●プラットフォームテクノロジー「VALUMO」が支えるNECソリューションズのOMCS戦略
 NECソリューションズ
 執行役員
 システムソフトウェア事業本部
 事業本部長
 伊久美 功一氏


INTERVIEW】
VALUMOが支えるOMCSが
企業の経営基盤を革新する

 NEC ソリューションズは昨年10月、「堅牢性」と「拡張性」の両立を可能とする「オープンミッションクリティカルシステム(OMCS)」の普及拡大とさらなる進化を実現するため、同社の有する最先端テクノロジーを活用したソフトやハードに関するプラットフォームテクノロジー「VALUMO(バルモ)」を体系化。ミドルウェアやサーバなど企業向け製品について「VALUMO」に基づいた強化を推進することを発表した。
 そこで、VALUMO が生まれた背景、狙い、特長、今後のOMCSソリューションの展開などについて、伊久美功一執行役員・システムソフトウェア事業本部長に聞いた。


■OMCSを実現するキーテクノロジー VALUMO(Value+More)


―NEC ソリューションズ(以下、NEC)は昨年10月、オープンミッションクリティカルシステム(OMCS)を実現するプラットフォームテクノロジー「VALUMO」を体系化しましたが、まずはじめにその概要からお聞かせください。

伊久美 VALUMOは、経営革新・ITインフラ革新にはOMCSが不可欠であるとの考えに基づいた取組みのひとつです。OMCSは、オープンな技術によって構築する、事業基盤を支える情報システムのことです。これからの情報システムには、市場の変化に迅速に対応する「柔軟性」と、24時間365日ノンストップの業務運用を実現する「堅牢性」を両立したOMCSが求められています。このOMCSを支え、システムの信頼性・可用性・運用性の向上を最適投資で実現するために、@自律、A仮想化、B分散、C協調の4つの技術テーマについてNECの持つ最先端技術を体系化したものが、VALUMOです。NECは、ミドルウェア、サーバ、ストレージ、ネットワークなどの企業向け製品について、VALUMOに基づいた強化を推進し、ユーザー企業に対して利便性の高いコンピューティング環境の提供を実現していく方針です。VALUMOは、お客様の企業価値を高める「Value+More」を意味しています。


図1 プラットフォームテクノロジー「VALUMO」

ーVALUMOの4 つの技術テーマについてお聞かせください。

伊久美 まず、「自律(autonomy)」とは、各ITリソースが自身で負荷や障害といった作動状態を把握し、負荷の調整、障害箇所の切り離し・復旧、リソース保護などを行い、システム全体を自動的に安定状態に保つようにするために、自律調整、自律復旧、自律保護の機能を持たせることです。これにより、システムの高信頼化、運用管理の効率化を実現します。「仮想化(virtualization)」とは、利用者が、個々のITリソースの構成、場所などを意識することなく、必要な機能、性能を柔軟に組み合わせて利用できる環境を提供することです。これにより、システムの構築、運用を容易にし、資産を有効活用します。「分散(distribution)」とは、広域統合運用、広域バックアップ、Hub&Netシステム構築など、広域分散環境におけるITリソースの有機的かつ安全な連携を実現することです。これにより、資源の共有、ビジネスプロセスの連携・統合、災害時への対応などを容易にします。また、「協調(cooperation)」とは、NECのコア技術をベースに、戦略的アライアンスを組んでいるパートナー製品との連携強化を行うことで、Best of Breadな製品を使ってミッションクリティカル性を実現します。

ーVALUMO の特長についてお聞かせください。

伊久美 最大の特長は、すべてが実証済みのリファレンス・モデルで構成された体系であるという点です。NECでは、システムインテグレーション方法論や構築技術、ミドルウェア開発、マルチベンダプラットフォーム開発などにこれまで投資しており、VALUMOの4つの技術は、これまでのシステム構築実績で実現済みです。VALUMOは、日本初のマルチベンダインテグレーションを現実のものにした体系といえます。

