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RFID

NTTデータ 技術開発本部 セキュアサービスプラットフォームグループ
高橋 成文(たかはし しげふみ)

◆はじめに

 RFID(Radio Frequency Identification)とは、無線通信により非接触で物体を自動識別する一種の無線通信システムであり、無線ICタグとも呼ばれている。RFIDは、あらゆる物に付帯しネットワークと繋がることから、ユビキタス社会やトレーサビリティに有効と言われている。

 本稿では、まずRFIDを構成技術により分類し、その特徴について概説する。次に、RFID及び利用するIDの標準化動向、RFIDに関する電波法改正概要について述べる。最後に、ビジネスに向けた動きと課題について述べる。

◆RFIDの分類

 RFIDは、メモリ、無線制御部を内蔵するICチップとアンテナから構成され、メモリには物体を識別するためのID(物体の特定情報)とメタデータ(物体の属性情報)が記憶される。リーダ/ライタとの無線通信により、非接触でICチップ内の情報を読み書きでき、自動識別、追跡、情報記録/呼出しなどに利用される。RFIDは、その機能や構成方法により以下の項目で分類される。

@伝送媒体方式(電磁結合、電磁誘導、電波、光)

A情報記憶方式(Read Only、Write Once Read Many、Read Write)

B電源方式(電池なし〔パッシブ型RFID〕、電池付き〔アクティブ型RFID〕)

C通信距離(密着、近傍、遠隔)

D形状(ラベル、カード、コイン、スティック 等)


 一般にRFIDは金属面で利用できないが、高透磁率コアなどを利用し、金属対応したRFIDやICチップとアンテナがCMOSウェハ上に統合して製造されるコイル・オン・チップも登場している。

◆RFIDの標準化動向

 物品管理のためのRFID標準化は、ISO/IEC JTC1/SC31 WG4で審議されている。しかし、国際標準(IS)に至っておらず、全て審議中となっている。一方、物品管理以外でISとなっている分野として、非接触ICカード、動物管理用、工具管理用、コンテナ識別用、車両/貨物の自動認識がある。

 RFIDで利用する周波数における規格化審議は、ISO/IEC18000 Part2、3、4、6、7として進められている(Pert5は標準化が棄却された)。現在、Part6(860-930MHz)及びPart7(433MHz)のRFIDは国内電波法により日本での使用はできない状況にある。

◆IDの標準化動向

 RFIDによる物品識別のためのID標準化は、さまざまなユーザー団体が提案している。以下に、主にRFIDに関連する物品識別におけるID標準化の動きを説明する。

@GTAG(Global Tag)
 GTAGは、米国・カナダ商品コード管理機構(Uniform Code Council Inc.:略称UCC)及び国際EAN協会(EAN International)共同で創設されたイニシアチブ・グループである。GTAGはSCM(サプライチェーン・マネジメント)におけるRFID の調査研究、標準化を目的としている。ISO/IEC 18000 Part6への提案等が行われている。

AAuto-ID Center
 Auto-ID Centerは、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)が中心となって1999年に自動識別の研究機関として同大学内に設立している。EPC (Electronic Product Code)と呼ばれるコードにより製品を個体レベルで識別し、商品管理を行うことを構想している。また、2003年1月に慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)内にAuto-ID Centerの研究拠点(リサーチ・ディレクタ:村井純教授)が設立された。

BユビキタスIDセンター
 ユビキタスIDセンターは、「モノ」を自動認識するための基盤技術の確立と普及、さらに最終的にはユビキタスコンピューティングの実現を目的に設立されている。主な活動内容として、「モノ」に付与するID体系(uID:ユビキタスID)の構築やuIDを利用するための基盤技術の確立、uIDとそれに結び付けられた情報を流通させるセキュアな広域分散システムの基盤技術の確立がある。ユビキタスIDセンターは、T-Engineフォーラム(代表:東京大学 坂村健教授)内に設置されている。

◆国内電波法

 RFIDに関して、13.56MHzと2.4GHz帯に関する電波法改正が行われた。13.56MHzに関する改正として、技術基準が見直され規制レベルがヨーロッパとほぼ同様となり、リーダ/ライタとRFIDとの通信距離が改善し、アンテナの大型化も可能となった。また、手続きの見直しが行なわれ、読み取り装置の設置が容易となった。2.4GHz帯に関する改正としては、FHSS方式(周波数ホッピングスペクトル拡散方式)が使用可能となり、従来方式に比べ通信距離が改善している。

◆ビジネス動向
 RFIDは、さまざまな分野から注目されており、実証実験や導入済みの企業も多数ある。ここでは、幾つかの事例を紹介する。

 国内では、図書館における蔵書管理や貸出し返却業務に導入が進んでいる。また、アパレル業界では、衣類にRFIDを付けて商品管理や顧客の店内行動情報を取得し、販売の効率化を目指して実験等を行なっている。書籍業界では、日本出版インフラセンター内にICタグ研究委員会を設立し、RFID利用に向けた調査研究を行なっている。その他、自動車業界、電子機器業界、航空業界、運輸業界などで、さまざまな動きがある。

 NTTデータでは、食品流通分野における無線ICタグの活用に関する実証実験を計画している。図に実証実験の実施イメージを示す。生産者や食品メーカーから出荷される青果、精肉、鮮魚等の生鮮食料品や日配品、加工食品、日用雑貨等の商品個別にRFIDを取り付け、物流過程や店舗の各拠点に設置されるリーダ/ライタにおいて情報を取得する。情報は、ネットワークを介してNTTデータが提供する情報センターに蓄積され、これらの情報を活用し、以下の4点を検証する。


実証実験実施イメージ

@消費者へのサービス向上
 店舗において、より楽しくより便利に買い物ができる仕組みを検証する。

A食品トレーサビリティ
 食品の生産から流通の情報を開示するだけでなく、より安心でよりおいしく消費するための情報提供の仕組みを検証する。

B製販共同マーケティング
 販売、消費の現場を反映した生産計画及び商品開発を支援する仕組みを検証する。

C物流の効率化
 物流作業の効率化を支援する仕組みを検証する。

 実験は、平成15年9月頃の開始を予定している。

◆RFIDの課題

 RFID普及に向けて最大のボトルネックはコスト問題である。Auto-ID Centerでは、2005年に5セント(約6円)タグを実現すると発表しているが、その為には、ICチップの小型化、高集積化、製造工程の高効率化が必要となる。また、GTAGでの標準化は860-930MHz帯であるが、日本では当該周波数帯を利用できないことから、世界の流通業界から取り残される可能性がある。さらに消費者側に目を向けると、RFIDを無断で読み取られるプライバシー問題などがある。

お問い合わせ先
E-mail:takahashisg@nttdata.co.jp

 

 


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