●NTTデータの行政分野への新たな取組み
 劾TTデータ
 PFI推進室長
 日高 昇治氏


第4章】
変化する社会と政府2
「官民連携」


1.電子自治体とPPP


■IT分野のPFI


 日本で公共事業の運営を民間に委託する新しい手法として、PFI(Private Finance Initiative)が登場したのは、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(通称「PFI 推進法」)が成立した、1999年のことである。PFI では公共事業の運営の責任がすべて民間に移転されるという点で、第三セクターのようなこれまでの手法と異なる。ITの分野においては、通常PFIではなく、アウトソーシング(「民間委託」)という形態がとられることが多いが、PFI発祥の地であるイギリスなどにおいては、IT分野においてもPFI(「IT-PFI」という)が盛んに行われている。

 日本におけるIT-PFIの事例としては、香川県の情報通信科学館のPFI などがあるが、極めて少ない状況である。PFIは調達や契約の手続きに時間がかかるという理由で、アウトソーシングが採用されることもある。もっとも、最近ではPFIにように民間に責任を移転する、「PFI的アウトソーシング」とでも呼ぶべき形態も出てきている(表1参照)



■IT-PFIのメリット

 PFIでは、最長30年という長期の契約が可能になったり、低利の融資が受けられる等のメリットがある。

 「IT分野にPFIを適用する最大のメリットは、長期契約が結べることにより、長期的な視点でシステムの開発を考えられるようになることです。長期的な視点があると、最初の開発の際に生産性をあげるための追加投資をしても、後で行われるシステムの機能追加や更改の時の費用が下がるので、トータルとしてのコスト(ライフサイクル・コスト)を下げるということが可能になるので
す。」(劾TTデータPFI推進室長 日高昇治氏)

■PFIからPPPへ

 2002年になり、小泉内閣の構造改革の中で「民間でできるものは民間に任せる」という方針が出されたこともあり、PFIやアウトソーシングをもっと活用していこうという動きが高まっている。こうした中、2002年5月には経済産業省の日本版PPP 研究会による中間報告がとりまとめられ、官民連携においては、PFIだけでなく、アウトソーシングやGOCO(公設民営)などを含めた広い概念である、PPP(Public Private Partnership)を推進していくことが提唱された。

 この日本版PPP研究会のメンバーでもある日高室長の言うように、「今後、PFI にせよ、アウトソーシングにせよ、ITの分野においても民間への事業委託の範囲が拡大されていくことは間違いない」であろう。

■電子自治体とPPP

 このような状況の中で注目されるのは、電子自治体の構築にPPPを適用する動きである。「電子自治体」の定義はまちまちであるが、総務省の定義によれば、住民に対する電子的なサービスとITによる行政事務の効率化の両方を含むものである。

 この電子自治体を実現するためのキーワードに「共同化」と「アウトソーシング」がある。自治体ごとに単独で電子自治体を構築するのはコストがかかるため、複数の自治体が共同でセンターを構築しようというのが、「共同化」である。さらに、そのシステムの開発やセンターの運営を民間に委託するのが「アウトソーシング」である。

 「来年度から本格化する、この電子自治体の「共同アウトソーシング」の取り組みは、日本におけるIT分野のPPPの代表的な事例となりえます。」(前出、日高室長)

■今後の課題

 もちろん電子自治体にPPPを適用するには、官側の組織をどうするかという運営上の課題や、複数の自治体向けのシステムの仕様をどう共通化するかという技術上の課題など、さまざまな課題がある。「共同センターの開発・運営の課題の解決策は、金融機関の共同センターや医療機関の共同センターなど、豊富な民間の事例に学べばいいのです。」(前出、日高室長)

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(こちらは2003年1月号になります)

(この続きの内容)
2.マレーシア電子調達プロジェクト

■政府出資ゼロの完全PFI
■電子調達システムのメリット
■システムの開発スケジュール
■問題点と解決

 

 


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