●NTTドコモのモバイルソリューションとユビキタス戦略
 劾TTドコモ
 取締役・第一法人営業部長
 星澤 秀郎氏


【インタビュー:NTTドコモの法人ビジネス戦略】
話すから、見る携帯電話へ

いつでも、どこでも、誰とでも、どんな情報にも自在にアクセスできる便利さの浸透に注力−

 モバイルイントラネットやマシンコミュニケーションなど法人分野におけるモバイルの利用が加速してきているが、法人での利用はまだまだ「話す携帯から見る携帯」になっていないと言うNTTドコモ取締役・第一法人営業部の星澤秀郎部長。自らのオフィスをモバイルプラットフォームをはじめとする最先端のモバイルマルチメディア技術、アプリケーションの実験場と位置づけ、法人企業でのモバイル利用促進に向けた取組みを積極的に推進している法人営業本部の最近の状況を星澤取締役に聞いた。

■話す携帯電話から見る携帯電話へ法人での市場開拓を積極的に推進


―まず、法人ユーザーにおけるモバイル利用の現状をどのように捉えていますか。

星澤 今の若い方々は、携帯電話を肌身離さず常に持ち歩き、その便利さを実感していただいています。しかし、法人ユーザーの平均利用単価は、マスユーザーと比べてまだまだ少ない。それは、法人ユーザーの場合、音声での利用が中心で、まだまだ見る携帯になっていないのではないかと捉えています。ここを、私どもとしては開拓していきたいというのが、現在の状況です。

 法人のお客様に携帯電話の便利さを享受していただけるようにするためには、社内イントラネットとどのように結びつけるかが重要です。しかし、私どもの役割はモバイルイントラネットのシステム化を行うことではなく、いつでも、どこでも携帯電話のちょっとした便利さが享受できるような仕組みを提供することであり、より使いやすく、より身近なサービスとして、携帯電話をビジネス活動の中に根付かせることです。いってみれば私どもはモバイル化のデザイナーのようなもので、システム化の部分はパートナー企業と手を組んで行っていくということで、法人顧客向けのソリューションを開発し展開しています。

―モバイルイントラネット化の市場での動きはいかがですか。

星澤 モバイルイントラネットは、外出先からでもオフィスにいる感覚で会社に届いたメールを確認したり、リアルタイムで社内のデータベースにアクセスすることで、商談中に商品在庫の確認や注文を受け付けたり、顧客データベースから契約内容を閲覧することができるなど、法人ユーザーのコスト削減や業務効率化に役立っています。また、DoPaを利用した遠隔監視では自動販売機の売上・在庫システムを集中管理するシステムや各種メーターの遠隔検針システム、水質基準監視をするシステムなどに活用されていますし、DoPaとGPSを活用した位置情報検索システムなどは、物流トラックの効率的な運行管理、バス到着時刻予測と運行スケジュールの調整など、サービス品質の向上と業務効率化に役立っています。

 こういったモバイルイントラネットやDoPaを活用したマシンコミュニケーションは、多くの企業に利用され始めていますが、まだまだ法人でのモバイル利用が活性化しているとはいえません。その意味では、法人市場を覚醒させる必要があると考えています。

■システムのステップアップ化で法人での利用促進を図る

―市場開拓を含め、法人でのモバイル利用促進に向け、具体的にどのような施策を展開されていますか。

星澤 もはや携帯電話は通話するための装置ではなく、電子メールやインターネット閲覧に加え、デジタルカメラ搭載端末によって、携帯電話で撮影した画像をそのまま送受信することができるようになりました。また、FOMA によって、動画の送受信が行える携帯テレビ電話へと進化してきました。私ども法人営業の役割は、このように小型情報端末へと進化してきた携帯電話の便利さを法人ユーザーにいかに浸透させるかです。そのためには、例えば緊急情報連絡や安否確認のような社員録と連動したシステムから始め、社内イントラネットへのアクセス、iモードでの出先からの日報作成、さらにはFOMAの映像での業務報告などへと、システム上のステップアップを図っていく。その際、重要なのがTCOの削減につながることです。「より安く、より確実に、より大量の情報を、そしてお客様から有難うの一言を」が私どものモットーです。

■FOMA による映像コミュニケーション文化をさらに高めたい

―2002年度末、FOMAの加入者数がグループ全体で33万を突破しましたが、FOMAの現在の普及状況についてはどのように捉えていますか。

星澤 昨年のサービス開始以来、サービス提供エリアの拡大、対応端末のラインナップの拡充、新サービスの提供などに取り組んできました。

 FOMAサービス提供エリアは、現在全国での人口カバー率が約91%ですが、2003年度末には全国で人口カバー率約99%以上にする予定です。当初目標の1年遅れくらいで市場が立ち上がってきたと捉えており、今後普及に一層ドライブがかかるよう努力していきたいと思います。

 FOMAの最大の特長は、動画が送受信できることです。高速大容量のネットワークという特長を活かしたアプリケーションの開発に取り組み、映像コミュニケーション文化をさらに高めていくことが私どもの使命だと考えています。建設現場の作業進捗状況の確認や、ゴミの不法投機や工場・建物内のリアルタイムの映像モニタリングシステム、商品や不動産の動画カタログなどのプレゼンテーション、さらには多地点を結んだ携帯テレビ電話会議システムなどでの活用が広がりつつあります。しかし、携帯電話による映像文化の向上という点では、まだ緒に着いたばかりであり、関連アプリケーションなど私ども自身が活用しながら、普及に向けた取組みを積極的に展開していきたいと考えております。

―その実験の場が法人営業本部のオープンオフィス、いわゆるモバイルオフィスですね。

星澤 『第15回日経ニューオフィス推進賞』を受賞した私どものオフィスは、働きやすく、知的生産性の高いオフィス、すなわち「知の創造をテーマにした空間づくり」をコンセプトにしています。ここでは、モバイルプラットフォームをベースに、RFIDタグや非接触ICカードを活用した個人IDやロケーション管理、さらにはFOMAアプリケーションなど、最先端のモバイルマルチメディアを駆使したサービスを効率的かつ快適に利用できるユビキタスなオフィス環境を具現化しています。丸の内にもオフィスがありますが、毎朝のミーティングも、FOMAによるテレビ電話会議により行っています。このオフィスは実験場であると同時に、私どもの商品です。

 
写真1 モバイルオフィスの実験場
     第一法人営業部のオープンオフィス

  写真2 オフィス内に複数のプラズマ
     ディスプレイ「CyberBoard」を設置

■便利さという付加価値の訴求に注力

―最後に、今後の法人向けビジネスの展開をお聞かせください。

星澤 先にお話したように、法人のお客様に見る電話に早く変えていただきたいと思います。社内システムとの連携で、いつでも、どこでも、誰とでも、どんな情報にもアクセスできる便利さを享受していただけるように市場を拡大していきたいと考えています。便利さという付加価値の訴求に注力していきたいと思います。

―本日は有り難うございました。

(聞き手:本誌編集長 河西義人)

 

 


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