かろう」では通じない時代です。品質、信頼性、価格など、さまざまな面でチューニングしていく必要があります。この点については、我々NTTグループだけでなく、欧米の先進国のキャリアも同様に悩んでいる部分だと思います。

―悩んでいる部分について、具体的に例をあげて、お話していただけますか。

矢澤 一つが「既存サービスの継続維持技術」です。例えば、電話網や専用線などの既存のサービスを、最新のIP技術を使用してどのように提供していくのか。今NTT東日本が提供しているすべてのサービスをIP技術をベースとしたものに置き換えることができるのか。この点については、技術というよりも、さまざまな世代の方々の知恵をお借りして検討していかなければならない問題ですが、技術面での可能性は常に考えていかなければならないことだと思います。

 また将来的にお客様は、VoIPをはじめとした複数のIPネットワークを横断的に利用されることが予想できますので、その場合のサービスマネージメントをどのようにして行うのか。このようなニーズに対応した技術、製品については、是非“食べてみたい”と思っています。

アクセス系のアーキテクチャーが大きく変わる

―先日、NTTの新たなビジョンが発表されましたが、この点についてはどうでしょうか。

矢澤 サービスの利用形態が多様化しつつある今、アクセス系のネットワークアーキテクチャーが大きく変わろうとしています。先日発表したNTT の「“光”新世代ビジョン」に寄与していくためには、「光アクセス系の技術およびネットワーク」について、将来を見据えた検討が必要と考えています。

―本格展開を迎えたブロードバンドについてはどうでしょうか。

矢澤 サービスオペレーション技術を含めた、「IPおよびブロードバンド時代のニーズに対応できるネットワーク技術」については、ビジネス面での技術革新が必要だと思います。ブロードバンドとは、単に「帯域が広い」というものではありません。その技術は日々進化しているものですし、ビジネスの可能性は、非常に変化しています。さらに、技術の革新とともに、技術の陳腐化、高度化というもののスピードに対してどのようなネットワークを構築して受け止めてくのか。期待とともにさ
まざまな課題をもつブロードバンドという中で、どのような技術を使用してビジネスモデルに柔軟に対応できるネットワークを構築するのか、サービスを提供するのか。それはとても興味深いものだと思います。

センシティブな人材が必要

―最後に、現在、関心のある人材について、お話していただけますか。

矢澤 市場のニーズにセンシティブ(繊細)な人材が求められると思います。お客様が抱えている問題について、市場が抱えている問題について、これらを解決するソリューション能力をもった人材が今後不可欠になるでしょう。今の我々の現場の社員にも、このような資質を求めています。それは、技術系、営業系、事務系といったことに関係なくすべての分野
に対して共通のニーズだと思います。

 また、日進月歩の技術革新に対して、十分に目利きできる技術者が必要です。一つひとつの技術は素晴らしいものですが、それらを如何に選び、組み合わせていくのか。このような課題はいつになっても変わらないものなのかもしれません。私自身もこの点についてさらに勉強していかないといけないと思っています。

―本日はありがとうございました。

(聞き手:本誌副編集長 菊地勝由)

 

 


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