●NTTデータの行政分野への新たな取組み
 劾TT データ 常務取締役
 公共システム事業本部長
 中村 直司氏


インタビュー・第1章】
社会変化を先取りし、将来の行政のしくみづくりをITでつくり貢献していく

2003年度、電子政府は一つの節目を迎える。行政窓口業務の電子化プロジェクトが一段落し、次の本格的なIT戦略国家づくりのフェーズに移行し始める。行政内業務の電子化のフェーズに移行し始める。NTTデータ・公共システム事業本部は、NTTデータが提唱する「Insight for the New Paradigm」(未来のしくみをITでつくる)のもと、「将来の行政のしくみづくりをITで貢献する」をミッションに公共ビジネスを展開している。そこで、公共システム事業本部長の中村直司常務に、今後の行政のしくみづくりに向けたNTTデータ・公共システム事業本部の戦略等をうかがった。

■行政のしくみをITでつくり、貢献する


―緊縮財政の環境下にある公共分野において、貴事業部を取り巻く最近の状況からお聞かせください。

中村 我々はこれまで中央省庁の大規模基幹システムの構築や、自治体の基幹業務システムの構築をはじめ数多くの実績を誇っています。公共分野のビジネスは、景気の変動に直接すぐに左右されるということではないのですが、政府予算も厳しくなってきていますし、使い方・効率性というのが求められています。世の中全体の景気が低迷する中で、公共系は民間ほどの状況ではないためかまだまだそれほどではないなという状況で、新規参入事業者も数多くこの分野に進出しています。IT業界全体で言えば、公共分野では、それなりのビジネスボリュームを確保しているが、競争は非常に厳しくなってきていると言えます。

―NTTデータの事業方針を表わす言葉として、「Insight for the New Paradigm −未来のしくみをITでつくる−」を掲げていますが。

中村 今は、ITの進化が、人々の生活や社会のありさまを大きく変えていく時代と言えます。このメッセージには、ITサービスの提供によって、お客様の価値の増大及び個々の多様な価値観を満たすことができるような社会のしくみをITでつくり貢献していくというNTTデータの想いが込められています。したがって我々公共システム事業本部は、社会の変化に対応してこれまでにないスピードで変革していく行政のしくみづくりにITで貢献していくことをミッションとしています。

■本格的な行政経営のしくみが必要

―行政分野は、将来に向けた変革が進んでいるとのことですが。

中村 電子政府の第一次目標である届出の電子申請はほぼ2003年度で達成される見込みです。その後は、本格的な行政経営のしくみとそういったことに貢献できるIT の導入が必要になります。

―行政の変革という観点で、どのようなことに注目されていますか。

中村 大きく4つのポイントがあると捉えています。まず第1に、民間の経営手法を積極的に導入していくことが必要とされるでしょう。2つ目に、行政活動や成果に対してより広範な社会的な価値が問われていること、第3に行政が単独で意思決定や施策を実行するのではなく、パブリックコメントや各種アセスメントを行いながら国民や企業、NPO等との共生・協創による社会を実現すること、第4に新たなしくみ・手法の導入によってリスクをマネジメントする必要が生じてきている点があげられます。

―例えば、一つの例として、行政評価や、調達制度の見直しなどが注目されていますが・・。

中村 いろんな方法にトライしていくことが必要だと思います。行政評価にしても、考え方、有効性をどのように測るかも含め非常に難しいわけですが、我々としてはそういったものについて提言し、実際のシステムに適用して良いものにしていくことが必要だと考えています。また、調達制度の見直しが行われ、システムの入札に絡んで最近、「ITアソシエイト(政府調達のためのIT専門家)」などといった試みも始まっています。そういった試みをカットアンドトライで行っていくことが重要だと思います。

■変化の先取りをするためのNTTデータの取組み

―次世代電子政府像として、貴社では「Collaborative Government」を提案されていますが…。

中村 これは、かなり先の話であり、電子政府・電子自治体ができあがった時に、本格的にどういうことができるか、有効にしていくための一つの考え方を示したものです。具体的には、市民中心の社会、活力ある経済社会、公正な社会、リスク対応社会、効率的な行政の実現を後押しする次世代電子政府像です。今は、その前のステップとして、電子政府、eガバメントというものがどんどん変質しようとしている中で、将来の変化を先取りしたいろいろな取組みを行っているところです。

――具体的な取組みとしてどのようなことを行っていますか。

中村 まず先駆的な取組みとしては、eデモクラシーコンセプトを発信したり、イギリスのノーウィッチ市や日本初の岡山県新見市など内外での電子投票への関与、行政評価システムの開発、PFIへの取組みなどがあげられます。
 また、この分野での先進的な立場にある米国政府の取組みに注目が集まっています。それらの取組みとは、電子政府のフレームワークであるエンタープライズアーキテクチャー、リスクマネジメント、価値とコストのバランスを比較するビジネスケース、調達改革などです。こういう先駆的な情報を収集するための拠点をワシントンDCに開設しました。

――行政評価システムとPFI について、実績は…。

中村 行政評価システムは、三重県をはじめすでに4つの県に導入していただいています。また行政評価の手法、ABC(活動原価計算)やBSC(バランス・スコアカード)のノウハウをグループ会社内に蓄積しています。なお、PFIに関しては、マレーシア電子調達や自治体でのデータセンターでの実績があります。

――そういった取組みを、どのような形で紹介されていますか。

中村 2000年春に東京・霞ヶ関ビルに展示スペース「デジタルガバメントゾーン」を開設し、電子政府の動向や先進システムを紹介しています。オープン以来、たくさんの方々にお越しいただいています。

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(こちらは2003年1月号になります)

(この続きの内容)
■電子政府推進のキーポイントとNTTデータの強み

 

 


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