●NTTデータの行政分野への新たな取組み
 劾TT データ
 公共ビジネス事業本部
 電子政府推進部長
 奥山 喜信氏

第2章】
NTTデータの次世代電子政府コンセプト
“Collaborative Government”


■2003年度までの電子政府


 これまで、政府は「電子情報を紙情報と同等に扱う電子政府」を実現するという目標に向けて、行政の電子化、電子政府の構築を行ってきた。 その成果はいくつかの問題を抱えつつも、着実に現れてきている(図1参照)。2003年度までに行われる主な施策として、次の6つがあげられる。


図1 電子政府に向けた取組みの状況

・行政情報の電子的提供
・行政手続の電子化
−申請・届出等手続の電子化
−ワンストップサービスの実現
・歳入・歳出の電子化
・政府調達の電子化
・行政内部事務のペーパーレス化
・地方公共団体の取組みの支援
−共通基盤等の環境整備


 これらは、ITの持つ特性のひとつである「機能代替」を利用した流れに基づいたもので、紙情報と同等に電子情報を扱い、時間的または空間的な制約を部分的ではあるが克服するというものである。

 しかしITには、「ソリューションツールとしての側面」に加え、「社会変化の起爆剤」となる部分もある。これまでのIT化では、既存文書を電子化するなど、現状の財産を電子的に利用できるようにする特性が注目されていた。しかし今後はITをソリューションツールとして活用することを通じて新たな社会変化を促進するといった部分にも先見性を持って取り組んでいく必要があると感じている(図2参照)。


図2 ITの特性と革新力

 また、日本の高度情報通信ネットワーク社会実現に向けたIT化はこれまでインフラの整備が中心とされていた。その結果、インフラ面では取組み前に比べてはるかに充実することになったが、利用者の視点に立った利便性の高い行政サービスの実現までは十分に取り組めていないのが現状と言えよう。

 インフラの整備という第1ステージが終わりつつある今、次の第2ステージを睨んでの電子政府構築のあり方のビジョンが求められている。

■ITによる社会構造の変化

 ひとくちにIT化、というが、具体的には、「デジタル化」「ネットワーク化」「モバイル化(ユビキタス化)」といったものがあげられる。

 そして、このITの浸透は、社会構造に大きな変化をもたらしている。この変化のことを、NTTデータは「パーフェクト・マーケット」「パーフェクト・コミュニティ」「パーフェクト・バリュー」と名付けた。

 パーフェクト・マーケットは、情報不均衡からの解放を意味している。サプライヤーとコンシューマーの情報不均衡がなくなることで、商品の比較検討やきめ細かなサービスが可能となり、より完全な市場に近づき、フェアな条件下での効率的な市場が実現される。

 パーフェクト・コミュニティは、時空間制約からの解放を意味している。インターネットに接続することで、どんな小さなコミュニティでも社会に大きく関与することができるようになり、また、インターネットのリアルタイム性を活かして、入手した情報を即座に利用することができるようになる。

 最後のパーフェクト・バリューは、共通価値観重視からの解放を意味している。ネットワークを介することで、地域を越えたメガトレンドが生み出される可能性も、ニッチなビジネスが成功する可能性も大きくなり、どんな価値観も受け入れられる懐の深い市場が生まれる。

 この3つのパーフェクトの背景について、劾TTデータ公共ビジネス事業本部電子政府推進部長の奥山喜信氏は次のように語っている。「ITの浸透により変化した社会において、行政も変化しなければなりません。従来の行政における政府と市民の関係は、政府から市民に向けての単方向の情報発信が中心でした。この従来の関係を電子化したものが、これまでの電子政府でした。しかし今後は、従来の単方向的な関係ではなく、中央政府と地方政府、市民や企業が並列につながるネットワーク型への移行が必要です。この変化した形の電子政府のことを、NTTデータでは『次世代電子政府』と位置づけています。

■次世代電子政府“Collaborative Government”

 次世代の電子政府は、今後の社会構造にあわせたネットワーク型の構造をしているべきであり、従来の社会構造をそのまま模した電子政府とはイコールではない。この新しい形の電子政府は、各分野がそれぞれ密接にかかわり、影響を与え合う形になる。この形態が、NTTデータが次世代電子政府のコンセプトとして掲げる“Collaborative Government”である(図3参照)。“Collaborative Government”を構成するコンセプトは、次の5つに大別される。


図3 NTTデータが考える次世代電子政府
「Collaborative Government(コラボレーティブガバメント)」


@eデモクラシー
Aeレボリューション
Bトランスペアレンシ
Cリスクコミュニケーション
Deマネジメント


@eデモクラシー/市民中心の社会:行政と市民のコミュニケーションツールを整備し、市民の意見を行政に積極的に反映できるようにしていく必要がある。つまり、市民を従来の「ガバナンスの対象、行政サービスの受益者」という立場から、「課題を共に発見、検討、討議し、解決に向けて協同する対等なパートナー」という立場と考える。そのためには、eラーニングや行政CRMなどを活用し、ネットワークを利用して行政を学ぶことで、市民が行政に参加できるようにしていく。現在の行政が抱える問題の多くは複合的である。これを解決するために行政内部の人材だけを利用するのではなく、市民や企業などの民間に埋もれた各分野のエキスパートからアイデアの提供を受ければ、より効率的である。市民の積極的な参加により、行政現場が抱える問題が解消されるなど、サービス向上につながっていく。

Aeレボリューション:活力ある経済社会の実現:企業や市民に対するビジネス機会の創出のために、環境を整備していく。そのためには、企業や市民向けの情報交流の場をインターネット上に設けるなどの仕組みが必要である。そこから行政に対するニーズや要望を収集し、規制緩和や法制度の整備等に反映させていくのである。また「ビジネス機会を増やす」という意味では、これまでは官営だった公的分野において、アウトソーシングや民営化などを通じてビジネス機会を提供したりするとともに、ネットワークを利用した官民交流、という新しい分野における新規ビジネスの創造なども可能となる。

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(こちらは2003年1月号になります)

(この続きの内容)
■次世代電子政府の実現

 

 


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