■VALUMOをベースにしたOMCSで企業の経営基盤を革新

―VALUMO が生まれた背景についてお聞かせください。

伊久美 背景として、IT環境の変化があげられます。まず、メインフレームですべて処理していた時代とは異なり、現在は複数のシステムが個別の業務を分担し、有機的に結合する形態になっています。しかもクローズからオープンへ、集中から分散へと、システムは広範囲に拡大しています。システムの広域化・分散化は、運用コストに直接影響します。このため、拡大したシステムを一括して見通す、複雑なシステムをシンプルに見せるなど、運用しやすさを考慮した技術が必要となっています。また、情報システムが企業の競争力を高めるツールとなってきたばかりか、企業の枠組みを越え、関連会社やパートナー企業、取引先、さらにはお客様を含め社会インフラ化しています。このため、システムのダウンは機会損失はもちろん、社会的なイメージダウンにもつながるため、セキュリティの維持と、ビジネスコンティニュイティのための運用技術は必須となっています。さらにインターネット技術の進化があげられます。特に、Webサービスは、本格的な活用の時代へと入ろうとしています。Webサービスによって既存システムの連携が可能となり、複数企業間でのコラボレーションが容易となります。ビジネスの異機種間連携・異業種間連携に向け、システムも新たな役割を担うことになります。

 このようなビジネスを取り巻く環境の急激な変化に迅速に対応し、顧客価値を高いレベルで提供するOMCSへのニーズが急速に高まっています。このOMCSは、IT環境の変化とともに常に進化することが必要で、その柔軟で創造的な環境を支えるプラットフォームテクノロジーを体系化したVALUMOを確立しました。

―貴社の考えるOMCS とは、どのようなものですか。

伊久美 お話ししたように、これからの企業の情報システムは、これまで以上の安全性や信頼性が求められると同時に、激しい変化に対応できるスピードや拡張性が重要になります。すなわち、24時間365日止まらない「堅牢性」と、市場環境などビジネス環境の変化に応じてスピーディにサービスやシステムを構築・拡張できる「柔軟性」を持つOMCSが必要とされています。しかし一方で、オープンシステムは柔軟性に優れている反面、メインフレーム並の堅牢性を実現するのは難しく、この2つの両立は非常に困難でした。NECは、長年培ってきたメインフレーム開発技術とオープンシステムの豊富な構築実績をもとに、堅牢性と柔軟性を両立するOMCSを実現し、数多くの基幹情報システムの構築を手がけてきました。このノウハウ、手法をベースに「OMCSトータルサービス」を提供しています。OMCSのプラットフォームテクノロジーであるVALUMOとOMCSトータルサービスをベースに、オープンミッションクリティカルなソリューションの強化を図っています。

―昨年9 月には、川村副社長の肝いりで、相互接続性の検証などを行う「オープンミッションクリティカルソリューションセンター」も開設している。

伊久美 本社1階に、OMCSソリューションセンタを開設したことからも、その意気込みのほどがうかがえると思います。

―NECのOMCS事業戦略をお聞かせください

伊久美 OMCSの適用領域について、システム規模は大規模から小規模へ、業種は通信・金融から民需、官公庁へ、業務は基幹システムからフロントシステムへとすそ野が広がってきていることから、一つにはOMCSをより多くのお客様に提供していくことです(図2参照)。もう一つは、OMCSの進化への対応です。OMCSのシステムモデルも、当初の「3層モデル」から、企業内連携・企業統合を実現した「Hub & Spokeモデル」へと進化してきました。さらにNECでは、これらに続くモデルとして、企業間連携、グローバル化、社会インフラ化を実現するための「Hub & Net モデル」を提唱しており、このHub & Netモデルを実現するためのOMCS技術の強化です。NECは、VALUMOをベースにしたOMCSにより、企業の経営基盤を革新します。OMCSによるビジネスコンティニュイティ、Hub & Net モデルによるコラボレイティブネットワーキング、環境変化に合わせた最適投資によるTCOの削減が、VALUMOの狙いであり、顧客価値です。


図2 NECソリューションズのOMCS事業戦略


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(こちらは2003年3月号になります)

(この続きの内容)
■グローバル企業間連携を実現するHub & Net モデル
■豊富な経験と実績がOMCS構築におけるNECの最大の強み
■OMCSのベースとなるソフトウェアの新体系−VALUMOウェア−

 

 


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