●ブロードバンド・ユビキタス時代に向けたNTTコムウェアの最先端技術への取組み●
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NTTコムウェア 取締役
研究開発部長
加瀬 一朗氏 |
【INTERVIEW】
付加価値の高い独自の技術力とブランディング力の確立が急務
個別テクノロジーの研究開発に加え、ソリューション/ビジネスモデル志向のクロステクノロジー的アプローチを強化する方針を打ちだすとともに、実用化への取組み体制及び機動的研究開発への取組みを強化したNTTコムウェア・研究開発部。そこで、研究開発部を陣頭指揮する加瀬一朗取締役に、NTTコムウェアのR&Dビジョンと戦略を聞いた。
■4つの技術分野に加え、
クロステクノロジー技術に積極的に取り組む
―昨年、NTT持株会社が「“光”新世代ビジョン」を発表しましたが、NTTコムウェアの研究開発部では、ブロードバンド・ユビキタス時代に向け、どのような技術分野の研究開発に取り組んでいるのでしょうか。
加瀬 “光”新世代ビジョンの中で「レゾナント・コミュニケーション」という概念が新たに打ちだされましたが、NTTコムウェアの研究開発部では、ユビキタス技術、ブロードバンド技術、次世代IP技術、それからビジネスプラットフォーム技術の4つのテクノロジーを中心に取り組むとともに、ビジネスオリエンテッドなクロステクノロジー技術にも積極的に取り組んでいます。
―4つの技術分野の具体的な研究開発テーマをお聞かせください。
加瀬 ユビキタス技術では、まずモバイルエージェント/テレマティクスポータルの「TeaTray」、パーソナライゼーション/レコメンデーションの「TeaFlavor」、それからメディア統合プラットフォーム、さらにAuto-ID、バイオ認証(声紋認証)、インスタントメッセージ、マルチモーダル型ポータル、PHSメディア統合、ユビキタスディレクトリ、モバイル・テレメディシンに取り組んでいます。
ブロードバンド技術では、動画流通プラットフォームの「myVideo」、動画オーサリングツールの「VideoPalette」、次世代DRM技術、テキストデータとリンクさせた動画検索技術、SOBA(Session
Oriented Broadband Application)に取り組んでおり、「myVideo」は売れゆきも好調です。
次世代IP技術では、情報家電コンセントの「L-BoX」、無線LAN、Bluetooth、SoIP(Storage over IP)、さらにTangible
IP-NW Designerがあげられます。
それからビジネスプラットフォーム技術では、従来から手掛けていたコンサルティング知識フレームをビジネスプロセス分析技法に活用した「実践的なコンサルティング方法論」、その一つの要素である「情報化投資評価技法」、さらに技術開発として「Linuxクラスタのロードバランサ」といったものに取り組んでいます。
NTTコムウェアの研究開発への取組み
■先端的プラットフォームの応用研究、MIT等との共同研究にも注力
―そのような先端技術の研究開発にあたり、特に留意している点は。
加瀬 NTTコムウェアの研究開発部としては、IT over IPのベースとなる各種先端的プラットフォームの応用研究に重点をおき、付加価値の高い、他社との差別化要素のある成果を目指しています。このほか、例えばTangible
IP-NW Designerは、MITメディアラボの石井教授のタンジブルメディア・グループ、Auto-IDはMITのAuto-IDセンタ、SOBAは京都大学の中島教授との共同研究に積極的に取り組んでコラボレーションを推進しています。特にMITメディアラボの石井教授のタンジブルメディア・グループとは、CHI(コンピュータ・ヒューマン・インタラクション)が従来のCUI、現在のGUI
から今後TUI(Tangible User Interface)に進展することを想定し、積極的にコラボレーションを実施しています。
■ソリューション/ビジネスモデル志向の戦略的取組みを強化
―研究開発部内にインキュベーション担当を設置されましたが、その狙いをお聞かせください。
加瀬 最近は非常にマーケットの動き、技術トレンドの変化が激しいため、研究段階のプロトタイピングベースのものをテストマーケティング用にユーザーのところへ直接持ち込み、実証実験等を通してお客様とのコラボレーションを活用して商品化するということが非常に重要になっています。このため研究開発部内にユーザーサイドの窓口としてインキュベーション担当を設置し、ビジネス企画部、各営業本部と一体となったユーザー対応を目指しています。
―実用化への取組み体制の強化ですね。
加瀬 コムウェアの研究開発部としては、限られたリソースを有効に活用する観点から、「選択と集中」にも配意して、研究開発項目を実用化フェーズ、新技術検証フェーズ、それからフューチャーテクノロジーの3つに分類して、それぞれの効率的な取組みを実施しています。特に今後は、個別テクノロジーへの取組みだけではなく、ソリューション/ビジネスモデル志向のアプローチを強化し、クロステクノロジーベースのセットメニューを拡充するとともに、各コアテクノロジー周りのSI、SOベースのアプリケーション/ビジネスモデルを含めた提案への取組みを強化していく方針です。実用化の具体例として、TeaTray、TeaFlavor、メディア統合プラットフォーム、声紋認証、myVideo
、VideoPalette、L-Boxがあります。今後、Auto-ID 、マルチモーダル型ポータル、次世代DRM、SoIP、Linuxクラスタのロードバランサ、電子政府向けのPKI技術について、早期実用化に向け取組みを強化していきます。
■発想を大きく変えて、変化の時代には変化で対応
―最後に、抱負も含め今後の展開についてお聞かせください。
加瀬 NTTコムウェア発足後5年が経過して、NTTグループ、NTTコムウェア、さらには研究開発部を取り巻く環境が大きく変化してきています。そのため、研究開発部としても大きく発想を変える必要があります。とにかくヒット商品の実用化に寄与して、NTTコムウェアの受注、売上げに貢献することが最も重要です。しかし、そのためには他社と差別化した、付加価値の高い独自の技術力とブランディング力を確立することが急務だと考えています。このため、前述した当面の実用化対象に注力していくことは当然ですが、例えば3Dとかバイオ、NGN(Next
Generation Network)、TUIといったフューチャーテクノロジーについても大学、他研究機関、あるいは標準化機関等との共同研究、あるいはコラボレーション等を有効に活用しつつ積極的に取り組んでいく方針です。このほか、コアテクノロジーをベースとしたビジネスモデルの提案能力の向上は必須です。このため、個別テクノロジーの紹介だけではなく、併せてそれを活用したビジネスモデルについて営業部隊等との連携を強化しつつ、お客様に積極的に提案していきたいと考えています。
いずれにしても、先行き不透明なビジネス環境の中、「変化には変化で対応する」ということで、我々自身が発想を大きく変えることが最も重要だと認識しています。デフレといいながら、安いものが必ず売れるかというと必ずしも売れない状況にあります。逆に高くても付加価値の高いもの、自分の生活スタイルに合わせてお金を出してよいものにはお客様はお金を出す傾向にあり、最近の高級チョコレートのヒット等がいい例です。そういったところを敏感に察知して、お客様が何を欲しているのか、マーケッティング的発想も加味しながら研究開発そのものも対応していかないと有効に機能しないと思います。もちろん、社内各組織とCoACTSベースの連携を強化し、一体となってNTTコムウェアとしてのパワーを最大限に発揮することが重要です。
―本日は有り難うございました。
(聞き手:本誌編集長 河西義人)
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