●Special・IPv6が実現する次世代インターネット●

IPv6普及に向けた国内外の動向と今後の方向性

IPv6 普及・高度化推進協議会広報担当
中村 尚氏

■IPv6接続サービスの整備動向

 IPv6アプリケーションの開発が進められる一方で、バックボーンのIPv6対応や各ISPによるIPv6サービスの提供といったインフラ整備もIPv6インターネット推進の鍵となります。IPv6のバックボーンについては、すでにWIDEプロジェクトが提供するIPv6用IXであるNSPIXP-6に、インターネットイニシアティブ(IIJ)やパワードコムが接続しています。またNTTの提供する基幹網として、NTT/VERIOが世界規模でIPv6幹線接続サービスを提供開始しています。

 ISPが提供するユーザー向けのIPv6接続サービスについては、2001年にIIJが法人向けにサービスを開始したのをはじめとして、NTTコミュニケーションズのOCNによる一般ユーザー向けサービスの提供、加えて、多くのISPで実験サービスが開始されており、これらのISPは2003年から順次本格サービスをスタートさせる予定となっています(表3参照)。


表3 IPv6接続サービスの提供状況

■海外連携の動向

 2003年においては、いよいよルータや各種デバイスといった一般的製品がIPv6に対応しつつ市場に提供され始めると予想されます。まずは、それら製品の供給においては台湾をはじめとしたアジア系企業のIPv6インターネットへの参入が予想されます。

 また、欧州各国はアジアと同様に、当初よりIPv4アドレスの割当が少ないといった問題があり、EU で2003年度から始まる研究開発投資予算(FP6)でも、IPv6は情報社会分野での最重要テーマとして位置づけられ、重点的な開発推進が計画されています。本協議会では、海外戦略WGを中心として、これら欧州やアジアとの連携強化を図っており、欧州委員会や韓国との実験網相互接続、ショールーム、IPv6アプリケーションの展開などで具体的に共同体制を構築しており、さらに中国とも連携を進めています。

 とくに海外連携における最近の成果としては、IPv6 Forumが中心となり、一定の試験を通してIPv6の接続性が確認された製品に対して認定ロゴを発行する「IPv 6 Logo Program」が発足していますが、その試験機関の1 つとして、協議会とも深く連携しているTAHIプロジェクト(http://www.tahi.org/)が選ばれただけでなく、当プログラムの議長に本協議会でサーティフィケーションWGの主査を務めていた江崎浩氏(東京大学助教授)が就任しています。これにより、世界的なサーティフィケーションプログラムにおいて、日本が中核的な役割を担うことになりつつあります。

 一方で、これまで豊富なIPv4アドレスを保有し、IPv6には積極的でなかった米国も、セキュリティ強化等の観点から国防総省や商務省が2003年の早い時期にIPv6への完全移行を目標とした計画を策定するなど(商務省では既にWEB上に公開済)、急速に普及が図られる兆しが出てきています。

■IPv6がつくりだす次世代インターネット

 昨今のIPv6が目指すインターネット社会像として「ユビキタス社会」という表現が提起されています。たとえば、自分の手元にある端末がさまざまな周辺情報や環境を認識・判断して、最も利便性の高いサービスを提供するというものです(端末を所持して特定の場所に来れば、特定の情報や必要なアプリケーションが作動し、行動をアシストする等)。さらに究極的には、周辺の側がコンピュータ化され、自分の持つ情報を認識して最適な環境をつくり上げるというイメージです(必要に応じて、周辺のガラス面が必要大のモニターに変わる等)。

 これらをIPという観点から実現しようとした際にIPv6が順応性のある技術基盤として注目を集めているのです。とくに、卑近な活用例としてよくもち出されるのが、情報家電などの外部からの制御や自動的・自立的な作動、それを支える自由度の高いコミュニケーションで、すでにショールームにも片鱗が見られているように、これらの領域では多くが実装可能なところまで来ており、技術よりも、社会的(市場的)な観点で実装の可能性を精査する段階に入っているといえます。

 その他に、VoIP技術を使ってインターネットで電話するIP電話(いわゆるインターネット電話)も急激に普及しようとしています。まさにこのようなIP電話の本格普及は、必要となるアドレス空間やセキュリティ、プラグ&プレイ機能といった側面でIPv6によるインターネットがインフラとして必要となる領域であり、IPv6の普及を誘発するアプリケーションとなり得ます。

 このようにIPv6インターネットのインフラ整備とアプリケーションの並行的な整備は徐々に相乗効果を生みつつあります。

■今後の展開について

 IPv6の普及におけるプロセスとして、IPv4と共存しながらの浸透が前提となっています。技術的にはトンネリング、デュアルスタック等によって、IPv4とも互換性を保ち、IPv6に移行した場合でも今までのサービスが継続されるようにすることですが、実際にはIPv4とIPv6の技術的差異を認知していない利用者も多く、彼らの立場から、より具体的に移行に生じる課題を調査分析して進める必要があります。

 本協議会では、2003年5月に、これらの主旨のもと、最新のWGとなる「移行WG」を設置し、検討を始めようとしています。今後の普及の条件としては、第一に安心、安全、安定に関する技術向上とその正確なPRです。とくに、

・IPsec等で「あんしん」して
・Plag&Play等で「かんたん」に
・豊富なアドレスで「べんり」に
・P2P等で「たのしく」


といったキーワードを切り口に、アプリケーション開発に活かしつつ、且つより分かり易く普及促進を図っていくことが重要と考えています。

 具体的には、IP電話やモバイル通信等、既存アプリケーションについてより容易に(変更なく)サービス提供を可能としたり、パソコン以外の家電やセンサー類が簡易に接続できるようにすることで、新たに付加価値の高いサービス提供を可能としたりといった活動となります。

 その一方で、今後も、引き続き利用の簡易性が高まった際の個人情報の保護、セキュリティの確保、サービス提供に関わる責任範囲の明確化など、具体的サービスの実用化に向けた社会的コンセンサス形成にも力を注いでいく必要があります。

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(こちらは2003年6月号になります)



(その他Specialの内容)
・高品質なグローバルIPv6バックボーンを利用した
 NTT Comの「IPv6ゲートウェイサービス」
・CATVによるIPv6デュアルスタック接続サービスを開始した
 知多メディアスネットワーク
・エクストリーム ネットワークスが
 IPv6ルーティング ソフトウェアを正式リリース
・次世代インターネット時代に向けた
 新たな可能性を追求する松下電器の取組み

 

 


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